2017年01月28日

寒い夜には一皿のスープと猫が居れば大丈夫「ポテト・スープが大好きな猫」テリー・ファリッシュ(作)/バリー・ルート(絵)/村上春樹(訳)/講談社/感想

なんだ今日は朝から湿った雪かぁ....って雨になって来た!

勘弁してよぉ......

と、思いつつ久しぶりに防寒着ではなく雨合羽を装備して昨日は働いていたわけですが、お昼にこの本を読んだら心だけはほんわか暖まった気がしました。

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猫を飼ったことが無いため、”ポテト・スープ”なんて食べるんだ?と思った挙句、ポテトスープと脈略の無いボートの絵が何故表紙なんだ?とまで頭をよぎりましたが、奥さんも子供も居る形跡の無い、長年色んな猫と付き合って来たおじいさんと、ねずみ一匹獲りはしない少々お年を召した雌猫の、熟年夫婦みたいな関係がなんとも言えず良いんです。本当は一緒に居てくれるだけで幸せなのに、普段はそんなそぶりを猫には見せない(十分見せている気はするが、見せていないつもりなのが可愛い)おじいさんが、釣りに行く時いつもは連れて行く猫を家に置き去りにし、一人で釣りを始めた時漂った味気なさや、その後の猫の反応が愛おしくてたまりません。僕も彼女にポテトスープを作ってあげたくなりました。

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下手な婚活番組を作る暇があったら、本作のような切っても切れない腐れ縁の情が優しいドラマでも流した方がよほど効果的でしょうね。まあ、逆に猫さえいれば良いや💕と、なるやもしれませんが........














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タグ:村上春樹
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posted by lain at 07:09 | 北海道 ☔ | 小説 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年01月26日

それでなくとも自由なのに、空まで飛べちゃう贅沢さ。僕も猫になりたい...「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」&「空を駆けるジェーン - 空飛び猫物語」アーシュラ・K・ル=グウィン(著)/講談社/感想

とある筋によると、猫は犬より世界的に人気のペットへとなりつつあるとのことですが、真偽のほど置いておくとして、確かに猫好きが日本でも増えたような気はします。僕の周囲で実際に猫を飼っている人は、犬のそれと比べるとまだ少ないですが。

猫好きが増えた理由を母などに言わせれば「自分勝手な人が増えたから」でばっさり切られてお仕舞いで、流石戌年は猫にライバル意識があるなと思ってしまうわけですが、確かに一理あるような気もしなくもないです。猫同様に個人主義で気に入らない事はしたくない人で今の世は溢れております。アメリカの新しい大統領でさえ利己的で協調性の無い人が選ばれる時代ですしね。僕自身も凄く心当たりが.....



でもまあ、そんな人間様の醜さと引き合いにされては、猫も迷惑でしょうなぁ。猫は猫なりに情を持っているだろうし、自由奔放に見えてちゃんと猫達も気を使っている面もあるのかもしれない。そもそもアレが彼らの標準仕様なのであって、その時々の自分に対する言い訳次第で宗旨替えする我々と同じであるわけがありません。

そもそも何故好きなのか?を解き明かすなんていう野暮は要らないですよね。可愛いと思うから愛でたい。ただそれだけがあれば充分です。つべこべ言う暇があったらル=グウィンさんの空飛び猫シリーズを読め!僕はそう言いたい(やっと本題)




都会の喧騒の片隅で、羽根を持って生まれ出た猫達が親元を離れ、猫であって猫でない自分達の個性と向き合いながら、それでも猫らしく生きて行く本シリーズの今回は3作目と4作目を一気に読んだわけですが、相変わらず村上春樹さんの訳が実に良い。何処がどう村上春樹なのかと言われればなんとも言い難いものの、ル=グウィンさんのティストをしっかり活かした翻訳になっていて、巻末にはどうしてこのような訳し方になったか?のも解説してくださっていますし、村上春樹さんがいかに本作を大事に扱ったかが隅々から伝わって来ます。原作、挿絵、訳者、どれを取っても幸福な作品だなと思わされました。

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羽根を持たない猫も三作目から仲間入り。C30FB3AD-2443-4704-8E87-FA96811D08AC.jpg
羽根の有る無しで優劣を測らない彼等からは、教えられる事ばかりだ。
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四作目の主人公は田舎暮らしに飽きて都会へと戻った1番幼くて1番気が強いジェーン。彼女は清々しいほど強かで羨ましい。どんな受難もなんのそのだ。


こうして村上春樹さんの翻訳に触れていると、村上春樹訳のゲド戦記も読んでみたくなります。岩波書店から出ている清水真砂子さんの翻訳版は間違いなく素晴らしいもので、それに不満があるわけではありませんが、訳者が違うだけでまるで別物になったマーニーの例もあるので、訳者としても定評のある村上春樹さんの解釈で読み解かれるゲド戦記には興味が湧いてしまいます。僕自身が英語に精通していれば、ル=グウィンさんの原文を存分に味わえるのでしょうけど、なかなかそう上手くは行かないものですね.....

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posted by lain at 07:03 | 北海道 ☔ | 小説 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年10月18日

飛べない大人が見上げた空に「空飛び猫」アーシュラ・K・ル=グウィン(著)/村上春樹(訳)/感想

 僕は猫が好きだ。村上春樹も好きだ。アーシュラ・K・ル=グウィンはもっと好きだ。ならこの本は読まずに居られるはずもなかったのです。

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産んだ子猫に何故か羽があって戸惑うジェーンお母さんと子猫たち

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猫というだけで自由な気がするが、羽があれば更に自由なのだろうか?




 とは云うものの、猫を飼ったことは無いし、村上春樹やル=グウィンも古書で少しずつ集めていても、まだその一端に触れたことがあるだけで、大ファンなどと大口を叩けるほどではありません。まあ、だからと言って厚かましくも自分達のことをハルキストなどと自称する熱烈さがあれば良いと云うわけでもないとは思いますが、好きになった作家の作品は読んでおきたいと思うのが本好きの正直な気持ちでして、こうして好きな物が掛け合わさった本を読めたことは素直に嬉しいです。

 本作はシリーズ物で4作品出ており、1冊目の「空飛び猫」では、羽を持って生まれた4匹の猫が親元を離れ、都会の喧騒から田舎の大自然へ(人間ならば田舎から都会という対比も面白い)と足を踏み入れ、自分達の領分を犯す者を良しとしない生き物達に洗礼を受けたり、彼らに優しく接する人間と出会うまでが描かれているのですが、もう兎に角挿絵(J・D・シンドラー)とル=グウィンさんと、それを訳した村上春樹氏のバランスが絶妙過ぎて最初の数ページだけで心をもって行かれました。猫の可愛らしさは翻訳の必要が無いので、やはりル=グウィンさんらしい包容力と厳しさをちゃんと日本語で表現出来る村上春樹氏の非凡さ故の仕上がりなのかもしれません。


 自らは羽を持たないジェーン母さんが、子供達の将来を想い送り出す姿や、出る杭を打とうとする旧態然とした森の住民達の空飛び猫に対する反応、そして、そんな彼らと友達になりたい人間達の様子。読んだままの意味合い以外の何かを何処となく感じさせつつ、胃にもたれない程度にそれを納めている辺り、ゲド戦記とはまた一味違うル=グウィンさんが垣間見えて面白い。せっかくの羽を痛めてしまった空飛び猫の感情の流れや、猫から見た人間達を”手”という単語を用いて表現していたのも、とても印象的でした。

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森を代表するフクロウの機嫌を損ねた空飛び猫危うし...



 飛べる羽があるのなら、その羽を活かして生きてみなさい。そんなメッセージがひしひしと伝わって来る良い本です。子供は勿論のこと、生きる強さを失いそうな大人にこそ読んで貰いたいと思いました。

 おしまい.....
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posted by lain at 07:16 | 北海道 ☔ | 小説 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする