人類が宇宙進出を目指し始めて100年余りが経った。だが、未だ宇宙に安住の地は無い「マーズ 火星移住計画」ナショナルジオグラフィック/感想

幼い頃に読んだ本では、スペースシャトルこそロケットの進化系で人類を宇宙へと楽に運ぶ存在になる、みたいなことが書かれていたが、実際にはロケットよりコストが高いうえ、安全性もそれほど向上せず、2011年にお役御免となってしまった。

それから宇宙開発はどうなったのか?結局昔ながらのロケットに逆戻りである。しかし、作り込まれた技術であるがゆえに、事故が非常に少なく低コストだから、ある意味宇宙産業のためには良かったのかもしれない。そもそもフォン・ブラウンが理想とした火星を視野に入れた大型ロケットの案を当時のアメリカ大統領が却下したのは、大望よりも目先の開発にしか目鼻が効かなかったからのようだし、王道に戻ったという考えも出来るだろう。




僕は宇宙が舞台のSF小説が好きだ。とくに夢のある未来と、それが脆くも崩れ去るまでをセットでやっている作品が良い。そんな悪趣味な性格をしているから、現在各国で進む火星ミッションも、すんなり行くようでは面白くないと思っているし、実際火星にまで人類が進出する必要などあるのか?と懐疑的である。フィクションとしては良いが、それはあくまでもフィクションだから楽しめるのだと思うのだ。

この「マーズ 火星移住計画」は、そんな”実際”に火星への移住ミッションが行われた場合を想定した近未来ドラマと、ドラマの内容に絡めて現在と過去の宇宙開発の話が入り混じるドキュメンタリードラマで、僕の望み通りトラブル続きでドラマは進むし、宇宙産業の裏話が結構聞けて面白い。半ドキュメンタリー作品というと、ドラマの部分が安く仕上げられていたりするものだが、本作のドラマ部分はすこぶる出来が良く、ドキュメンタリーパートを省いた構成でも十二分に楽しめそうである。


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無重力表現も申し分なかったし、ロケーションと構図が渋い




きっと極限環境における生き死にの表現が好きなんだと思う。苦しみが無いと生きている実感がしない人種らしい。もしも火星への移住計画に参加しなければならなくなったら、相当嫌がるだろうけれど、断りはしないんじゃなかろうか?しくじっても遣り甲斐と生き甲斐で大往生するに違いない。

一度打ち上げたロケットが、逆噴射をしながら垂直に地上へと戻る実験の成功もこの作品には収められている。火星に着陸するためにも必要な技術だそうな。もしかすると僕が死ぬくらいまでには火星へ降り立つ宇宙飛行士の姿がお茶の間に届けられたりするのかもしれない。それが良いことなのかどうかは分からないけれど、何事も試してみなければ分からないのは確かだ。



なんとなく「王立宇宙軍オネアミスの翼」の”シロツグ”のスピーチを思い出す....

「地上を汚し、空を汚し、更に新しい土地を求めて宇宙へ出て行く。人類の領域はどこまで広がる事が許されているのでしょうか。どうか、この放送を聴いている人、お願いです、どのような方法でも構いません、人間がここへ到達した事に感謝の祈りを捧げて下さい」





でもなぁ、やっぱ空気の無い場所には、なるべく行きたくないなぁ......

何かとうんざりするけど、地球がやっぱ一番じゃないかなぁ.......🚀







ナショナル ジオグラフィック  http://natgeotv.jp/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2070

血染めの主婦とドM刑事の共感の果ての果て「The Sinner -記憶を埋める女-」Netflix/海外ドラマ/感想

今週の日曜は、皆シン・ゴジラに夢中だった。あれだけの製作陣とキャストで見どころ満載であれば当然ではあるだろう。

勿論僕も東京の夜を焼き払うゴジラの美しさをツイッターで布教していた。



でも、内心ちょっと、シン・ゴジラ放送直前まで見ていたドラマの続きが気になっていたりもした...







平穏な毎日と引き換えに育児や夫や姑に少々草臥れていても、何処にでも居そうな女性の主人公なのだが、子供を連れ訪れたビーチで初対面のはずの男を滅多刺しにして殺してしまう。家族の平穏をぶち壊し、自分でも説明できない事態を招いてしまったことに苦悩する彼女は、わけもわからないまま殺した事実だけを抱いて刑に服くそうとする。

しかし、1人の刑事がそれに待ったをかける。こんな普通の主婦がわけもなく人を殺すはずがないだろうというのだ。同僚にも呆れられつつも、粘り強く捜査を進めるうちに見えて来たものとは?.......みたいな話で、全体としてはオーソドックスな内容なのだけど、演出面や主人公を取り巻く人物配置が実に上手く、それ以上の何かがこの狂気を生んだのだと感じられる良いドラマだった。

