続きが存在しない本と睨めっこする師走「代官山町沖3マイル 1巻」岡井ハルコ/幻冬舎/感想

大人の冬休み1日目、連休を気分良く過ごす為まず掃除洗濯諸々を始めた。面倒なのは面倒なのだけど、普段はやらず仕舞いの漂白で茶渋が落ちたマグカップを眺めているだけで嬉しくなってしまう。日頃からこうしていたら、365日全部がこれくらい気分よく過ごせるのだろうか?まあ、そんな暇があったら苦労しないし、そもそもそのマメさが自分には無い。連休様様である。


普段出来ないと言えば紙媒体の整理もそうだ。あれを引っ張り出す為にこれを引っ張り出すといったことを繰り返し過ぎて、荒れ放題の本棚をなんとかしたいだけでなく物量そのものを減らしたいのである。小説以外はほぼ電子版を買うようになった為、それほど増えてはいないけれど、居住性を圧迫していることに変わり無く、とりあえずは思い入れの少ない積み本からお別れしてくれる有志を募ろうと思っているものの、本当に自分にとってどうでも良い作品なのか読み始めた途端、別れが辛くなってしまうのが困りもの......





世界の殆どが沈んでしまった中、ぽつんと浮かぶ島。そこには神社と妖怪と母娘が暮らしていて、何故かスーパーの配達のお兄さんが定期的に訪れたりする。不気味でありながらも気の良い妖怪と無邪気に過ごす娘を、訳ありな顔で見守る母と云う光景は微笑ましくも歪で切ない。いつか沈むと云う島の謎が見えてくればくるほど終焉に向かう哀愁が増していくのが味わい深い。

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100日後になんちゃらと言う漫画が流行っていたが、いつ終わるか分からない作品より、いつか終わることが分かっている作品の方が狡い感動を連れてくるような気がする。本作もSFとダークファンタジーでもって終焉を優しく包む感じがたまらない。現在連載は止まっている(掲載していたデンシバーズが消えた為)けれど、このまま終わるのは本当に惜しい。漫画の新規開拓をしなくなって久しいが、岡井ハルコさんのようにメジャーなようでメジャーじゃない方の作品も漫画界には絶対必要だなと改めて思った。

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うーん。この調子で何冊処分出来ると言うのだろう?

無理だな(*ゝω・)v






岡井ハルコTwitter  https://twitter.com/okaiharuko



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posted by lain at 13:50北海道 ☔漫画

心の隙間に入り込む寄り添い方が狡い「500年の営み」山中ヒコ/祥伝社/BL/感想

ここ数年漫画欲が低迷中で、この本も衝動買いしてから数年が経った。

ネットで意外とSFしてる作品だと聞き、割と表紙も良いなと何気なくAmazonの欲しい物リストに放り込んでおいたのを何かのタイミングに買っていたようだ。





すっかり何時買ったかすら思い出せない本を、寝るのを名残惜しむように布団に潜り込んでから読み始めてみると、思っていたよりBLで始まり『話が違う』と序盤こそ苦笑いさせられたが、メカの作画の心許なさに反比例して案外SFらしいギミックを利用したラブロマンス物であることが分かって来ると、たとえそれが男同士の愛の物語でも結末が気になりページを捲る手は止まらなかった。

ロミオとジュリエットのように、親同士が長年啀み合っている関係にある男の子2人が、そんな事情に幼い頃から振り回されつつも大学生になってから互いが相思相愛であることを知り、何もかもこれからと云うところで片方の青年が不慮の事故で亡くなってしまう。そして主人公であるもう1人の青年は絶望のあまり身投げしてしまうのだが、次に目覚めると恋しい青年そっくりのロボットが貴方は250年間眠っていたのだと告げて来る....

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主人に認められてうっすら涙を浮かべるロボット

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二度目の目覚めで更に数百年過ぎてから、何故人型のロボットが作られなくなったかの設定が割と良い



導入としては淡白でありがちな物なのだけど、その後の展開が所謂”天丼”になるのが実に良い。何度も喪失感を味合わされているうちに、本来なら熨斗をつけて返したいレベルのSF描写も深いものに感じるようになって行くから悩ましい。もう1つ確かなことは、メンタルが弱っている時のBLはやばいということ。シチュエーションに対する寄り添い方が凄まじく巧妙で、たとえノンケでも”この優しさに包まれたい”と思わされてしまう。「500年の営み」同様積んでいた『死にたがりと雲雀』への興味も否が応でも高まった。

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こんな台詞を口にする男は日本にまず居ないな....




