2016年03月16日

凄い事を当たり前に凄いと触れ回る奴は実は凄く無い「モブサイコ100」ONE/裏サンデー

やっと出張の日程が半分ほど終わった夜、うっかりこれを読み始めたのだけど、ワンパンマン同様読み出したら止まらなくなり困った。

裏サンデー | モブサイコ100





主人公は、物を浮かせるとかスプーンを曲げることが出来るどころじゃない強力な超能力の持ち主なのだが、おかっぱ頭でジト目の表情筋が死んでいそうな見た目で、体力や学力も共に冴えない残念な男の子。心根が優しく芯の強い性格の彼は、自分の力など無い方が良いとさえ考え、便利なはずの超能力をひけらかすこともせず弟を始めとした自分に無い才能(勉強、運動、etc)を持っている人こそ凄いのだと本気で口にするお人好しだと言うから、ある意味タチが悪いかもしれない。

そんな控えめな彼だから、超能力は人に向けて使わないとまで誓っているものの、周囲がそれを許してくれない。インチキ霊感商法を営む男"霊幻新隆"の口車に乗せられ悪霊退治をさせられたり、超能力を悪用する青年に絡まれ死闘を演じることになったり、度重なる力の使用が世間の目を惹いて新興宗教の教祖に祭り上げられそうになったり、能力者を集めて政府転覆を目論む悪の組織まで現れ、否応なしに能力者・非能力者を問わず超能力を行使しなければならない事態へと追い詰められてしまう。そして、彼の中のストレスゲージが100%になった瞬間、別の自分が現れ能力を解放し周囲を焼け野原に変えるのだ....

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見た目がしょぼいのに能力が凄いという点が非常にワンパンマンと通ずるものがあるものの、主人公である"影山"(通称"モブ")はまだまだ子供だから、いちいち細かい事に悩んでいて焦ったい。しかし、人を傷つけたくない、でもその代わりに自分が傷付くのは良いのか?誰かの言う通りにしていたら楽だが、それだけで本当に良いのか?身勝手な人間の望むままに、力づくで無害な霊を祓って良いのか?....などと、倫理を問い始める彼の思考は非常に初々しく実に生臭い青春っぷりが胸に刺さる。

基本はギャグベースであるのに、妙なリアリティがあってONE氏の漫画には自然と引き込まれてしまう。画は不安定であるのに、構図の上手さや此処ぞと言う場面でも描き込みが凄い点も見逃せない。綺麗な絵を描く漫画家はごまんと居るが、内容だけで勝負出来る漫画家はそれほど多くない。キモカワマスコット、良きライバル、味のある師匠、そして出来の良い弟など、キャラ配置もソツが無く、脇役のドラマもすこぶる面白い。僕のお気に入りは霊感ゼロの癖にモブの師匠をしている霊幻だ。盗人猛々しい論法で自分に都合の良い事ばかり口にしている割に、結構良識のある人間で時折本気で尊敬したくなるセリフを吐くから憎めない良いキャラである。
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大袈裟かもしれないが、創作の世界には"脇役"や"はみ出し者"が活躍する作品は数あれど、今の日本に弾かれた若者達を描かせたらONE氏以上の人はなかなか見当たらないんじゃなかろうか?

今日笑えなかった奴、昨日も笑えなかった奴、そのまた前日も笑えなかった奴、気付けばずっと笑っていなかったと気付いた奴は、是非モブサイコ100を読んで感情を呼び戻して欲しい。別に心底笑えないなら笑わなくたって良いのだ。泣いたり怒ったりするだけでも力は湧いて来る。

要はその湧いた物を何に使うのか?

生きるってのは、つもりそういうことなんじゃ無いかと思わせてくれる良い漫画だった。



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posted by lain at 19:02 | 北海道 ☔ | Comment(0) | 漫画 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年12月01日

水木サン おやすみなさい...「墓場鬼太郎 <貸本まんが復刻版> 1巻」水木しげる/角川書店

 日本妖怪の父とでも言うべき”水木しげる”さんが昨日亡くなった。享年93歳である。



 大勢の著名人がその死を惜しむ中、僕は不謹慎にも『まだ健在でいらっしゃったのか』と、もう亡くなっている気になっていた。

 正直言って僕は「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメを子供の時分に観ていたと言う以外、水木先生との接点は無い。コミックでさえまともに読んだことは無かった。せいぜい図書室でこれが原作か、と、チラ見したくらいだ。だから、昨晩、香典代わりにAmazonでKindle版の「墓場鬼太郎」を買って読んだのが初めての”水木しげる”となった。

