2017年09月01日

我が青春のOVA1987 #9「トワイライトQ 迷宮物件 FILE538」押井守(監督)/近藤勝也(キャラデザ)/スタジオディーン/感想

サッカー日本代表!ロシアW杯出場決定おめでとう!!


などと、口にするのも憚られるほど、最近サッカーを見ていない。昨夜も家に帰るまで代表戦のことなど忘れいた。



昨日、思い出したかのように(実際思い出した)観た本作も、本当は8月28日に30年という節目を迎えており、もういっそ忘れたままでも良いかなとも考えたものの、押井守作品の中でも好きな部類に入る物であるから、スルーしきれなかった。

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航空機が失踪する事件が相次いだ夏、1人の探偵がとあるアパートの一室に住むとある親子を調査するのだが....




生活感溢れる(汚い)部屋でソーメンをすすって暑い夏を乗り切っている親子(父と娘)と、TVの中でニュースを読み上げる男(千葉繁)以外にキャストはいないのだが、航空機が突然”錦鯉”に変貌し優雅に空をゆく導入部や、何が真実か分からなくなっていく、いつもの押井節が短い尺(短いからこそのテンポ感がある)の割に良い。親子と思われた2人の関係が、どうやらそうでは無さそうだぞ?となった後の手のひらの返し方や、謎の残し方が意外に古典的なホラーであるのも見所。

個人的には細かな演技付けが好きな作品だ。会話をほとんどしない親子の何気ないやりとりや、意味有り気に見えて意味が分からない仕草であるとか、無邪気で可愛いのに何者か分からない子供のわんぱく(死語)な様子だとか、近年の小綺麗な押井守作品では味わえない良さがこの時期の作品にはぎっしり詰まっているような気がした。

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この顔を結構長く撮る辺りのセンスが大好きだ48867D72-79B5-45DC-AB0E-698C2964BCD5.png
鯉が口をパクパクさせるのを真似る少女。口をパクパクさせる理由が他にあるのでは無いか?と後々深読みしたくなる。
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ジブリとは一味違う喰いっぷりEA69F5F4-FC09-43E3-9CD8-7DA82510A9DA.png
箸を上手に持てないのが微笑ましい



物事をすり替え現実と虚構の狭間へと観客を叩き落とす上手さにおいて、押井守以上の監督を僕は知らない。オタクに限らず、自分好みの"様式美"と言う物が誰にでもあるのではないかと思うけれど、僕にとってのそれは押井守節だったりするかもしれない。

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"らしい"美術や音楽も気分を盛り上げる



また迷宮物件のような泥臭い押井守作品が観たい。今なら「天使のたまご」の流れを組んだ作品でも絶対お客は付いてくると思う。つくづく当時のOVAという枠の自由さが今現在損なわれてしまったことが悔やまれる。



まあ、押井さん達の世代が好き勝手やりすぎて、予算の組み方が渋くなったというのもあるかもしれないかな......


バブル時代に仕事したかったな......






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我が青春のOVA1987 #8 「火の鳥 ヤマト編」手塚治虫(原作)/平田敏夫(監督)/感想: 無差別八方美人?


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2017年08月01日

我が青春のOVA1987 #8 「火の鳥 ヤマト編」手塚治虫(原作)/平田敏夫(監督)/感想

”火の鳥”とは不死鳥(フェニックス)のことだろうと思っていたが、実は世界各地に火の鳥の伝承があるそうな(半数は不死鳥と同じ存在として扱われている)何処かで伝承が変化して伝わったのか?それとも実際に違うものとして広まったのかは定かでは無い。

では、故”手塚治虫”さんのライフワークであった『火の鳥』自体は、いかに日本や世界で伝承されているのだろう?

よもや手塚治虫の名まで忘れ去られつつあるなんてことは無いと思いたいが.....






大和に逆らう熊襲の勢力を削ぐため、その頭領である川上タケルを亡き者にするため送り込まれた男オグナが、川上タケルの妹カジカと恋仲になり、故郷のためにタケルを討つか、オグナとの幸せな生活を選ぶかに苦悩するも、火の鳥の啓示を信じタケルを討って大和へ帰ることを決断する。しかし、見事に大役を果たして大和に戻った彼を待っていたのは賞賛の声では無かった.....



ヤマトタケルの物語をベースに火の鳥を登場させた作品で、時代に翻弄された男女の悲哀が実に良い話。流行り廃りに関係の無いところで勝負をしているから、今観ても色褪せない魅力があるなと思った。

原作の良さは当たり前だが、ヤマト編に先駆けて劇場で公開された「火の鳥 鳳凰編」の監督を勤めた”りんたろう”さんのテイストを再現してみせたスタッフ達も流石である。キャラデザを等身大に改変しているのが原作ファンからすると引っかかるものがあるそうだけど、アニメーションとしても、この先100年は残る名作だ。

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カジカが狩りで放った矢が当たったというのに、美人を前にするとこの笑顔のオグナ....

