2015年04月23日

好きが叶うまでの焦らしが好き勢に捧ぐ「終電にはかえします」雨隠ギド/新書館

 特例(幽霊と人の百合話がある)を除けば、ズバリ何処にでも有る百合である。

 知らぬ間に自分の心を占めていた先輩や同級生に対する、好きの距離を測りかねている少女達の姿が初々しい短編集だ。

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今時の都合の良いことを口走る女の子が
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後輩の顔に貫かれる



 もしかしたらいっときの気の迷いかもしれない。でも、その刹那なに身体と心が感じた愛おしさだけは嘘じゃ無い。そういうのを大事にしてる漫画家さんだとつくづく思った。露骨な性描写が無いのも爽やか。

 雨隠ギドさんは実に女性らしい憧れに素直な方。「甘々と稲妻」では、好きな子連れ教師と料理を作って家族ごっこに明け暮れる少女も出て来る。特別では無いかもしれないけれど、願望への寄り添い方が程良いから好きなのかもしれない。日頃ベタな物に飽きただのいい加減にしろだろ言っていても、根はメルヘンちっくであるから、こんな出会いがあったら良いなと普通に思ってしまうものの、そんな弱い自分を許せない気持ちもあるから複雑であります。


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後輩の男兄弟が勝手に気を回してプレゼントして来たコンドームを前に
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と、思ってみたりする






 かなり昔に、長い期間出張に行かされ、慣れ無い場所での共同生活に疲れていたとき、古本屋で何気なく手にとった谷川史子さんの本でベッタベタな温もりに触れて胸が震えた時のことを思い出しました。

 人生は甘えだしたらキリが無いし、自分の足で立つことを忘れてそれが当たり前になってしまう。けれど自分の強さだけで生きられもしない。ここぞというとき、支えてくれる誰かが居て欲しいというもの。たとえそれが漫画だとしても救われる瞬間が確かにあるのです。

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この投球姿の少女が非常に谷川史子キャラにダブって見えた
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甘々と稲妻の原点?違うかw





 出会うタイミングひとつで、世界は輝きもくすみもする。

 優れた物でなくとも良いのです。

 出会いたい時に出会えた物が人生において特別になって行くのだから。
   








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2013年12月06日

この甘美な花に、どう名付けるべきか?「青い花」/志村貴子/太田出版/2004年〜2013年/漫画/百合/感想

 読み終わった後、しばらく溜め息ばかりが漏れました。

 相手の「好き」と、自分の「好き」が違ったらどうしようと思い悩む少女達の姿が、あまりにも美しく尊く思えたからだ。

 身勝手に好きになって傷ついて。勘違いかもしれない想いに熱くなって後悔して。それでも好きだと頬を赤らめることが出来るだなんて、思春期ってなんて素晴らしいのだろう。実に羨ましい。こんな綺麗に人を恋しく想うことが今の僕には出来ないから....



 「青い花」は、いわゆる百合作品で、初恋さえしたことが無い少女と、年上の女性と既に身体を重ね合ったことのある少女が、久方振りに再会するところから物語が始まります。

 「その一言は、10年の月日をかるくとびこえた」

 
 再会した時そう感じた”万城目ふみ”と、そう感じさせた”奥平あきら”。 ふみは兎に角惚れっぽく、あきらは、兄が異常なほどのシスコンである以外、ごく普通の女の子。そんな2人が、いかにしてお互いの「好き」の形の差を埋めてゆくかまでの心の起伏が見事に描写されており、彼女達は勿論、周囲の人々のドラマにまで波及してゆくから、実に見所満載でありました。

 百合の人

 普通の人

 なり損ねた人

 なりそうな人

  
 それぞれに葛藤があることを、印象的な言葉と「間」を使って志村さんは巧みに描き分けてゆきます。 ただの思春期特有の憧れや夢想でお茶を濁して終わりではなく、そういった心と身体の欲望を逃げずに描くから志村さんの本は面白い。しかもほとんどの登場人物が片思いであるのが実にリアルな人間関係に思えてなりません。色恋っていうのは、やはり片思いで上等なんだと思います。どんなに分かり合えていると感じても、それはたまたまお互いの片思いが限りなく等しい重さになった瞬間の勘違いなのだとさえ思った。

 彼女達は同性だから互いの気持ちを必要以上に心配しているのだけど、相手が自分の「したい」ことを望んでいるかどうかに悩むのは、通常の異性カップルでもままあることですし、同性ならば尚の事思い悩むのでしょう。彼女達の淡い恋心を見てると、こんな純粋な想いに性別云々なんて無粋だと、つくづく思いました。愛しい気持ちを無視して、誰かのルールに縛られる必要なんて無いんですよね。勘違いの恋だって愛になれるチャンスがあるのだから。



 僕は男だが、彼女達の熱に浮かされた学園生活が羨ましい。教会があるキャンパス。丁寧に挨拶をしてくれる年少組。誰もが恋に落ちずにいられない美麗で絵になる先輩。こんな学園生活なら、女の子生まれ変わって、女の子と文化祭やら旅行やらお泊まり会やらしたくなっても仕方ないのではなかろうか?(まあ女子校に実際通っていた志村さんが言うには、そんないい場所では無かったから青い花で理想的なキャンパスライフを描いたらしいですけどね。) 男同士の友情を怪しく感じて腐る女子達が多いですが、男からしたら女子同士の方がよほどナチュラルに怪しいですよ(ユリ´▽`)ジ〜

 女性が描くBLは想像で描かれているのが多い為か、みてくれは男だけど中身は女性的な登場人物が多く見られどこか不自然。それに対し女性が描く百合は普通に本当の想いが見え隠れしてて本物に思える部分が多いように思います。


 大事な部分は身も心も同性が1番理解出来る。

 だから精神的に不安定な思春期の少女達は、想いが通じる女性に走るのかもしれませんね。




  (= ワ =*).。oO羽海野チカさんとかが、ちょっとエッチな百合漫画描いたら面白そうだなぁ....

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本編を楽しめたなら、志村貴子さんのロングインタビューが読める「マンガ・エロティクス・エフ vol.82」も読んで欲しいです。これを読むと青い花の余韻に2倍も3倍も浸れること間違いないです(ステマ)
http://www.ohtabooks.com/publish/2013/07/06155637.html

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2013年08月24日

宝石人間アラワル!「宝石の国」/市川春子/講談社/アフタヌーンKC/2013年/漫画/感想

 散々”アフタヌーン”にはワケの分らない世界を見せられて来たけど、この”市川春子”さんの「宝石の国」も類に洩れずワケが分らない。


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 その昔繁栄していた生物が海に飲まれて命を落とし、海底に棲む微生物に喰われて無機物となった。それから長い年月を掛けてそれらは結晶と化し、海から地上へと上がって住まうようになったのが宝石人間達だそうだ。彼等は、月からやって来て宝石である自分達を月へ持ち帰ろうとする存在と戦っている。ちなみに襲撃者達はバッサリ切ると、まるでレンコンのような切り口だったりする....

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 ね、ワケが分らないでしょ♡


 幻想的な世界観には細かい設定など無用で、謎が謎を呼び最後まで謎のままの方が面白い事も多く、ワケが分らないのは決して悪い事では無いと僕は思います。そういう意味での宝石の国は素晴らしい構成ですね。「なんとなく」世界感を感じ取れる雰囲気作りが絶妙です。


 宝石人間達はそれぞれ実際の宝石の特性を人格にも反映させていて、優秀で人望の厚い”ダイアモンド”、仲間が眠りにつく夜にしか出歩かない孤独な宝石”シンシァ”、何をしても使えない落第生な主人公”フォス”などが、自分達のコンプレックスと外敵との両方を相手に戦いつつ見せる表情がとても良いです。全員で28人いる宝石人間達を擬人化させる事は、「ヘタリア」のように国ごとの色を出す擬人化より遥かに難しいように思います。腐女子の妄想力には実に驚かされますね (= ワ =*)

 『市川春子『宝石の国』 元ネタ宝石一覧』



 春子さんの描く登場人物は、男の子のようでもあり、女の子のようでもある中性ラインでデザインされ、身体の線の細さや顔のシャープさから「ファイブスター物語」の”ファティマ”や「少女革命ウテナ」の”長谷川 眞也”さんの仕事とダブって見えて魅力的。美しくも脆い彼等宝石の物語がどう落ち着いてゆくのか実に楽しみだ。


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 一見すると、およそアフタヌーンには似つかわしくないような絵柄な気もしますが、似たような漫画ばかりのジャンプなら絶対編集のOKが出ないところを、アフタヌーンはしっかり認めてGoを出せる点、懐の広さを感じますね。



 とにかく、ワケの分らない世界に、しっかりベタな魅力も放り込んで来る市川春子さん上手いっす(ゝω・)b



 宝石の国公式サイト http://ptpt.x0.to/pp/ web拍手 by FC2
posted by lain at 07:22 | 北海道 ☔ | Comment(0) | 漫画 百合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする