2017年02月09日

うつのみこ日誌 拾

いつの間にか、読んでいるこちらまで物語の中の連中と一緒に修行させられていることに気付き、少々鬱陶しいなぁと思うようになってしまった宇宙皇子。しかしあと19冊で本編が終わると思えば、少々の苦痛もなんてことはないのかもしれない。

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今度の舞台は地獄。生前の行いが悪い奴には、死んだあとも罰を与えてやるから覚えておけ!....という脅し文句が犯罪を抑制すると考えた昔の偉い人が作った、ドM狂喜のテーマパークだ。


殺人や無闇な殺生を行なった者達が延々と殺し合いをさせられるアトラクションを楽しんだり、小腹が空いたら仏教の教えを損なう考えを広めた連中の鉄板焼きで舌鼓を打って、ちょっと食べ過ぎたなぁ〜なんていう呑気なあなたには、舌を抜いたり肛門に鉄を流し込むリラクゼーション施設がオススメです!是非とも無限の苦痛をお楽しみ下さい(はぁと)


という場所だそうな。仏教徒じゃないから僕は行けそうにない残念(棒読み)



そんな1巻目は、小角先生にいきなり地獄を巡って来いと言われ、右往左往する皇子達が、まるで天国のような住み心地の場所(地獄なのに)に辿り着き、そこで49日の猶予を与えられて過ごしている亡者供のグータラさに呆れ果て、またもお節介をするという展開だったのですが、この亡者供がどうしても他人に思えず、なんとも言えない気分になりました。

夢も希望も無い、暇潰しだけが人生だと言わんばかりの生活を送っている者としては、どうせ地獄へ落とされるなら、今だけでも怠惰な生活を送りたいという亡者達の気持ちがよく分かる。勿論、だからと言って何一つやらずに生きて行けるものでも無いですし、仕事だってやるからには自分なりの誇りを持ってやってはいますが、「どうせいつの日か死んでしまうのに何の意味があるのか?」という気持ちは拭い去れない自分がいます。


もしも何不自由なく過ごせる環境があったなら、僕も亡者たちと同じように、死ぬまで勤勉たれと教える皇子を拒絶したことでしょう。

良くも悪くもバブル期前後を生き抜いた方の清廉潔白な気合論だなぁと思いました。実際には皇子や各務のような、自らも身体を張って寄り添ってくれるような存在は現実にまずいません。正論だけで生きられるなら苦労はしないのです....

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意外にサービスしてる気がする挿絵達




「地獄」

そこは死んでから逝く場所だと言うけれど、そこそこ長く生きていたら、この世にも地獄と変わらない瞬間がいくらでもあります。なのに死んでまで地獄を堪能しろだなんて、仏教もなかなかに世知辛いものだと思いました









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うつのみこ日誌 九

タグ:藤川桂介
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2017年01月07日

もう"新海誠って誰?"とは言われなくなった。でもその代償は?...「君の名は。」新海誠(著)/角川書店

kindleで小説を読んだのは久方振りだった。やっぱりなんだか味気ない。


漫画の電子版と異なり、小説の電子書籍化はKindle用に書式を整えるため変換されているように思うのだけど、実際紙媒体との違い(字間・行間とかフォントの味わい)はどれくらいの物なのだろう? もしも大差無いであれば、新海誠は小説家としてまだまだなのかもしれない。場面転換の仕方や瀧くんと三葉のモノローグが交互に入るシーンなどの文字表現が、映画を見た後の人ならすんなり理解出来るものの、小説から入った人ならピンと来ないのでは無いかと感じた。劇場で刺さったシーンを思い出し、しんみりしたり笑ったりするには凄く良い本。でも単体の作品としては物足りない。まるで絵の無いフィルムブックみたいな手応えの本だった。


あとやっぱり、二人は最後すれ違いで終わって欲しかった。そうすれば僕は映画館で号泣していたと思う。叶う想いより叶わない想いの方が重く感じるのだ。あの最後の盛り上げどころが大いなる蛇足に感じた人も少なからず居るのでは無いかと思う。未だにナウシカを生き返らせたラストシーンが正解だったのかどうか脳裏をよぎることがある宮崎駿のように、新海誠もここで終わらせておけば良かったかな?と思う日が来るのだろうか?





ユーリ!!! on ICEの仕上がりについ注文を付けたくなったのと同じで、良い作品だからこそ些細な点が心に引っかかってしまうのは僕の悪い癖だ。君の名はの制作において、沢山の出逢いを果たし変わってしまった新海誠。これからも面白い映画は撮るのは間違いないが、もうあの頃の掛け替えのない手触りは彼から産まれないんだろうな、と思うとどうしても小言が溢れてしまう。ここまで世間一般に受けた1番の理由は川村元気さんなんでしょう。同時に新海を普通の監督にしてしまったのも川村元気さんだ。


無論これは良い悪いの話では無い。どんな作り手も同じ物を同じように作るなんて楽しいわけもなく、変わろう、変わりたい、認められたい、認めさせたい、もっと上手くなりたい、もっともっと上手くなりたい、そう考えるうちに作る物の姿も変化するのが普通なのだ。ただ昔の彼を好きだった人はそりゃ寂しい気持ちが芽生える。それも避けられない話。自分の感情さえままならないのが人間なのだから、人様の感情に口を出しするなんて愚の骨頂でしか無いのに、それでも恨み言を言いたくなる自分の狭量な心にも寂しさを覚える。



 しっかり名前を覚えて貰った今こそ、もっと個人的な味わいを出した作品で勝負しても大丈夫な気がするが、もう周囲がそれを許さないでしょうね.....変なプレッシャーの前に壊れて欲しく無い男です新海誠。










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タグ:新海誠
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posted by lain at 07:34 | 北海道 ☔ | 小説 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年12月05日

永遠は眩しい太陽、では無いと思う歳になった....「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」重松清(著)/感想

 今では当たり前のように消費・歪曲されている異世界ファンタジーを、初めて”それと”意識したアニメは「ロードス島戦記」だった。剣と魔法を以って多種族が絡み合う世界観が実に重厚で、VHSのテープが擦り切れそうなくらい何度も観た。世界観構築に「指輪物語」を参考にしただけのことはある。


 そのロードス島戦記には麗しいハイエルフが登場する。永遠に近しい寿命を持つらしい彼女だが種族の中では年少で、見た目も17〜19歳。僕はそんな何から何まで持ち合わせている彼女が羨ましかった。そんなに長生き出来るのならば、せかせか生きる必要もなく、ゲームや漫画を楽しみ放題だと思ったのだ。



 しかしそれから20年以上が経って実感するのは、人生は短いようで結構長くて疲れるということ。そして終わる恐怖より終わらない恐怖の方が重そうだということだった。たかが40年にも満たない人生を過ごしただけで、こんなに世の中や自分にがっかりしてしまうのだから、何百年も生きていたら死より恐ろしい体験が待っていそうである...





 ”永遠を旅する者”


 「ロストオデッセイ」は、そんな異名が相応しい不老不死の男が主役のRPGで、FFの生みの親”坂口 博信”さん製作総指揮のもと、キャラデザに”井上雄彦”、音楽はFFに引き続き”植松伸夫”さん、そして死ねない男の過去を紐解くサイドエピソードを”重松清”さんが担当。重松さんの綴るそれらの短いエピソードを一冊にまとめた物が「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」だった。


 ロストオデッセイ自体はまともにクリアしていないため、何故彼が死なない、老けないのか理由は知らないものの、重松清さんの書く千年の夢を読んだことによって、生き長らえることの辛さ、苦さは存分に味わえた。素朴な町の素朴な住民の悩みから、治る見込みの無い病に侵された少女や、将軍に祭り上げられた男の苦しみまで、長いスパンで人や町を観測し続けることが出来るカイムならではのベタなストーリーの数々に何度もジーンと目頭に来た。


フィールドを歩き回っていると、ふとカイムの古い記憶が蘇る瞬間があり、それを千年の夢と称して楽しんで下さいという趣旨だったわけだが、そこだけ容量不足だったのかムービーではなくテキストだけ(文字が軽くアニメーションする)になるため、ゲーム本編とは直接的な繋がりも無いから飛ばしてしまうプレイヤーも多かったのではなかろうか?僕は正直こちらの方がゲーム本編より面白いと思った。壮大な展開より、ありふれた出会いと別れが長い年月をかけ熟成された想いへと成長して行く千年の夢の方が、永遠の命を持つ者の物語に相応しいと思うのだ。


時代も場所も違うのに何もかも変わらない、変われない男を軸に、一つ一つは関連性が無さそうでありながら、いつの間にか大きな意味を成している。そんなストーリーを味わいたかった。戦いだけがRPGの醍醐味では無いのだから。







これが初めて読む重松清作品で良かったかどうかはわからないが、この本を読んで本当に良かった。おそらくロストオデッセイはクリアせずに終わるだろうから。


派手なOPからシームレスに最初の戦闘が始まる冒頭は本当に素晴らしいと感じたし、Xbox Oneの後方互換のおかげでネックだったロード時間も解消されヤル気さえあればサクッとクリア出来そうではあるものの、遺憾せんエルフじゃない僕には時間も体力も足りない。




やっぱり辛くてもカイムのように永遠の命があった方が良かったかな?

タグ:重松清
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posted by lain at 06:56 | 北海道 ☔ | 小説 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする