2017年10月11日

我が青春のOVA1987 #11「迷宮物語」りんたろう/川尻善昭/大友克洋/懐アニ

久しぶりの出張で酷い宿を掴まされ、自棄酒を飲みながら(といっても小ちゃいのを一つ)本作を観ていたのだけど、酒で溶けた脳みそでも「凄いなぁ」と思うほど手描きのパワーを存分に思い出させられた。



「迷宮物語」 | バンダイチャンネル





当時の流行だったオムニバスの形式で、少女が猫と共に不気味な場所へとピエロに誘われてゆく冒頭と締めの「ラビリンス*ラビリントス」からして強烈で、人物の手足や背景の歪み、落ち着かない不気味な音、少女やその母親らしき女性の温度を感じない喋り方、どれをとっても感覚を狂わされる。思わずツッコミたくなるような隙すら容易に与えないから、あっさり現実に引き戻されるようなこともほぼない。


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これに挟まれるようにして2作品が鎮座していたわけだが、どちらも負けじとトラウマ物の迫力で、川尻監督の「走る男」は80年代のサイバーパンクを匂わせる潰し合いレースの孤独なチャンプの末路を描き、兎に角尋常じゃ無い勝負への執念、というかもはや怨念のレベルに至ってしまった男の最後をこれでもかと見せつけていた。


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懐かしい感じのコンソールが格好良い

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圧巻の絵力にグーの音も出ない...





大友監督は大友監督で、誰もが羨むようなスタッフ(作画監督”なかむらたかし”、原画”森本晃司”)と共に、どこぞの国ででかい工事を受注していたのが政権交代で中止を余儀なくされたものの、全自動で機械任せにしていた現場が勝手に工事を進めているためサラリーマンである主人公が1人で止めに行くという有りそうで、そんなの無いだろうという、当時高度成長期にあった日本ならではプロットである「工事中止命令」が怖いやら滑稽やらで面白かった。


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鼻息荒く工事を止めに来たものの


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機械がひとつも言うことを聞いてくれなくて疲労感がつもっていき...







今時の作画スタイルに馴染んでしまった若い視聴者が、手描きの荒々しい躍動をどう感じるかは知る由もないが、けして懐古趣味の一言で片付けて良い作品では無いだろう。もしも本作を今の技術を用い、これ以上の仕上がりで僕らに観せることが出来るというなら話は別だが、まず無理だ。そもそも無駄に綺麗な仕上がりになったら、この味わいは損なわれるだろう。


「この時代だから創れた」


今の時代が作っている物も然り、その時時にしか生まれない物があるのだ。古いとか新しいではなく、その時代その時代の良さに気づける自分でありたいものである。








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2017年10月09日

1年限定の復活劇「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 Blu-rayメモリアルボックス」高山文彦(監督)/感想

ガンダム初のOVA、しかも富野由悠季製ではないという点でも初(SDガンダムは除く)だった機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争が、とうとうブルーレイになった。


俺の誕生日に発売とか泣けるわ....



第1巻「戦場までは何マイル?」発売から28年目でのBD化だったわけだけど、何故このタイミングだったのか?いっそ30周年に合わせても良かったような気はする。とはいうものの、やっぱり0080は良い。4Kスキャニングによる元のフィルムの味わいも損なわれておらず、1年戦争の片隅で起きていたであろう人間ドラマとして今観ても泣けた。きっと本作のせいでジオニストとして生きる決心がついたガンダムファンも少なくないだろう。多分。


映像特典の面では微妙だが、今回のBDを買って良かったのは今まであまり触れてこなかった(当時の僕が0080絡みの本を読んでいなかっただけかもしれない)製作の裏話がブックレットで読めたこと。富野監督ではない監督を立ててガンダムを作ったプロデューサーの苦労話(高山文彦監督だけでなく、押井守監督にもガンダムの話を持っていったり、脚本を田中芳樹さんにお願いしてみたりしたそうな)であるとか、オジさんキャラを描くのが苦手だったと吐露するキャラデザの美樹本晴彦氏が語る高山文彦像や、制作進行が見た現場のぴりぴりした感じなどが存分に伝わるインタビュー記事が面白かった。インタビューを受けたどのクリエーターも高山監督から何かしらの影響を受けたと口にしているのが印象的だった。流石”仙人”と呼ばれる伝説の男である。


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業界から離れていると好き勝手に言われるらしいw




0080を境に、ガンダムは数多くの番外編、もしくは新規シリーズが作られることになり、それは未だに継続中だ。しかし、初代から連なる”宇宙世紀”物で無理のない外伝は0080ただ一つだと僕は思う。勿論多少強引でもシチュエーションが楽しい外伝は沢山あるものの、富野由悠季製ではないのに自然と受け入れることが出来るのはこの作品だけだ。今回のBDに付いていたブックレットのインタビューを読んで、その理由がよく分かった。ここまではありえたかもしれないという線引きをしっかりと考え仕事に挑んでいたのが大きかったのだ。特に高山監督がガンダムのファンでもなんでもなく、0080の仕事を引き受けてから客観的にガンダムを鑑賞したのも功を奏したように思う。アニメファンが作るアニメより、実写ファンが作るアニメの方が痺れる絵作りが出来るのと似ている。