主演女優の記憶を封じ込めてしまうほどのトラウマを抱えた女性の演じ方も素晴らしかったし、彼女を助けようとする刑事が、妻子持ちのくせに実はマゾで、安らぎを女王様に求めている辺りの生々しさも面白かった。それこそ彼が主人公に肩入れする理由が痛いほど伝わってきた。


短いエピソード数で無駄に引き延ばす気がない構成も好印象であったし、事件は解決しても自身の幸福には遠いマゾ刑事を主役にした続編が見たいと思った。



あのままフェードアウトさせるには、あまりに忍びない.........



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ネトフリな私的海外ドラマ事情

短いようで長かった出張がとうとう終わった。やはり我が家というのは良い。

インドアな人間にとって、自宅、それも自室に居られないというのは死活問題なわけで、今日はいつもの日曜日以上にやりたいことが頭の中をグルグル回っている.....


振り返ると出張中、艦これとFGOを片手間にやりつつ、海外ドラマばかり観ていた。こんなにアニメを観ない、据え置き機を触らない1週間は久しぶりだ。馬鹿みたいに執着してきたオーバーウォッチも、数日空いた今なら少しは新鮮に感じるかもしれない。

で、お前はそんなに何を観たんだ?という話に戻ると、相も変わらずNetflixを中心に観ていた。元海兵隊の凄腕スナイパーの男が大統領暗殺の嫌疑をかけられ、大きな陰謀の渦に巻き込まれて行く「ザ・シューター」のシーズン2や、10年以上ぶりにTVへと返り咲いた「スター・トレック:ディスカバリー」、昨夜から配信が開始したデヴィッド・フィンチャーの新作ドラマ「マインドハンター」、そして現代や近未来を本気で風刺した1話完結物の「ブラックミラー」までたっぷりと。







ザ・シューターは、シーズン1の途中からダレて来て、今は惰性で観ているようなものだけど、他の三作品はそれぞれ見所があってあっという間に時間が溶けてしまう。スタートレックの新作はバルカンに育てられた人間女性が主役で、副長の彼女が越権行為で罪人に落ちるまでの序章から始まる。見所は彼女がどのようにして復活して行くか?や、人類との戦いを再開したクリンゴンの権力争いの行方で、特に艦隊へと復帰してからの彼女を取り巻く環境が実に面白い。長いこと待たされた甲斐があったというものだ。

マインドハンターは、まだプロファイリングが事件捜査の前線で信頼されていなかった時代に、その必要性を全米の現場の警官に説いて回って、来る日も来る日も犯罪者達と面会し続け、彼らを知ることで事件解決の糸口を見つけようとしている2人のFBIの男の物語で、激しい山場など冒頭以外無いまま淡々と粛々と進んでゆくのだけど、主人公たちの日常や犯罪者とのやり取りを見ているうちに、FBIである彼らや、自分の中にも彼ら(犯罪者)と共通する点を見つけてしまい、合わせ鏡を見るような感覚で目が離せなくなっていた。『深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている』とはよく言ったものである...





最後に、Twitterのフォロワーにオススメされて見ただけの作品だったブラックミラーだが、これが1話目から強烈で出張の夜を〆るに相応しい作品だった。欧州のどこかの首相らしい男が、ワイフと寝ているところを急遽起こされ、スザンナ妃という止ん事無き女性が誘拐され、無事に返して欲しくばTVカメラの前で豚とセックスしろと首相は要求される。金でもなく、思想でもなく、豚との性交渉を政府の、しかもトップに要求する展開に、思わず笑わずに居られないのだけど、あまりにも真に迫る首相やTVの前の視聴者の表情に、終盤は虚しさと憐れみばかり残っていった。

この匙加減は実に良い。ふざけてるのか?と言いたくなるような首相周辺の連中の真顔が最高に笑える序盤と、その後の見るも無残な首相の姿とのバランスたるや絶妙としか言いようがない。この先も現代社会や近未来を皮肉った内容(犯人の要求が動画共有サイトで拡散し、自分に不利な情報が鼠算の要領で増え続け、人の口に蓋が出来ないどころの話ではないところなど)が1話完結スタイルで続くらしく先が楽しみになった。






日本でも毎週キャストもお話も違う1話完結スタイルのドラマとかどうだろう?風刺というのはいつの時代も庶民の良い友人であるし、不平不満で自分を顧みることを忘れがちな今、ブラックミラーのような作品は凄く大切なことを教えてくれそうな気もする。

他省と自省の均衡は大切だなと思った。