2017年11月14日

この作品から救われて今ホっとしている...「ホサナ」町田康(著)/講談社/感想

読み終わって真っ先に思ったのは

「俺は一体何を読んだのだろう?」

だった....






とある女性に誘われ、主人公は犬好きと、その愛犬が集まるバーベキューに参加するのだが、それが運の尽きだったのか数奇な出来事に巻き込まれていく......という話。公園デビューしたばかりのお母さん的な立ち位置の主人公が、クセのある愛犬家集団に辟易しているだけかと思いきや、突如状況の掴めない事態に陥り、主人公が狂っているのか世界が狂っているのか分からなくてなっていくのが特徴的だった。

これまで読んだ「告白」「ギケイキ」もそうだったが、今回は一際おかしな文字の使い方や文法で読み難かったし、夢の内容を垂れ流したかのような自己完結展開だから、まとまりのあるストーリー性を期待すると肩透かしを食らう。

結局、自意識過剰な主人公が、周囲のエゴと自分のエゴを突き合わせて自滅していく町田康作品お馴染みの風景に落ち着くわけだが、どうも主人公が好きになれないし、無駄に思えるディティールや煙に巻こうとする言葉遊びも鼻についた。この人は「ギケイキ」くらいのボリュームでサクッと書いた方が後味が良いなと思った。





きっと、書こうと思えば「告白」のように書けたに違いない。でもあえてそれをやらなかったように感じる文字遊びだった。やはり同じような文章を書き続けるのは面白く無いのだろう。

中盤を超えてからが特に辛かった。暗喩的表現ばかりだし、ストーリーに関係ない予備知識やら、あまり使われない漢字を当ててくるからサクサク読めず、イマイチ山場も無いから先を読みたい気分になれなかった。なのに良くぞ最後まで読んだものだと我ながら思う。なんだかんだ言っても、自分の悪い面を映したような主人公ではあるし、このまま忘れてしまうのも忍びなかったのだろうか?.......


とりあえず、この先の作品に繋がる実験に付き合ったのだと考えることにした。自分好みの作品を求めるのも良いが、そのためには作者のモチベーションが肝心だ。書かぬ者は“座して待つ”これしか無いのである。




好きになった方が負けという真理だけは揺るぎそうに無い一冊だ。









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2017年09月02日

消せない消えない消したくない「野火」大岡昇平/感想

農業が盛んな地域に住んでいれば、普通に見かける野火。畑や田んぼの周囲の草刈り後にそれを焼く行為なのだけど、本作の主人公である田村には、それが何かの象徴であるとか、自分の気持ちの表れに思えてならないようだった。




大平洋戦争末期のレイテ島にて、まともな補給も指示もなく瓦解していく日本軍の1人である田村が、戦地で肺を患いあちこちたらい回しにされた挙句、島を放浪し様々な出来事に見舞われて、言葉にするのも躊躇われる経験を経て心に深い傷を負うことになる物語なのだけど、何処をどう読んでも実体験にしか思えないようなリアリティを大岡さんの文章から感じ密度の濃いため息ばかり出てしまった。

”市川崑”監督や”塚本晋也”監督の映画版を観た後での原作だから、どう感じるか少々不安だったものの、両映画とも違う風景が原作にはあるような気がして、読んで良かったなと思った。あと、塚本晋也版が意外に原作をちゃんと踏襲していたことが分かったのも驚きだった。映画版の意味深な田村の行動の理由にも凄く合点がいった。映画を見たあとに原作を読んで、映画で描けなかったことをチェックするような経験は何度もあったけれど、それとは少し違う関係性が塚本版と原作の間にはあったのかもしれない。改めて良い映画化だったのだなと思った。



人は何故”野”を焼くのか?

ここに己が居ると証明したいのか?

時代錯誤とも思えるような、ミサイルによる力の誇示を行う北朝鮮も、いずれその無駄にでかい鉄の塊で他国の土地を焼くのだろうか?



日本と日本に戦争という二文字で関わらざるえなかった国々にとって、大きな意味合いを持つ8月は終わったが、今もなお戦争の只中にある国は沢山ある。

世界中が...とは口が裂けても言わない。せめて日本だけでも野に立ち昇る煙が、平穏を告げる狼煙であり続けたいものだ。









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2017年02月09日

うつのみこ日誌 拾

いつの間にか、読んでいるこちらまで物語の中の連中と一緒に修行させられていることに気付き、少々鬱陶しいなぁと思うようになってしまった宇宙皇子。しかしあと19冊で本編が終わると思えば、少々の苦痛もなんてことはないのかもしれない。

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今度の舞台は地獄。生前の行いが悪い奴には、死んだあとも罰を与えてやるから覚えておけ!....という脅し文句が犯罪を抑制すると考えた昔の偉い人が作った、ドM狂喜のテーマパークだ。


殺人や無闇な殺生を行なった者達が延々と殺し合いをさせられるアトラクションを楽しんだり、小腹が空いたら仏教の教えを損なう考えを広めた連中の鉄板焼きで舌鼓を打って、ちょっと食べ過ぎたなぁ〜なんていう呑気なあなたには、舌を抜いたり肛門に鉄を流し込むリラクゼーション施設がオススメです!是非とも無限の苦痛をお楽しみ下さい(はぁと)


という場所だそうな。仏教徒じゃないから僕は行けそうにない残念(棒読み)



そんな1巻目は、小角先生にいきなり地獄を巡って来いと言われ、右往左往する皇子達が、まるで天国のような住み心地の場所(地獄なのに)に辿り着き、そこで49日の猶予を与えられて過ごしている亡者供のグータラさに呆れ果て、またもお節介をするという展開だったのですが、この亡者供がどうしても他人に思えず、なんとも言えない気分になりました。

夢も希望も無い、暇潰しだけが人生だと言わんばかりの生活を送っている者としては、どうせ地獄へ落とされるなら、今だけでも怠惰な生活を送りたいという亡者達の気持ちがよく分かる。勿論、だからと言って何一つやらずに生きて行けるものでも無いですし、仕事だってやるからには自分なりの誇りを持ってやってはいますが、「どうせいつの日か死んでしまうのに何の意味があるのか?」という気持ちは拭い去れない自分がいます。


もしも何不自由なく過ごせる環境があったなら、僕も亡者たちと同じように、死ぬまで勤勉たれと教える皇子を拒絶したことでしょう。

良くも悪くもバブル期前後を生き抜いた方の清廉潔白な気合論だなぁと思いました。実際には皇子や各務のような、自らも身体を張って寄り添ってくれるような存在は現実にまずいません。正論だけで生きられるなら苦労はしないのです....

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意外にサービスしてる気がする挿絵達




「地獄」

そこは死んでから逝く場所だと言うけれど、そこそこ長く生きていたら、この世にも地獄と変わらない瞬間がいくらでもあります。なのに死んでまで地獄を堪能しろだなんて、仏教もなかなかに世知辛いものだと思いました









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うつのみこ日誌 九

タグ:藤川桂介
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