2017年04月09日

”実写化”の地雷に国境は無かった....「ゴースト・イン・ザ・シェル』(Ghost in the Shell)」ルパート・サンダース(監督)/スカーレット・ヨハンソン(主演)/字幕/感想

去年の映画の興行収入ランキングTOP10にはアニメ映画が7本も入っていた。しかもここ数年はアニメ作品が1位か2位に入っており、その勢いはどんどん増している。

作品その物の質が高まっていること、アニメを呼吸するように見て育った世代が増えたことなども要因だが、ヤマトやガンダムそしてドラえもん等の子供向けアニメやジブリが作って来た下地があってこそ、これだけ大きなヒットへと繋がったに違いない。




AKIRAと並び称されるほど世界に受け入れられた「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」もそんな下地の一つだった。劇場公開された頃、ジャパニメーションという言葉をメディアがしきりに使って絶賛していたのをよく覚えている。ハリウッドの有名な映画監督までベタ褒めしていたから、日本人としては非常に鼻が高かった。

無論、メディアや専門家の話など関係なく、攻殻機動隊は面白かった。否、面白いとは言えないくらい陰気な話ではあるのだけれど、あまりの細やかな設定の説得力と押井守の哲学にやられ、グーの音も出ないほど痺れたものである。その影響でうっかり原作を読んでみたら、まるで違う風情で驚いたのも今では良い思い出だ....


そんな攻殻機動隊がハリウッドで実写化されると聞いた時は、それはそれは嬉しかった。お金も技術も上である海の向こうでなら、凄い攻殻機動隊が見れるに違いなかったから。勿論これまでのハリウッドによる実写化の実績(スーパーマリオ、ストリートファイター、ドラゴンボール、北斗の拳等々...)を考えると、不安が無いでもなかった。向こうの思い描くクールな日本のイメージは大抵僕らの感覚と相反しているから。

実際、今回の実写化された攻殻機動隊も、かなりアメリカ人の脳内で補正された空間になっていた。






元々アジア某所的な世界観ではあるし、まるでブレードランナーだなと思ってしまうような街並みでも違和感はそれほど感じないものの、実写になると世界がハッキリし過ぎて素通り出来ない面がちらほらあった。ネタバレになるから”何が”そうだったとは言い難いけれど、攻殻機動隊であって攻殻機動隊では無いことを前提に劇場へ足を運んだ方が良いかもしれない。例えるなら、初代の展開をなぞりつつもオリジナルの解釈を進行して若者にウケたガンダムSEEDのような作品なので、人によっては良い部分と悪い部分が相殺しあって何も残らない可能性すらある。

僕個人の感想としてはアクションが良い映画だったなと思った(まあ、ハリウッドならこれくらい当たり前と言ってしまえばそれまでだが) 配役としてはスカヨハの素子やバトーさんも悪くなかったし、桃井かおりの演技が実に良かったのだが、北野武がそれを全部ぶっ壊していたのが残念でならない。荒巻の髪型を無理やり北野武にやらせている感覚も微妙だった。あれは完全に寝癖にしか見えない....

押井守氏の攻殻機動隊を彷彿とさせるシーンや、S.A.C 2nd GIGの要素を絡め、徐々に僕達の知っている攻殻機動隊だと思わせてくれたのも悪い気はしなかったが、少佐の最後の選択がこれまでの攻殻機動隊とは真逆の物であったのがトドメを刺してくれた。これは僕の望む攻殻機動隊では無かったのだと....





ツッコミどころは満載だった攻殻機動隊。一番気になったのは光学迷彩を使用した時の全裸っぽいシーンを多用したことだったかもしれない。もう少し見せ方があったんじゃなかろうか?押井版攻殻機動隊を知る海の向こうの人達の中で、今回の実写化がどう受け入れられているのか?攻殻機動隊を知らない人なら映画としてどう感じたのか?そんな取り留めもない物が頭から離れないほど悩ましい映画だった....

吹き替えで観てさえいれば、イメージがかなり違ったかもしれない













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posted by lain at 10:28 | 北海道 ☔ | 映画 SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年04月07日

文字で紡がれる遺伝子「伊藤計劃トリビュート2」 ハヤカワ文庫JA/感想

故”伊藤計劃”氏が作家デビューしたのは10年前。作家として活動したのはたった2年。


にも関わらず、代表作が劇場アニメとなり、大勢の作家にトリビュートされているのは何故なのだろう?