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雨に濡れるザクのマニュピレーター。打ち捨てられた感が実に痺れる

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MSの出番は少ないが印象的なカットが多い


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おっさん2人の深刻な横顔が僕のお気に入り


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のちに「M.S.ERA0001~0080―ガンダム戦場写真集」として発売されたほどEDの絵一枚一枚にドラマがあって素晴らしかった




ガンダムがアホみたいに出て来る作品も、それはそれで面白いが、ガンダム=特別という感覚は薄らいで大量生産のお安い商品に見えなくも無い。NT-1アレックスも試作機という扱いで地味な点が良いと思っている。終盤まで見ていると、人間ドラマとしてじわじわ来るものがあった08小隊にしても、量産型のガンダムが大量に登場してゲンナリさせられた。なにせガンダムの量産機といえばジムなのだ。こういう整合性は案外大事だったりする。


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シンプルで雑味のないデザインが良い




とは言っても既に一人歩きしているものを止めることは生みの親にも無理な話だ。初代好きからしたらたまったものではないが、それぞれの世代がそれぞれのガンダムを愛するのを否定するのも何か違う。だから、僕は僕でアル少年の勇気とエゴを、バーニィの優しさと愚かさを、そしてクリスの知らない罪を代わりに胸に刻んで生きて行けば良いのだろう。


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大好きだよバーニィ....アル.....


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サイクロプス隊......





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関連過去記事

戦いの跡には....「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争/高山文彦/サンライズ/1989年/アニメ」


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2017年05月22日

我が青春のOVA1987 #3「妖刀伝」

手描きの時代に無理が来て、今や3DCGを活かそうという動きが収まりそうに無い昨今、手描きならではの味わいが減って行くのは嫌だと言う人でも、一昔前とでは比べ物にならないくらい豊かな表現力を手にした今の3DCGアニメを無視することなどまず出来ないことだろう。僕も類に漏れず、それはそれ、これはこれ、と分けて考えられるほど3DCGに心を許し始めている。


だから30年前の妖刀伝を今観る事に"郷愁"以外の意味などあるのだろうか?と内心思わなくもなかった。思い出補正の残酷さを、ここ10数年の間にほとほと経験して来たこともあって、どんなに当時好きだった物でも素直に振り返ることが出来ない体になってしまったからだ。しかし妖刀伝は観始めると刻の流れも何処へやらで普通に楽しめてしまった。それこそ10年以上ぶりに観たせいもあるのだろう新鮮で仕方なかった。今の自分だからこそというのもあるに違いない。



バンダイチャンネル『劇場版 戦国奇譚妖刀伝』http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=2911

※正規のルートでの動画配信は劇場版のみ




里を滅ぼされた2人の忍が出会い、残されたもう一つの忍の里へ落ち延びるも、織田信長の裏の顔である朧衆の襲撃を受けその村も壊滅。どうやら各村に伝わる刀にとてつもない力があるようだぞというところで第1巻が終わるのだが、まるでお手本のような作りが清々しいほど懐かしくも新しかった。今時「彼奴(きゃつ)」とか「ならぬ!」というセリフが飛び出す作品なんて滅多に無いし、ロリではない美少女や、チャラくない美形を拝める点も新鮮だ。


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女であることを隠しているつもりの綾之介だが....


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こんな美脚が男で通るかw


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今時草を噛んで登場するハンサムはまずいないw


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絵に描いたような悪役ありがとう"○┓ペコリ



同年にダンガイオーの作画監督も務めている大貫健一氏のキャラクターは麗しい人も、そうでない人も、どこか味がある。井上和彦、矢尾一樹、若本規夫、小林清志、etc.....の声がこの絵に乗るのは反則だろう。まだアンパンマンになっていない戸田恵子の声の初々しさもたまらないものがあった。どうして現代は幼く見えるキャラばかりにアニメの世界はなってしまったのだろう?成熟した女性の色香に興味が無いのだろうか?非常に謎である......


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キャラクターが年相応の見た目で描かれる作品は落ち着く





大事な物を失った者達が、強い意思の力で悪を断つ妖刀伝の王道なファンタジー時代劇は、その後の「鎧伝サムライトルーパー」や「THE 八犬伝」のような作品の誕生にも少なからず影響したのでは無いかと思う。今年の頭に放送された「鬼平」も面白かったが、忘れた頃に時代劇は見たくなるものだ。


あまり売上の面で寄与しない中年が言っても栓なきことだが、大人による大人の為のアニメがもっと欲しい。若者向けのアニメを年寄りが一緒になって楽しむのも悪く無いが、心から望んでいる物が、過去にしかないようになってしまうのは実に寂しい。


それが幸か不幸かは別の話ではあるけれど......








関連過去記事

我が青春のOVA1987 #2「笑う標的」高橋留美子(原作)/高橋資祐(監督)/スタジオぴえろ

タグ:大貫健一
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