心の隙間に入り込む寄り添い方が狡い「500年の営み」山中ヒコ/祥伝社/BL/感想

ここ数年漫画欲が低迷中で、この本も衝動買いしてから数年が経った。

ネットで意外とSFしてる作品だと聞き、割と表紙も良いなと何気なくAmazonの欲しい物リストに放り込んでおいたのを何かのタイミングに買っていたようだ。





すっかり何時買ったかすら思い出せない本を、寝るのを名残惜しむように布団に潜り込んでから読み始めてみると、思っていたよりBLで始まり『話が違う』と序盤こそ苦笑いさせられたが、メカの作画の心許なさに反比例して案外SFらしいギミックを利用したラブロマンス物であることが分かって来ると、たとえそれが男同士の愛の物語でも結末が気になりページを捲る手は止まらなかった。

ロミオとジュリエットのように、親同士が長年啀み合っている関係にある男の子2人が、そんな事情に幼い頃から振り回されつつも大学生になってから互いが相思相愛であることを知り、何もかもこれからと云うところで片方の青年が不慮の事故で亡くなってしまう。そして主人公であるもう1人の青年は絶望のあまり身投げしてしまうのだが、次に目覚めると恋しい青年そっくりのロボットが貴方は250年間眠っていたのだと告げて来る....

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主人に認められてうっすら涙を浮かべるロボット

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二度目の目覚めで更に数百年過ぎてから、何故人型のロボットが作られなくなったかの設定が割と良い



導入としては淡白でありがちな物なのだけど、その後の展開が所謂”天丼”になるのが実に良い。何度も喪失感を味合わされているうちに、本来なら熨斗をつけて返したいレベルのSF描写も深いものに感じるようになって行くから悩ましい。もう1つ確かなことは、メンタルが弱っている時のBLはやばいということ。シチュエーションに対する寄り添い方が凄まじく巧妙で、たとえノンケでも”この優しさに包まれたい”と思わされてしまう。「500年の営み」同様積んでいた『死にたがりと雲雀』への興味も否が応でも高まった。

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こんな台詞を口にする男は日本にまず居ないな....




願わくば、今回のがただの気の迷いで無いことを祈る。





山中ヒコTwitter https://twitter.com/hicoyama
posted by lain at 07:05北海道 ☔漫画

”行ったフリ”をしなければ、もしかすると「きまぐれオレンジ☆ロード」に出逢っていなかったかもしれない

小・中学生の頃、週に1、2度剣道を習いに行っていた。実際には習いに行っていたと云うよりも、行かされていたが正しい表現で、面白がっていたのは数年だけ。中学に上がった段階でかなり興味を失っていた。とにかく防具が汗臭いし窮屈だし叩かれるし未だに良さが分からない。何度やめたいと言っても「もう少しやってみたら?」の一点張りだった母にもウンザリで、いよいよ行ったふりをし始める始末。剣道教室をやっていた体育館に隣接していた公園を抜けた先の小さな商店街で時間を潰すのが日課になっていった。

商店街で1番長居したのは、当時地元では最大手だったスーパーの2階に間借りしていたおもちゃ屋さんで、何かを買うといつも「大事に使ってね」と微笑む店主の顔が今でも浮かんでくる。2店舗あったそのおもちゃ屋さんも、時代の流れと共に役割を終えてしまった。あのおじさんは、まだ健在なのだろうか?

そして、そのおもちゃ屋さんと同じくらいお世話になったのが、スーパーの斜め向かいにある建物にテナントで入っていた名前も思い出せない書店さんである。その建物はどんな店が入っても直ぐ入れ替わってばかりで、書店も毎度客は数人と云う閑散ぷりだったが、照明すら薄暗い店内の雰囲気は嫌いではなかった。あの時代は漫画本がビニールに包まれていないことが多く、立ち読みもし放題。長く居座っていると店員が近くに寄ってきて、露骨に本の整理や掃除をしだしていたのも今では良い思い出だ。「きまぐれオレンジ☆ロード」と出逢った場所としても忘れられない書店であることは間違いない。

※Kindle Unlimitedで無料

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※でもやっぱこっちの表紙だな俺のきまぐれオレンジ☆ロードは