正直僕には小難しいことは分からない。でも分からないなりに彼の作品が人を惹きつける理由を考えてみると、儘ならない自身の身体に対するもどかしさや、生きることを赦されているのに命の使い道を知らぬ人々への静かなる怒りこそが全てだったんじゃないかと思わずにいられなかった。

正直、映像化された伊藤計劃作品は微妙だった。同じ境遇に無い者が束になってもかかっても、彼の抱えた闇に及ばなかったのだろう。




そんな彼に感化された若者六人のトリビュート第二弾をようやく読み終えたのだけど、六人それぞれが個性的で守る物など何処にも無いと言わんばかりに攻めていて凄く面白かった。冒頭を飾る”草野原々”の「最後にして最初のアイドル」からしてとんでも無い飛躍(アイドルとして成功することを夢見て挫折した少女と、その第一の理解者である少女の想いがガン細胞のように増殖して地球を飛び出してゆく展開は唖然呆然涙腺崩壊である(?))であったし、10代のラッパーでありながら本書に参加している”ぼくのりりっくのぼうよみ”の「guilty」も若さが眩しくも気恥ずかしい作品で良いアクセントになっていた。

他にも”柴田勝家”さんによる生まれた途端にヘッドマウントディスプレイを装着させられ、VRの中にしか現実が存在しない村の話や、砂漠で死体が歩くというディストピアネタを振るった”伏見完”、異なる言語を母国語とする者同士の普遍的な意思疎通を可能にする技術の落とし穴を書いた”黒石迩守”、そしてラストを飾った”小川哲”の「ゲームの王国」と、本当にそれぞれ違う毛色で楽しめた。


特にどこがSFなのかよく分からない「ゲームの王国」は読み応え十分で、普通に政情が不安定だった内戦下のカンボジアにおける人々のドラマとして読みふけってしまった、カンボジアならではの文化や、それらを表現する時のニュアンスがとても好みで、相性が良い作家さんだからしばらく追いかけてみたくなった。







一人の作家が死んで。一人以上の作家が生まれる。この世界は哀しみだけが連鎖するように出来ているわけでは無いなと思った。

伊藤計劃が愛したSFを、これからも僕らは愛してゆくだろう。






伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA) -
伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA) -





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我こそは次代を担うSF作家だ!そういう気迫が心地良い「伊藤計劃トリビュート」早川書房

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posted by lain at 07:23 | 北海道 ☔ | 小説 SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年04月05日

勘違いが救う命ってのが、この世界には沢山あるんだろう。その逆も然り....「メッセージボトル」amazarashi/感想

以前より格段とタイアップが増え、認知度もうなぎのぼりのamazarashi。




歌に力があるアーティストが売れて行くのは、本来嬉しい話ではあるものの「急いで買いに行かなきゃ、誰よりも多く買わなきゃ、奪ってでも手に入れなきゃ、愛を買わなくちゃ」と歌う”ラブソング”その他多くの楽曲で資本・商業主義を冷笑しているバンドの性格上、完全新作構成で無いアルバムや映像特典付きCD、書籍まで次々と出すようになって来ると、ファンとしてはちょっぴり小首をかしげてしまったりもする。











しかも今度はベストアルバムと来た。あのthe pillowsでさえベスト盤を出すことを躊躇い、ベスト盤の意義を見出すのに長い年月を費やしたというのに、もうベスト盤を出すのか?と正直思ってしまった。ただ、よくよく考えるとamazarashiも活動を始めて10年の節目であるし、「未だamazarashiと出会ってない人の為の一枚」と秋田ひろむが考えるのも無理からぬことだと、ベスト盤に収録された馴染みの曲を聴いているうちに考えは変わっていった。新曲「ヒーロー」も悪く無い。どうせなら「闇の中 〜ゆきてかへらぬ〜」も入れて欲しかったかな?











とりあえず、これまで四六時中amazarashiを聴いて来たファンは、映像特典と彼らの過去を綴った小説「メッセージボトル」を読むと良い。そうすれば”秋田ひろむ”に救われた自分たちが、その実”秋田ひろむ”を救っていたのだと分かって、少しだけ明日を生きる根拠を手に出来ることだろう...


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メッセージボトル(完全生産限定盤)(DVD付) - amazarashi
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タグ:amazarashi
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posted by lain at 21:37 | 北海道 ☔ | 音楽 国内 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする