感想でもない感想ですまん「それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One Brain?」 森博嗣(著)/感想

ほんの数年前までは、昼休みオンリーの読書とはいえ2週間に一冊ペースで小説を読んでいたというのに、すっかりひと月に一冊ほどになってしまったこと、そして18年ぶりの新刊が出た十二国記を優先したことにより、大好きな森博嗣さんのWWシリーズを今更1冊読み終えた。




人と人そっくりの人でない者と、人以上にこの世界のことを考えている存在とが絡み合う未来のお話であるWシリーズ。ファンならば誰もが通る百年シリーズとも地続きだからと云うだけでなく、独立したSF作品として普通に興味深く、その続きがWWシリーズとして読めることが本当に喜ばしい。高度に成長した科学技術と医術により滅多なことでは人が死ななくなり、出生率も閑古鳥、人類の時代は終わり新たな存在がそれに代わって行くのが自然なのではないか?という一貫したテーマに触れていると、地球に蔓延る癌細胞同然の人類の先にあるのが絶滅でもまるで不思議ではないなと感じてしまう。

とかなんとか書いていると、ハードSFみたいであるが、実際には緩やかに死を待つ世界的な雰囲気と、厄介ごとに巻き込まれる主人公達のほんわかするやり取りがなんとも言えない柔らかさを醸し出していて、どんなトラブルが発生しても決して深刻過ぎるものにならない。タイトルにもあるデミアンという存在が巻き起こす今回の騒動も、悪い者が無意味に残虐な罪を犯す物とはまるで違う。この辺りの調整の巧さが森博嗣さんの凄さだろう。ついでに云えば新生活に合わせ名前を変えた例の2人の掛け合いも夫婦の域に達していて幸せな気分になった。妬ましいだけが幸福ではないぞと殴られたみたいだった。



良い気分のまま続きを読みたいけれど、今年こそは終わらせたい「宇宙皇子」をあえて挟むことにした。森博嗣さんの無駄無く効果的な文章の後に藤川桂介さんの本を読むと無駄だらけに感じて苦行と化している。だがこれはもう意地だ。此処まで(正伝だけで全48巻。現在40巻目....)読んでおいて最後を知らないだなんてのは嫌だ。

今年と云えばついでにもう少し読書量を増やしたい。同じゲームや課金ゲームばかりしていては心だけでなく財布が死んでしまう。もっとマトモな人間になりたい。



マトモの定義はそれぞれだが、自分にとってのマトモを目指す事は、きっとマトモなはずだから......
posted by lain at 19:47北海道 ☔小説

年の瀬に思い耽るは未熟ゆえに出逢った「フォーチュン・クエスト」の日々

その昔僕は、文字ばかりの本が好きでは無かった。堅苦しく並ぶ文字を眺めていると窮屈で、しかも漢字が不得意だったから(今も書くのは苦手)物語に没入出来ず、スタートラインにも立っていない状況だった。

それが変わって来たのは小学校も高学年になってからだろうか?ありがちに挿絵が多めの伝記物を好きになり、学園探偵物のような定番にも手を出して徐々に活字への苦手なイメージは和らいでいった。そして図書室で借りるような本ではなく、初めて自分で買った小説が「フォーチュン・クエスト」だった。

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まだラノベという呼び方が世の中に定着していなかった時代、僕にとってのラノベとはスニーカー文庫と富士見ファンタジア文庫のことで、ロードス島戦記、風の大陸、無責任艦長タイラー、スレイヤーズ、そのどれもが”あの時代”を生きた者が素通り出来ない作品だった。同様にフォーチュン・クエストも然りである。確かな血筋を持つわけでもなく、魔王を討伐するような目標があるわけでもない、普通より少し頼りない連中が些細な冒険の日々を自分たちなりに精一杯やっていく姿に癒され励まされ、自分も一緒になって冒険しているような気分になれる良い作品だったのだ。当時何が面白いと感じたかと言えば、兎に角冒頭の人物紹介から面白かった。主役である詩人兼マッパーのパステルの語り口調で全編書かれているのだが、紹介文でも『私の素敵な仲間達を見て!』と言わんばかりの書き込みで既に笑えてくる。これを考えていた時の深沢美潮さんの楽しそうな顔が浮かぶというものだ。イラストを担当する迎夏生さんのコミカルで優しい色使いも相まって世界観もイメージし易くファンタジー入門としても相応しかったと思われる。世界観の話で云うと、レベルが上がり難い設定なのも新鮮だった。ファミコンのドラクエであれば、あっという間に達するレベル5すら、フォーチュン・クエストの世界ではパーティー総出でお祝いするほどの出来事なのである。一つ一つ、地道に積み重ねて行く感じが、更に親近感へと結びついていたのだ(TRPGに馴染みのある人ならば、それくらい当たり前の感覚なのかもしれないけれど)

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竹アーマーの作り方から
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細かなステータスまで。ルーミィは本当に可愛いw 