ストーリーを簡潔に説明すると、超能力を持つ家系に生まれたこと以外凡庸な主人公が、悪ぶっている以外真逆なタイプの女の子二人に惹かれ、読者を三角関係と云う蟻地獄に引き摺り込み、延々とヤキモキさせ続けると言う極悪な作品である。絶妙な匙加減のお色気も魅力的だったが、陰キャには一生縁がない王道青春ストーリーがたまらなく胸に刺さったものである。アニメ化もなされ、OVAや劇場版と10年近く展開していったため、幅広い層にファンは居たのだろうけれど、今回の訃報で自分より遥かに若い方が反応しているのが印象的だった。

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※一見きまぐれに見えるが、友情にも恋にも誠実でありたい”まどか”さんの気丈さは本当に格好良かった。

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※子供っぽく恭介にアプローチし続ける”ひかる”ちゃん。序盤は作者からも雑な扱いを受けているが、それでも恋を諦めない彼女は尻上がりに魅力的な女性へ変貌していく。





正直言って故人の作品はきまぐれオレンジ☆ロード以外だと短編を少し読んだことがあるだけなのだが、以外が必要ないくらい楽しませてくれた気がしてならない。”まつもと泉”さんご本人が、それに対しどう感じていたのかは分からないが、大事にしたい作品であったことは揺るがないはずだ。


恋に恋せざるえない罪作りな作品を遺して下さって、本当にありがとうございました.....

僕は結局そんな恋には終ぞ縁がありませんでしたが、あなたの素敵な恋の呪縛は、この先も誰かを悩ませることでしょう.....

お疲れ様でした.....








ちなみに、一番好きな女性キャラは恭介の妹であります。

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まなみちゃん大好き.....


posted by lain at 01:13北海道 ☔漫画

不幸ばかりが世界じゃないが、幸福ばかりじゃ味気ない「進撃の巨人」諫山創/感想

ここ数日、期間限定無料で読めることを良いことに、夜更かしして進撃の巨人を読み耽っていた。信じていた正しさがガラガラと崩れ落ち、泥沼へと沈んでいく登場人物達を眺めながら、嘘の世界なのに本当のことばかり描かれている漫画だなと改めて溜息が出た。日本が、そして世界が古来より延々と解決出来ずにいる物が、これほどぎっしりと詰め込まれている少年漫画はなかなか例がない。進撃は難しいからと敬遠する人が少なからずいるのも分かる話である。



いつ頃からそうなのかは思い出せないほど、今では”べったり”心に張り付いている持論なのだが”愛は世界など救わない”と常々思っている。進撃の巨人に登場する多くの者達もそうだが、愛故に自分達の世界以外を壊す者と、そうでない者の比率は圧倒的に前者へ傾いている。それでも全てを愛せれば解決するはずだと言う人もいるかもしれないが、それは愛されるのを迷惑に思う人間を殺すのと同義だろう。逆に、誰もが誰(自他共に)のことも深く愛さないで生きられたなら、”復讐”の2文字などその言葉の意味ごと世界から消えるに違いない。


進撃は生々しい残虐描写で子供に悪影響があると感じている人も居るだろうが、個人的には進撃を日本の教育に活かすべきでは無いかと思うほど子供に良い教訓を提示しているように感じている。いっそ学校になど行かなくとも進撃の巨人を読んでいるだけで成熟した人格形成が可能なのではなかろうか?今回のキャンペーンにしても、既に多くの人が読んでいるにも関わらず、まだまだ本作に内包された”何か”が拡まって欲しいと大勢が思っているからこそ実現したようなものだ。娯楽成分だけの作品ならここまで人を熱く出来るはずがない。


まあ兎に角だ。今更追い付いておいて言うのも恥ずかしいけれど、ド派手な部分に気を取られ本質を見誤る人間の横槍で着地点がズレたりしないことだけは心から祈っている。止まることを赦されない人気漫画家というのは相当しんどいでしょうが、もう暫し頑張って頂きたい。


”休むのは死んでからです”と、言っていた人は、元気にしてるかな?




【今日の編集部】『進撃の巨人』28巻まで“無料”の神キャンペーンは明日(9/18)までだぞ!

  https://app.famitsu.com/20190917_1513135/

posted by lain at 19:56北海道 ☔漫画