2017年09月17日

永遠の命題に挑む生命達「エイリアン: コヴェナント」リドリー・スコット(監督)/マイケル・ファスベンダー(主演)/感想

一体いつからそうなのか分からないけれど、共通の敵(侵略者)に対する団結を描く、もしくは扇動する作品が世界中至る場所で作られている。身近な人間とのいがみ合いを何百、何千何万と年月が過ぎ去ろうとやめられない我々には、どうしても隣人ではない第三勢力の脅威とやらが必要らしい。しかし、結局その第三者と戦わなければならないなら、平和な生き方には程遠いのではなかろうか?ISだの北朝鮮だのが暴走している今の時代、頓にそう考えずにいられない。




映画エイリアンシリーズが、同じように共通の敵であるエイリアンに対し人類が団結していく物語かと言えばそうではない(むしろ逆)し、エイリアンの強さそのものには物語の本質はない。生への絶望と渇望の揺れ動きにこそ本シリーズの真髄はあるように思う。自分で言っててよく分からなくなって来たが、要するに「いつか死ぬにしてもこんな死に方は嫌だ!」というメッセージが込められているのではないか?という話。女性主人公がなけなしの勇気をフル動員して勇ましく戦うのもそうだし、毎度登場するアンドロイドには"生きるとは?"という葛藤がある。今回はひときわアンドロイドの主人公感が強い、いや、間違いなくアンドロイドが主役だった。セックス依存症の男の哀れな姿を描いた「シェイム」で凄まじい演技を見せたマイケル・ファスベンダーが、またもガツンとやらかしている。




逆に、作品全体としてやっていることには何も驚きはない。プロットから撮影手法まで完全に使い古されたものだ。ところが、先が読めていても震撼せずにいられない闇がマイケルを中心に充満していたから最後まで緊張感を保って鑑賞することが出来た。かなり悪趣味ではあるけれど、エイリアンにはアンドロイドが居ないとねと、少しでも思う方には必見の価値があるだろう。




造られた者が、創ろうとする恐ろしくも哀しい物語として…







関連過去記事


『リドリーのこれが観たかった♪『プロメテウス』/リドリー・スコット/2012年/米国/映画』


喰う・寝る・セックス...『SHAME』/マイケル・ファスベンダー(主演)/スティーヴ・マックイーン(監督)/2011年/イギリス/映画/感想


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2017年05月19日

自分に自信がある人ほど"彼女"に打ち砕かれる物の大きさも一入だろう.....「エクス・マキナ」アレックス・ガーランド(監督)/感想

一昔前ならいつか達成されるであろう”夢”の一つでしかなかったAI技術。

でも今では、ふと手を止めて周囲を見回すと、既に自分はAIに取り囲まれ徹底的に情報収集されていることが分かって来る。生活家電、ゲーム、グーグル、etc.....機能はまだ限定的ではあるものの、痒い所に手が届く便利な物に今やAIは欠かせないパーツになっており最早AIは夢でもなんでも無い。

何万年経とうと未成熟な生き物である僕ら人間が、AIとどう向き合って行けば良いのか真剣に向き合う時代が目の前までやって来ているのかもしれない。




◯oogleのような大手検索エンジンを運営している会社で働く優秀なプログラマーが、社内の抽選で社長の別荘に招待されることとなり、スマホの電波も入らずヘリで訪れるしかないような山岳地帯までやって来るのだけど、単純に社長の豪邸を堪能出来るわけではなく、他言無用なAI開発の最終的な試験の手伝いをさせられることになるのが.....という話なのだけど、そりゃ〜ただで転ぶはずが無い。

AIとの会話を通じ知性の有無を判断するチューリング・テストをすることになった主人公は、あまりに人間的な彼女<AI>にどんどん惹かれてゆき、彼女の生みの親である社長への不信感も相俟って、とんでもない事をしでかそうとするも、実はそれすらこういうことだったのだと収束して行くのがなんとも言えず、穿った見方をすれば古き時代の考え方である男尊女卑に縛られていた女性の再出発話にも見えなくもないため、男としては弱い所をグサリとやられた気分になった....


そんな軟弱なプライドは置いておくとして、見た目でそれと分かるAIエヴァのデザインが上手い(エヴァ役の”アリシア・ヴィキャンデル”の仕草や表情も込みで素晴らしい)と感じたし、男2人のAI論も普通に面白いと思わされた。次のモデルが出来れば今の記憶が無くなってしまうエヴァに同情する主人公へ、いつかAIは人間を原始人扱いするだろうから彼女を憐れむ自分を憐れめと苦言を呈す社長という対比が後々非常に糸を引く。

ちょっとしたサスペンス物を見ていたつもりが、全てが終わった頃には、まるで神話の誕生に立ち会っていたかのような感覚になる映画だった。







いつか本当に人と判別出来ないAIが生まれることは間違いない。その瞬間が訪れた時、果たして僕らの倫理観は、どの方向を向いていて、AIは僕らをどう受け入れてくれるのだろう?