願わくば、今回のがただの気の迷いで無いことを祈る。





山中ヒコTwitter https://twitter.com/hicoyama
posted by lain at 07:05北海道 ☔漫画

”行ったフリ”をしなければ、もしかすると「きまぐれオレンジ☆ロード」に出逢っていなかったかもしれない

小・中学生の頃、週に1、2度剣道を習いに行っていた。実際には習いに行っていたと云うよりも、行かされていたが正しい表現で、面白がっていたのは数年だけ。中学に上がった段階でかなり興味を失っていた。とにかく防具が汗臭いし窮屈だし叩かれるし未だに良さが分からない。何度やめたいと言っても「もう少しやってみたら?」の一点張りだった母にもウンザリで、いよいよ行ったふりをし始める始末。剣道教室をやっていた体育館に隣接していた公園を抜けた先の小さな商店街で時間を潰すのが日課になっていった。

商店街で1番長居したのは、当時地元では最大手だったスーパーの2階に間借りしていたおもちゃ屋さんで、何かを買うといつも「大事に使ってね」と微笑む店主の顔が今でも浮かんでくる。2店舗あったそのおもちゃ屋さんも、時代の流れと共に役割を終えてしまった。あのおじさんは、まだ健在なのだろうか?

そして、そのおもちゃ屋さんと同じくらいお世話になったのが、スーパーの斜め向かいにある建物にテナントで入っていた名前も思い出せない書店さんである。その建物はどんな店が入っても直ぐ入れ替わってばかりで、書店も毎度客は数人と云う閑散ぷりだったが、照明すら薄暗い店内の雰囲気は嫌いではなかった。あの時代は漫画本がビニールに包まれていないことが多く、立ち読みもし放題。長く居座っていると店員が近くに寄ってきて、露骨に本の整理や掃除をしだしていたのも今では良い思い出だ。「きまぐれオレンジ☆ロード」と出逢った場所としても忘れられない書店であることは間違いない。

※Kindle Unlimitedで無料

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※でもやっぱこっちの表紙だな俺のきまぐれオレンジ☆ロードは




ストーリーを簡潔に説明すると、超能力を持つ家系に生まれたこと以外凡庸な主人公が、悪ぶっている以外真逆なタイプの女の子二人に惹かれ、読者を三角関係と云う蟻地獄に引き摺り込み、延々とヤキモキさせ続けると言う極悪な作品である。絶妙な匙加減のお色気も魅力的だったが、陰キャには一生縁がない王道青春ストーリーがたまらなく胸に刺さったものである。アニメ化もなされ、OVAや劇場版と10年近く展開していったため、幅広い層にファンは居たのだろうけれど、今回の訃報で自分より遥かに若い方が反応しているのが印象的だった。

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※一見きまぐれに見えるが、友情にも恋にも誠実でありたい”まどか”さんの気丈さは本当に格好良かった。

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※子供っぽく恭介にアプローチし続ける”ひかる”ちゃん。序盤は作者からも雑な扱いを受けているが、それでも恋を諦めない彼女は尻上がりに魅力的な女性へ変貌していく。





正直言って故人の作品はきまぐれオレンジ☆ロード以外だと短編を少し読んだことがあるだけなのだが、以外が必要ないくらい楽しませてくれた気がしてならない。”まつもと泉”さんご本人が、それに対しどう感じていたのかは分からないが、大事にしたい作品であったことは揺るがないはずだ。


恋に恋せざるえない罪作りな作品を遺して下さって、本当にありがとうございました.....

僕は結局そんな恋には終ぞ縁がありませんでしたが、あなたの素敵な恋の呪縛は、この先も誰かを悩ませることでしょう.....

お疲れ様でした.....








ちなみに、一番好きな女性キャラは恭介の妹であります。

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まなみちゃん大好き.....


posted by lain at 01:13北海道 ☔漫画