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 元々違う方の原作であった”ハカバキタロー”という紙芝居を、水木さんが承諾を得てオリジナルの紙芝居として作ったのがゲゲゲの鬼太郎シリーズとの関わり合いの始まりだったそうで、改めて貸本漫画家として連載を開始した「墓場鬼太郎」でも、流れが分かり易いコマ割りや、前回までのあらすじが冒頭にある回があったり、振り返りを兼ねて登場人物に自己紹介させたりと、紙芝居の特徴的な表現が見受けられました。

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版画のような黒の質感がたまらない

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自己紹介風なのが微笑ましい




 まだ1巻であるし、悪い妖怪を倒す鬼太郎アニメ(2008年の墓場鬼太郎以前のゲゲゲの鬼太郎作品のこと)のような内容では一切無いけれど、人間に追いやられ住処を失いつつある幽霊だの妖怪だのが、何かとしでかす様子には、恐ろしさだけではなく何処か愛嬌があって面白い。勧善懲悪な分かり易いヒーロー像を押し付けたゲゲゲの鬼太郎アニメではなく、この貸本版と呼ばれる墓場鬼太郎を元に2008年にアニメを作った人たちの気持ちが分かるというものだ。

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『これこれしかじか』は魔法の言葉

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汚らしい”ねずみ男”と、”金野なし太”のやり取りも最高である







 やはり作品を読む前と読んだ後では喪失感が違うもので、少し触れただけでも本当に素晴らしい漫画家だったのだと痛感しています。様々な時事ネタやパロディでウケを狙っている妖怪ウォッチ人気が鳴り止まない昨今ですが、そんな右から左へただ消費されるだけの作品ばかりに気を取られず、良い機会だと思うので水木しげる作品を僕のように経験して欲しいものだと思いました。

  今更凄さに気付いてごめんなさい水木先生.....


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タグ:水木しげる
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posted by lain at 07:11 | 北海道 ☔ | Comment(0) | 漫画 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年11月08日

成れぬなら、成ってみせようホトトギス?!「変身! 1巻」横山 旬(漫画)/エンターブレイン/感想

 今ではすっかりやさぐれてしまった僕にも、可愛い(?)子供時代はあって、空を飛んだり、かめはめ波撃ったり、水を被ったら女の子になったり出来る、架空の世界の人間と同じようなことが実際に出来るんじゃないかと心の何処かで考えていたものです。


 自分とは違う何かに変わる、すなわち”変身”に酷く憧れていた僕は、ただ妄想しているだけでは叶う物など何も無いと言うことを自覚するのが遅すぎました。

 そんな僕だから、自分から変身する為に必要なことを熱心に勉強する本作の主人公は非常に眩しかった。


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ど直球なタイトルに古風さまで感じる表紙が目を惹く



 夜な夜な河原で熱心に変身の練習をしていた”東島ヒデ”は、同じクラスの”矢羽田マリ”にその現場を目撃され、秘密にしてもらう代わり何にでも変身してみせると約束してしまい、あれになれこれになれとマリのオモチャにされてしまう。

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まんざらでも無いヒデくん



 このマリという少女がまた性悪で、約束したくせに速攻でバラすし、我が儘放題でヒデを振り回すんですけど、いざとなると本当に真剣にヒデを想っているのが伝わるから、ヒデもついつい気を許していくんですよね。この飴と鞭のバランスは最高過ぎます。あえてヒロインを崩して不細工にする辺りも愉快だ。

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クラスで虐められているヒデの悟り方がかっこいい....

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こんなに可愛い笑顔を見せるくせに

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この仕打ち




 幼少期から思春期へと進み二人の関係がハッキリと男と女になっていく過程を見てるのもとても楽しいし、しっかりと変身までのプロセスやその後を描いていることが一番本作の魅力かもしれません。質量は上手く増やせないとか、無機物に変身するのは難しいとか、極端に構造の違う物に変身すると元に戻りにくいだとか、あまりに生き物を研究し過ぎて、変身した生き物そのものに頭の中身がなってしまったりするのも面白い。SF小説好きにはたまらない内容ではなかろうか?

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彼のうんちくを聞いていたら自分も変身出来るような気になってくる

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中途半端に人体に戻るとキモい

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バッタに変身したヒデの童貞は......




 とにかく変身は大変そうだ。

 でも、だからこそのワクワクもぎっしり詰まっていそうでもある。

 この本を読んで、自分も変身する為に勉強するぞ!って、妄想で終わらない夢を子供達が見れたら素敵ですね。



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posted by lain at 09:22 | 北海道 ☔ | Comment(0) | 漫画 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする