2015年11月17日

たけのこの里派ですが何か?「猫とアレルギー」きのこ帝国/感想

メジャーデビューアルバム


そう聞いて「まだだったのか」と意外に感じてしまった。

元々インディーズの時点で完成度が高かったし、存在感も素晴らしかったバンドでした。それは今回のアルバムでも変わらない。

でも、永遠に変わらない物など無いし、変わらないだけでは面白くはない。「猫とアレルギー」はそういった側面を大いに体現して見せた作品だったかもしれない。





 きのこ帝国を聴いていると、まるで"森田童子"が歌っていた時代の日本に帰ったかのような錯覚を覚える瞬間がある。陰鬱で虚構に満ちた世界をひたひたと歩く寂しげな歌声に、このまま身を任せたくなるのだ。

ところが今回のアルバムでは、そんな彼女等の世界が氷解し始めているように感じてしまう。「フェイクワールドワンダーランド」で絶妙な均衡具合だった陰と陽が、猫とアレルギーでかなり陽寄りになり、優しく、暖かく、柔らかな歌ばかりなのだ。

 無論歌詞にはまだ愁いが漂っているし、これまでのきのこ帝国を存分に味わえる楽曲も幾つかある。だが”You outside my window”で「阿呆くせえ」と尖っていたきのこ帝国は何処かへ行ってしまったようだ。


 これまでの流れに心底惚れていた人には若干肩透かし。ここから好きになった人にはど真ん中。アーティストにとって良いことなのか、悪いことなのか難しい話ではあるけれど、発展途上だからこその魅力と言うのも確かにあるし、それにCD音源よりライブの方が映える気もするのだ。予定が合わず諦めた対バンツアーでこそ本当の意味での真価が分かるアルバムなのかもしれない。


 




 なんだかんだと言っても、相反する想いが錯綜しているようなタイトルそのままに、諦めと憧れが綯い交ぜになった良いアルバムでした。

メジャーデビューしたからと言って、硬くなったり義務感に囚われず、形は変われど"らしい"楽曲と共に成熟して行って欲しいですね。







 きのこ帝国 OFFICIAL WEBSITE





タグ:きのこ帝国
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2015年08月26日

アーティストは物作り以上に周囲とのズレをどう受け止めるかに悩んでいる「スピードと摩擦」amazarashi

新しいシングルを聴きながら、今までシングルCDを一切出さずに来たamazarashiが「季節は次々死んでいく」でそれを解禁した理由をぼんやり考えていた。




これまでは半年ほどのスパンでミニアルバムやフルアルバムを発表。楽曲の出来や歌詞の密度を考えると、この制作ペースは本当に短い。それに加えてライブも引っ切り無しで行うのだから物凄いハードワークである。

もしかすると、そろそろペースを落ち着けてみようかという話になったのでは無いだろうか?こうしてシングルをこまめに出しておけば活動していることをちゃんとアピール出来るわけだし。芸術家肌な人からしたら、シングルなんて消耗品だから出来れば出したく無いと考えるに違いないが、徐々に固定ファンが増え、彼がどう考えるか以上に周りが放っておかなくなって来たから仕方なく折れた。そういう部分もあったりするのだろうか?カップリング曲や初回盤の特典映像、ジャケットのデザインに至るまで、けしてamazarashiのシングルが消耗品だとは思わないけれど....

これぞamazarashiの自己紹介。この曲を好きになれたら君ももうお友達。



ファンとしてはamazarashiを聴いてもらえる機会が増えるのは本当に嬉しい。無駄に氾濫している芸術作品や無駄にプロモーションに金を使っているゴミ屑が邪魔をして、良い物が知って貰えないというのは残念なことですから。

でも、こうしてシングルが増えてゆくと、アルバムが段々シングルベスト的な様相を呈して、まとまりの悪い物になってしまいそうなのは気掛かり。

残酷で儚い美しい世界のためになら自分をいくらでも犠牲に出来てしまう"秋田ひろむ"の美学が、商業主義の波に本当の意味での死を与えられてしまわないように今は祈るばかりです。

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スピードと摩擦 初回生産版特典LIVE@nikoniko 2015.05.12より
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2015年05月16日

ボクヲ アナタヲ テラシダス「あまざらし 千分の一夜物語 スターライト」amazarashi

矛盾だらけの世界に掛けられた魔法で、もがき苦しむ人々の陰鬱な想いと、その苦しみの中でも僅かに差し込んで来る希望の暖かさを代弁しているかのような男”秋田ひろむ”は、今を生きる多くの人の拠り所になっている。

美しい日本語の情緒を随所に感じる歌詞と、時に激しく時にしっとりと聴かせる緩急の付いた作曲とのバランスが絶妙であること、そして一番大きいのは秋田ひろむの楽曲に対する姿勢だと思う。仕方なく誰かにやらされているわけでもなく、作り上げた曲と真剣に向かい合い、自分の存在を殺してでも作品世界のイメージを届けようとする彼の姿はすこぶるプロフェッショナルだ。

つい先日出たばかりの、去年行われた「千分の一夜物語 スターライト」の模様を収録したDVD(アンプラグドアレンジ盤の初回限定に付属された特典)を観ていてつくづくそう思った。



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絵になる朗読姿
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ストリングスの演奏をオーバーラップさせる編集がじわじわ来る68D54453-94CF-48B7-9A60-16B7FAD3FEF9.jpg16EBA111-6760-46E5-A33D-66077284D6A4.jpgCAFB3CF2-E040-4D96-A02B-D34B75B2537C.jpg
いつもの映像や、詩の朗読中に大量のメトロノームを鳴らすなど、演出面が更に成熟して来た





 ストリングス中心のバンド編成でamazarashiを代表する楽曲の数々と共に、秋田ひろむによる詩の朗読が行われたこのライブでは、いつもの曲達が一味違う洗練された厚みの曲に生まれ変わっていて、原曲が刺々しいものまで”まろやか”で上品な味わいになっているものだから、散々聴き込んだはずの楽曲達に違う一面があることに気づいて新鮮。

 アコースティックな旋律に自分の声を乗せるのは誤魔化しが効かないので、アーティストの自力が良く分かるものですが、バックの表現力に負けずじっくり歌い上げる秋田ひろむは流石でした。

 いつ暴発するか分からないような切実さに面食らって、amazarashiの楽曲と距離を置いているような音楽好きさんなどは、今回の『あまざらし 千分の一夜物語 スターライト』でもう一度触れて見ると良さを発見出来たりするかもしれない。

それにしても、メインのアンプラグド音源CDより、特典DVDがやばい逸品でした。


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DVDの他に、360°見回せるパノラマ映像を楽しめる眼鏡とコンテンツ解放キーが入っていました。374C135C-018F-4648-BE61-2AE49FF6E88F.png00195434-7CEC-4B30-9A0A-ED31D278FEA6.png85FFD67D-A43C-4F94-B6E7-E44053EC874D.png
空から地上まで見渡せるイラスト&朗読であったり、スモークの動きやお客様まで見ることが出来る映像もあって面白い





 何をもって”大人”の定義とするかは難しいけれど、また少し秋田ひろむは大人になったと僕は思う。良くも悪くも自分と世界を許せるようになって来たような気がするから。

 次は3D映像を使ったライブを行うとも聞くし、これからも表現者として、そして人としてのステップを秋田ひろむとamazarashiは駆け上がってゆくに違いない。

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