金は稼いでも洗っても失っても虚しさが付き纏う「オザークへようこそ シーズン3」Netflix/感想

ウチは今も昔も普通の貧乏一家。末の娘に甘かったと云う爺さん(物心ついた頃には亡くなっていた)のお陰でそこそこの土地にこじんまりとした一軒家で暮らせているが、貯蓄はほぼ皆無で何か大きな買い物をする際はローンに頼るしかない。借金も財産だと口にする人も居るが、そんなものは無いに越したことはない。自分や家族がいつまでも働き続けられることを前提にして思考出来るほどポジティブな人間ではないのだ。

結局のところ喰われる側に居るだけの話だが、それでも金を腐るほど持ち合わせているような人よりはマシだと思っている。株や為替、土地や物を安く買い高く売りつけ金を手にするようなことはとてもじゃないが好きになれないし、他人の金でお気楽に生活するような人間もマトモには思えない。財テクによる利益も努力の結果だと云う人もいるだろうが、金儲けとは必ず誰かのを奪わない限り増えたりしないわけで、誰もが努力すれば報われる類のものでは決してない。しかも金の場合そのマネーゲームに参加した人間以外に影響が出る場合が多いからタチが悪いのだ....



前置きが長くなったが、要するに「オザークへようこそ」もその”タチの悪さ”が半端ではないと云う話。マネーロンダリングを行なっていた男”マーティ”が、嫁とロンダリング仲間のしくじりのお陰で都会に居られなくなり、田舎で命懸けの資金洗浄を余儀なくされるというのが本作の導入だが、金を洗うことから抜け出せないどころか、家族ぐるみでそれをやり始めるというのが実に救いようがない。政府機関による助け舟が出ても、夫婦の意見が一致しなかったり、カルテルや地元の連中に掻き回されてしまうのも遣る瀬無い。

だが、それもこれも、それぞれがそれぞれの利を元に行動し続けた結果でしかなく、彼らが不幸から逃れられないのではなく、彼らこそが周囲を不幸にしながら生き延びる元凶ですらある。全てを受け入れたつもりでも、節目節目で感情を爆発させる彼らの子供達が不憫でならない。先月配信となったシーズン3でも普通じゃないが普通の人代表のようなポジションの嫁弟が子供達の心を解した後、砕く存在となった。彼は病気で精神的に不安定な人間だったが、言っていることは至極当たり前のことばかりで、悪を日常化してしまったマーティ一家と視聴者に現実を叩きつける良い登場人物だったと思う。政府機関とカルテルの板挟みに遭いながら、苦楽を共にした者達との別れを経て、彼らは一体何処に行き着くと云うのか?にしても、他人事だから楽しめてしまうのも、なかなかに罪なことなのだろう......






自業自得

切って捨てるならこの一言で済む話だ。そもそも資金洗浄などやらなければよかったのだから。マーティほどの男であれば、普通にしているだけで裕福な生活が出来たはずである。ドラマなのだから、そんなことを突っ込んでも仕方ないわけだが、実際にこうした生き方をしている人も確実にいるだろうし、そうでなくとも金で遊ぶことに魅了された人は大勢いる。使うこと以上に増やすことに夢中になることの方が厄介なのかもしれない。

麻薬カルテルと関係を持つことなど、まず無いだろうが、金儲けにはトラブルは付き物だ。だからせめて”やったこと”は”やり返される”かもしれないことだけは肝に命じて勤しんで欲しいものである。なるべく僕に関係の無いところで。







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ゴ○ゴも良いけど、ゲラルトはもっと汚れでハードボイルドで良いぞ「ウィッチャー」Netflix/海外ドラマ/感想

年末の仕事、最後の1週間初日、今月の頭に入社していた新人が辞めた。一月保たないスピード退社である。誰かが辞める時というのは、意外と予兆があったりするものだが、あまりにも早過ぎて誰にも予測出来ない結末だった。

流石に電話やメールだけで終わらせる人間では無かったようで、社員が出払っている間に会社で社長と辞める理由等を話していたらしいが、自分は技術的に付いていけないと切り出しつつも、既に次の職場は決まっているという話していたそうで、どうもその職場の受け入れ態勢が整うまでの場繋ぎでウチに入ったというのが実際の所のように感じられた。真意など我々には分からないから憶測でしかないが、様々な物品を彼のために揃え資格取得の準備までしている最中の一報であったし、落胆の2文字以外彼にプレゼント出来る物は無いだろう。メリークリスマス


人の気持ちは分からない。出逢ったばかりの人間だけでなく、親しい相手でさえも真意までは推し量れないものだ。こんな時、ウィッチャーであるゲラルトの冷徹な洞察力があったならと思う。相手の言葉運びや様子から瞬時に真偽を見抜く彼ほど人事担当に相応しい人は居ないはずだ。







スラブ神話を元にした剣と魔法の世界。原作は小説だが、多くの人はゲームでその存在を認知したことだろう。僕もその一人だ。しかも自分は初ウィッチャーが3作目な上、完全に途中で積んでいる始末。この作品のドラマ版について語るだけの知識がそれ程無い状態と言える。しかし、あの世界観とゲラルトの格好の良さをほんの少しでも知っているだけでも、これは普通に面白いと思える作品に仕上がっており、見た目も演技も格好の良い役者が見事な殺陣を披露し、感情は無いと言いつつも自らの選択の重みに苦悩する様は、まさにウィッチャーでしかなかった。

予算の関係上、主要人物以外のキャスティングは怪しいものの、化け物との戦いも及第点であるし、魔法を戦闘で使う時の違和感もほぼ無い。馬のローチにしか心を開かないところや、女子供に弱いところもゲラルトらしくて面白い。それに、やはり外国人設定のキャラを外国人が演じるとより自然に感じられて良い物である。「テルマエ・ロマエ」の阿部寛のような特例もあるが、「進撃の巨人」の実写版のように日本人がぞろぞろ外国人設定のキャラを演じるのは違和感以外の何物でもない。これだけ作り込まれていて文句を言うなど、贅沢にもほどがあることだろう。




これはちょっと、ゲーム版を再開したくなる出来だった。剣と魔法のファンタジーは沢山あるけれど、蔑まれるほどの際どい力の持ち主が善悪の天秤を揺らし戦い続けるお話はなかなか無い。まったくもって選ぶという行為の重みが存分に味わえる良い作品である。

会社を次々と渡り歩くゲームなんかがあっても面白いかもしれない。実務をこなしつつ社の良し悪しを測って引導を渡し、いつどのタイミングで辞めると口にするか、そしてその方法まで選べて評価対象になるとかね。





誰か安月給で外仕事が苦じゃ無い奇特な人入らないかなぁ.......

歓迎会じゃなくなった忘年会なんて俺出たく無いよ.....(。_゜)





”信用“を信用出来ない者達へ「ベター・コール・ソウル S4」AMC/感想

AMC
※ネタバレ感想






この世の中で生きていきうえで、もしかすると一番欠かせないものかもしれないのが『信用』という言葉。

どれだけ他人を疑わずにいられない人でも、ある程度他人を当てにするしかないし、他人に自分のことを当てにして貰えないと円滑に物事が進まない場合が多い。



僕は昔からあまり「信用」されない人間だった。

親になんでも後回しにしてしまうことを責められたり、先に悪口を言ってきた同級生を泣かせ先生に「あなたの方が大きいんだから」と、心の大きさを無視して怒られたりしているうちに、信用しない連中を信用しないという結論に達し、売り言葉に買い言葉状態の悪循環を糧にスクスクと今の自分に育っていった。

高校に入ってからは、だいぶ角が取れて周囲が望む者を装っていたものの、就職して会社や社会構造の無駄に散々付き合わされてからは何度となくブチ切れていた(家族に第二の反抗期が来たと言われるくらい)。こちらがいくら信用したくとも信用出来ない連中へ募る”上辺だけ取り繕っていれば満足なんだろう?”という気持ちが、プロ意識と狡い心を日々揺らし続けた。今も正直揺れ続けている。既に心は麻痺しかけているけれど....



弁護士資格を取り戻したいジミー

グスタボ相手にプロの仕事を見せたいマイク

二つの組織の板挟みにあうナチョ


三者三葉の葛藤が面白い本作だが、今回ほど『信用』という言葉を強く感じたシーズンは無かったような気がした。

張り合いのある兄を失い、自分の嘘に乗せられる連中に嫌気がさし、信用させたい相手を欺くことばかりに執着しだして、大事な女性の信用を失っていくジミーは泥沼過ぎて見てられなかった。

悪友とも言えるマイクとの距離にも切ないものがあったが、やっていることは麻薬業でもマイクの雇い主であるグスタボのきっちりした仕事っぷりと比べたらジミーのやっていることは ショボすぎて、そりゃ仕事を断られるだろうと思った。マイクの信用を裏切ってしまった眼鏡の男が処断されるシーンは暫く忘れられそうにない。


ボスを信用しきれず毒を盛ったナチョ。主要なキャラの中でも1番人情に弱そうな男の出番は終盤減っていったが、毒を盛ったことがバレないよう平静を装う姿には掛ける言葉も失ってしまう。向いてなくてもギャングしか居場所がない可哀想な男だ.....





信用すべき相手を信用しなかった者、いつまでも信用してもらえない者、信用してもらう気がない者、そんな『信用』に振り回される者達を見ていたら、つくづく心から人を信じる、信じさせるのは難しいことだなと思った。

信じて貰う必要などないと言い切れる強さがあれば良いのかもしれないが、それすら諸刃の剣に思えてならない。



次が最後のシーズンになるであろうベター・コール・ソウル。視聴者の期待を裏切るような幕引きはないだろう。

絶対の信用が出来るドラマの一つで間違いない。