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そしてそれに惚れてまうカジカ......お前ら一生やってろっ!

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お馴染みの不細工鼻も登場



時代も場所も問わず人間を見守る火の鳥は、その存在そのもの(火の鳥の生き血を飲めば不死になると言われている)が人心を惑わすと言うのに、ちょいちょい人の世に干渉して来るのが悩ましい。このヤマト編でも、オグナが熊襲に残るように促していれば、もしかすると幸福な時間がもう少し長続きしたのでは無いかと思ってしまう。

勿論そんなことは言っても栓なきことではある。オグナが残ってもヤマトと戦うことになるのだし、もっと悲惨な死に方になったやもしれない。あくまでも人の手で自分たちの世界を正して欲しいという火の鳥の優しくも厳しい姿があればこそ、この物語は鳴動するのだ。葛藤なき感動などありえない。

人間とは酷く不器用で面倒だ。助走距離が無ければ空も飛べやしない。

いっそ火の鳥になれれば....

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2017年07月22日

我が青春のOVA1987 #7 「マップス(1987年版)」長谷川裕一(原作)/スタジオぎゃろっぷ/懐アニ/感想

昨日7月21日は「ロボットカーニバル」30周年の日だったのだけど、実は「マップス」というOVAもひっそりと30周年を迎えていた。

そもそも「マップス」なる作品がなんぞや?ということだけど、SFを中心とした作品で今でも活躍している長谷川裕一さん(星雲賞という有名なSFの賞を貰うくらいの漫画家さん)の出世作で、主人公の男の子とそのガールフレンドが、突如現れた宇宙海賊を名乗る美女に捕まり、自分が宇宙規模の放浪民族”さまよえる星人”の末裔であることを知らされ、彼らの民族が隠したとされる秘宝”風まく光”を探しているという女海賊と共に、銀河で冒険を繰り広げることとなる物語だ。

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星をも砕く馬鹿でかい頭だけの生命体銀河伝承族はマジでやばい....

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基本的には骨太なSF大作なのだけど、ちょいちょいセクシーなのも嬉しい



本作の話をするなら、避けて通れないのがマップスを連載していた雑誌「月刊コミックNORA」だろう。あの学研が発行する漫画雑誌だったのだけど、周囲で読んでいるような人はまずいなかった。僕のように単行本は気になって手に取る人はいたものの、兎に角地味なイメージでノーラコミックを略した"NC"マークも微妙だった。しかしSF好きの評判は悪く無かったのではないかと思う。超人ロックの聖悠紀さんや、安彦良和さん、あさりよしとおさん、こやま基夫さん等々、個性派揃いの連載陣を見れば、今更ながらでも読んでみたくなるのではなかろうか?

まあ僕自身まともにコミックNORAを読んでいないのでなんとも言い難いけれど、派手さは無いけど気になってしまう雑誌の打ち出す作品は意外性に溢れていて好きだ。売れないけど面白い漫画がこの世界には多過ぎると思う。電子書籍で配信した利益が、もっと作家の元に転がり込むようになれば、売れないけど面白い漫画を描く人達が、好きに作った作品で食べていけるのでしょうね......



で、脱線したところで1987年版のマップスはどうだったか?ということだけど、正直あまり芳しくない。原作の美味しいとこどりのストーリー構成はそれなりに悪くないのに、キャラの作画があまりにもお粗末で辛い。マップス1巻の序盤だけをチェックした人が作ったようなキャラデザが生理的に受け付けないだけでなく、キャラ崩れしないシーンがほとんど無い。今の綺麗過ぎるアニメを見慣れたせいもあるかもしれないけれど、同じ時期のアニメの質と比べてもお世辞にも褒めるのが難しい。

そんなアニメの出来に左右されているのかどうか分からないけれど、声優陣の演技も何処となく微妙なのだ。当時21歳の皆口裕子さんが下手なのは兎も角、主役を演った田中真弓さんの気の乗らなさや、神谷明氏のヤケクソ感は明らかに現場のムードのせいではないだろうか?それとも完全に気のせいかな?....

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こんな人は知らない....
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こんな人達は知らない....

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他のキャラはコミカルなのに、リプミラの茶目っ気が全然出せていないのが致命的だった....





脚本に寺田憲史さんを起用したり、音楽に田中公平さん使って主題歌は関口和之さんが参加しているし、ぶっちゃけ豪華なスタッフや声優陣に恵まれているように一見見えるけれど、案外それだけじゃ現場は回らないものなのかもしれない。ただ、この作品は天使の姿をした宇宙船であるリプミラ号への愛だけは素晴らしかった...かな?


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これからマップスを観ようという人は、正規のルートで見れない1987年版は忘れて、本作から7年後に東京ムービーが作った1994年版を是非見て下さい。映像演出もパワフルだし、辻真先さんの脚本も光ってます。










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