そんなフォーチュン・クエストが本当の本当に完結するらしいと聞いた。”新”が付くようになってから読んでいない身としては、ようやくなのだなと思った。丸々30年を超えるシリーズ展開である。ラノベもとうとうここまで続く時代になったのだ。番外編を除き、発売予定の最終巻で39冊。これは名だたる作品に並ぶ巻数になる。書きたいだけで続けられるレベルではない。作者の労苦は言わずもがなだが、これまでずっと読み続けて来た読者達の熱意に対しても尊敬の念を禁じ得ない。いずれしっかりと腰を据えて1巻から読み直したいものである。






何処に行くにも持ち歩いていたフォーチュン・クエスト。病気がちだった小学生の僕は、一人で病院へ行き待合席で必ず読んでいた。一度目の前に座った女の子が同じようにフォーチュン・クエストを読んでいるのを見かけた時は、嬉しいやら恥ずかしいやらで、なんとも言えない気分になった。あの頃漫画でも小説でも表紙を外して読む癖があったため、相手には気づかれなかったものの、誰かとパステル達の冒険について語り合えていあたなら、もっと違う読書体験になっていたかもしれない。

自分が好きだからこれ以上の物は無いだなんて云うつもりは毛頭ない。ただ、皆にとってのフォーチュン・クエストが存在したら良いなとは思う。活字は怖く無い。しんどいものばかりではない。読めば読むほど読みたくなる友達なのだ。付き合い方一つで必ず自分の為になることだろう。まるで読めなかった人間が言うのだから間違いない。




深沢美潮先生、30年もの間、本当にお疲れ様でした。楽しいばかりで終われないこともあったでしょう。

貴女のお陰で本を人並みに読める人間になれました。本当にありがとうございます

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posted by lain at 15:48北海道 ☔小説

これは紛れもなく十二国記だった「十二国記 白銀の墟 玄の月」小野不由美(著)/新潮社/感想

私が十二国記に出会ったのは高校生の頃。所謂学校でやらされる”勉強”がまるで好きでは無かった私は、当然高校も都合の良いところは選べず、バスと汽車を乗り継いで遠くの学校へ通う羽目になったが、そのお陰で街中に出来たばかりの大型書店に寄り道し放題であった。あの時代は一般向けの電子書籍など皆無であったし、本当に多くの人達が書店に群がっていたものである。

腐れ脳が順調に育ち始めていた当時、ハマっていたのは江ノ本瞳さんの「三色董的少年達(シシー・ボーイズ)」と、分厚い愛蔵版が出たばかりだった那州雪絵さんの「ここはグリーン・ウッド」。自分で言うのもあれだが、20年以上前の日本では希少価値の男子高校生であったのは間違いない。ぶっちゃけ自分がこんなで無かったら、講談社のX文庫ホワイトハートに手を出すことは無かったと思われる。

だいぶ記憶が曖昧なため、山田章博さんを先に好きになって気になり十二国記に手を出したのか、十二国記を先に気に入り山田章博さんを好きになったのか思い出せないものの、男でありながらホワイトハートを手に取りレジへ持ち込む気分は、エロ本を買う以上にドキドキした記憶だけは確かだ。試しに月の影影の海の上下巻を買い半信半疑で読み出したら、まるでホワイトハート作品とは思えない世界観の重厚さと心理描写にハマり、小遣いを貰うたび続きをレジへ持ち込んだものだった。



あれから25年近く経つ。本を読むペースも落ち、漫画ですら手に取らなくなってきた。映画館に行ったのはいつのことだったか?そんなふうに創作物を咀嚼する力が落ちているのを体感してばかりだった所に投下された十二国記の新刊。しかも救われそうでなかなか救われない国である”戴”の物語がようやく動き出したのだから本当に嬉しかった。数年前に全て読み直していたにも関わらず、メインのキャラ以外誰が誰やら分からなくなっていたり、少々世界観の説明場面で間延びしていることや、同じ意味合いのセリフを連投するなどしていることが時折気になった以外は夢中で読めた。やっとまとまりかかった国を乱す簒奪者の凶行により王の行方が分からなくなった者達が、国の現状を目の当たりにしつつ各々が自分に出来ることをやり、沢山の希望と絶望を繰り返す様はなんとも言えず、残酷な天(作者)の威光で簒奪者ですら哀れに感じてしまう内容の数々に、これは確かに十二国記だなと感じられた。

もしもこれで十二国記が完結と言われても、個人的には受け入れてしまうかもしれない。それくらいの幕引きだった。大勢が決した後に興味がある人達は駆け足で端折られたと感じていたりもするようだが、最後に普通の人達の姿で締めるのは美しかったと思う。李斎達の物語は幡が集うシーンが最高潮だったのだから.....





これで終わりになっても、そう書きはしたが、勿論まだまだ十二国記の世界を見たい。まだ一切描かれていない”舜”国だけでもなんとかお願いします。この通りです小野不由美さんo┐ペコリ 

欲を言えば十二国記のアニメをまたやって欲しいのもある。N◯K版でも良いが、新規で山田章博さんの絵そのものでやるようなシリーズを今回の戴の物語までやってくれたなら、もう人生に悔いはないくらいの喜びでもって迎え入れたい。





にしても、4冊ほぼ同時刊行などされたら、次はいつになるのか怖くて仕方ないなぁ........







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posted by lain at 17:11北海道 ☔小説