エヴァを見ていると、人とAIとで迎える未来が怖くて仕方ない………





エクス・マキナ公式ウェブサイト
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2017年04月09日

”実写化”の地雷に国境は無かった....「ゴースト・イン・ザ・シェル』(Ghost in the Shell)」ルパート・サンダース(監督)/スカーレット・ヨハンソン(主演)/字幕/感想

去年の映画の興行収入ランキングTOP10にはアニメ映画が7本も入っていた。しかもここ数年はアニメ作品が1位か2位に入っており、その勢いはどんどん増している。

作品その物の質が高まっていること、アニメを呼吸するように見て育った世代が増えたことなども要因だが、ヤマトやガンダムそしてドラえもん等の子供向けアニメやジブリが作って来た下地があってこそ、これだけ大きなヒットへと繋がったに違いない。




AKIRAと並び称されるほど世界に受け入れられた「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」もそんな下地の一つだった。劇場公開された頃、ジャパニメーションという言葉をメディアがしきりに使って絶賛していたのをよく覚えている。ハリウッドの有名な映画監督までベタ褒めしていたから、日本人としては非常に鼻が高かった。

無論、メディアや専門家の話など関係なく、攻殻機動隊は面白かった。否、面白いとは言えないくらい陰気な話ではあるのだけれど、あまりの細やかな設定の説得力と押井守の哲学にやられ、グーの音も出ないほど痺れたものである。その影響でうっかり原作を読んでみたら、まるで違う風情で驚いたのも今では良い思い出だ....


そんな攻殻機動隊がハリウッドで実写化されると聞いた時は、それはそれは嬉しかった。お金も技術も上である海の向こうでなら、凄い攻殻機動隊が見れるに違いなかったから。勿論これまでのハリウッドによる実写化の実績(スーパーマリオ、ストリートファイター、ドラゴンボール、北斗の拳等々...)を考えると、不安が無いでもなかった。向こうの思い描くクールな日本のイメージは大抵僕らの感覚と相反しているから。

実際、今回の実写化された攻殻機動隊も、かなりアメリカ人の脳内で補正された空間になっていた。






元々アジア某所的な世界観ではあるし、まるでブレードランナーだなと思ってしまうような街並みでも違和感はそれほど感じないものの、実写になると世界がハッキリし過ぎて素通り出来ない面がちらほらあった。ネタバレになるから”何が”そうだったとは言い難いけれど、攻殻機動隊であって攻殻機動隊では無いことを前提に劇場へ足を運んだ方が良いかもしれない。例えるなら、初代の展開をなぞりつつもオリジナルの解釈を進行して若者にウケたガンダムSEEDのような作品なので、人によっては良い部分と悪い部分が相殺しあって何も残らない可能性すらある。

僕個人の感想としてはアクションが良い映画だったなと思った(まあ、ハリウッドならこれくらい当たり前と言ってしまえばそれまでだが) 配役としてはスカヨハの素子やバトーさんも悪くなかったし、桃井かおりの演技が実に良かったのだが、北野武がそれを全部ぶっ壊していたのが残念でならない。荒巻の髪型を無理やり北野武にやらせている感覚も微妙だった。あれは完全に寝癖にしか見えない....

押井守氏の攻殻機動隊を彷彿とさせるシーンや、S.A.C 2nd GIGの要素を絡め、徐々に僕達の知っている攻殻機動隊だと思わせてくれたのも悪い気はしなかったが、少佐の最後の選択がこれまでの攻殻機動隊とは真逆の物であったのがトドメを刺してくれた。これは僕の望む攻殻機動隊では無かったのだと....





ツッコミどころは満載だった攻殻機動隊。一番気になったのは光学迷彩を使用した時の全裸っぽいシーンを多用したことだったかもしれない。もう少し見せ方があったんじゃなかろうか?押井版攻殻機動隊を知る海の向こうの人達の中で、今回の実写化がどう受け入れられているのか?攻殻機動隊を知らない人なら映画としてどう感じたのか?そんな取り留めもない物が頭から離れないほど悩ましい映画だった....

吹き替えで観てさえいれば、イメージがかなり違ったかもしれない













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posted by lain at 10:28 | 北海道 ☔ | 映画 SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする