やっとこさ悪役グループセラピー観た「シュガー・ラッシュ」リッチ・ムーア(監督)/ジョン・ラセター/ディズニー/感想

二日連続で19時前に帰宅した。ツルツル路面の冬道で、この時間は驚異的。


お陰で某ローマ人のお風呂馬鹿映画の続編も観れたし、前々から気になってはいた本作もちゃんと観ることが出来た。








ディズニー映画のことを話す時、毎回言うことなのだが僕はディズニーアニメの人間のモデリングが気持ち悪くて好きではない。細い首に乗っかったバランスの悪いデカイ頭が無駄に表情豊かで、美人キャラでもちょくちょくドヤ顔するのも鼻についてしまう。ただ、生身の人間があまり登場しない作品や、無邪気な子供たちがメインの作品だと、そういった誇張も気にならないので、シュガー・ラッシュは普通に楽しめた。


建物を壊す悪役を30年もやらされてきたゲームキャラのラルフが、悪役を辞めたい一心でヒーローの証であるメダルを他のアーケードゲームに潜り込みゲットするも、お菓子だらけのレースゲーム”シュガー・ラッシュ”に迷い込んだ挙げ句、生意気な女の子”ヴァネロペ”に横取りされ、メダルを取り戻すために彼女がレースで勝つ手伝いをさせられることになるのだが、事態は思わぬ方向へ進んで行くという話で、実にディズニーらしい綺麗なシナリオと、ゲームをモチーフにした世界観の丁寧な作り込みが上手いなとまず思った。

あまりにも巧みに感情を誘導されるものだから、観終わった瞬間”子供が欲しい....”と、ちょっぴり考えた。日本も少子化がどうのと騒ぐ暇があったら、シュガーラッシュみたいな作品に国費を注ぎ込んだら良いではなかろうか?お一人様が楽しむアニメばかり作っているからオナニー大国なのでは?

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"!"だけの登場でもニヤけてしまう

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悪い顔すら可愛くて仕方ないヴァネロペ





もっと現実に存在するゲームのキャラクターが入り乱れる作品(日本人に馴染みのあるゲームキャラは完全に端役)だと思っていたから、ある意味においては肩透かしなのだけど、そのお陰で気が散らずにラルフとヴァネロペの物語を愉しめたような気もする。唯一残念だと思ったのは、せっかく新しいゲームと古いゲームでキャラクターの動きに技術的な差を付けているのに、2Dゲームと3Dゲームの差を明快に表現できていないのは残念だった。ラルフを自分たちのゲームに連れ戻そうとする準主役のフェリックスJr.が近年のゲームキャラであるカルホーン軍曹に一目惚れするシーンで「あなたほどの解像度の高い顔は見たことがありません」と口にするが、フェリックス本人も十分ツルツルお肌で綺麗なものなのだ。ドット絵そのままのキャラが同じセリフを吐いていたなら、もっとこの映画の凄さを熱弁したくなったに違いない。

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悪役たちが集まり、夜な夜なグループセラピーをやっているの最高だったが、それよりザンギエフが悪役だと初めて知った......


レトロゲームのキャラは皆一様に動きがカクカクしている

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お肌ツヤツヤフェリックス




作中の小道具に書かれた英語を日本向けに日本語差し替える位なのだから、こちらもディズニーに対する要求はおのずと高くなってしまう。

公開になったばかりの続編であるシュガー・ラッシュ:オンラインも同じような手法で作っているのだろうか?

映画館まで独りで観に行くには少々脚が重い作品だが、地上波で放送したなら今度は直ぐに観ようと思った(白目)

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posted by lain at 07:18北海道 ☔アニメ

旧友との苦々しい思い出が蘇る一品「冥王計画ゼオライマー」平野俊弘(監督)/會川昇(脚本)/AIC(制作)/感想

今日は1日、現在放送中の作品をそっちのけで、空いている時間の全てをゼオライマーの視聴にあてていた。

正直言って、作品そのものへの思い入れは強い方ではないのだが、この作品を大好きだと公言していた旧友を思い出してしまい、30周年をスルーする気にはなれなった。

※ダイジェストっぽい動画。公式でPVやトレーラーが存在しないアニメは、こういう時非常に困る....



電子の世界で70%のシェアを誇る企業が、実は”鉄甲龍”という秘密組織の隠れ蓑で、15年もの年月をかけて八体の巨大ロボを建造し、世界征服をしようと目論むものの、裏切り者の手により1体のロボットが日本政府へと渡る。主人公である”秋津マサト”は拉致監禁され、ロボットでの戦闘に躊躇いが生まれぬようにと、養育費を受け取る両親を見せつけられ、自分が試験管ベビーであることも知らされる。

自分はゼオライマーに乗る為だけに存在するのだと思い知らされたマサトは、政府の望み通りの戦いを繰り広げるのだが、彼の中の狂気が目覚め自体は急変していく....



もう兎に角、こんなことして誰が得をするのか分からない作品なのが凄い。世界征服を心から望む者など最終的には何処にもいないし、自分を作った科学者の呪いを一身に受けた主人公が、死亡フラグ立てまくりの悪役側を蹂躙するのである。マサト本人の思い出らしい話など一切語られず、育ての親の情が垣間見えるシーンも皆無な中、敵である秘密組織鉄甲龍の面々は、どいつもこいつもベタなほど人間らしい悩みを抱えながら、勝てないかもしれない相手に立ち向かってゆくのである。必然的に負け試合へ挑む側を応援したくなっていた。秋津マサトは言うなればシャアではなくアムロであったし、碇シンジでもあるだろう。同情の余地はあるが、好きになれない理由も少なからず存在するのだ。全ては一人の狂気が生み出した茶番であることが分かりだすと、マサトへの気持ちも高まりだすが、やはり運命に逆らえなかった者たちの方が、圧倒的に愛おしくなる話だ。

下手な横槍を許さない潔いナレーション(時々大真面目なのが笑える瞬間がある)や、シンジくんなどまだVIP扱いでしかない秋津マサトの招集のされ方の酷さであるとか、本当は全て仕組まれたことであったという虚しい収束のさせ方もさることながら、アクション描写もこれぞ平野俊弘の決定版というべきものになっている気はするのだが、少々淡白に幕引きしたことが、胸の何処かに引っかかっている。元々の設定だけを活かし、ほぼ別作品になっているOVAだが、当時打ち切り状態で連載を終えていた原作に肉付けすることが難しかったということなのだろうか?決して未完だとは言わないが、余韻に浸る猶予が欲しかったという気持ちに嘘はつけない。ただ、こうした詰めの甘さすら、人々の記憶から消し去るのに30年では足りない作品へとゼオライマーを押し上げている要素の一つになっているのは間違いないだろう。



成人向けの雑誌に連載された漫画のOVAが、まさか口コミでここまで息の長い作品となり、ファンの語り草となってスパロボにまで登場するとは、旧友の”あの男”も思わなかったはず。

くだらないことで疎遠になってしまったが、彼のお陰でゼオライマーを知ったことには本当に感謝しているし、きっと何処かでゼオライマーを観ているであろう彼が壮健であって欲しいくらいには、まだ想っている。

改まって連絡を取るような柄でもないが、いつかどこかで出会ったら声をかけてやりたいものだ。

見直したら結構楽しめてしまったぞと........







posted by lain at 22:22北海道 ☔アニメ

私情がフィクションを越える瞬間を見た「屍者の帝国」伊藤計劃・円城塔(原作)/WIT STUDIO(制作)/感想

伊藤計劃氏の残した代表的な3作品を映像化するプロジェクトが幕を閉じてから早くも1年半以上が経ち、今月からNetflixでも配信されるようになったのをきっかけに最後まで観るのを躊躇っていた「屍者の帝国」を見てみることにした。







舞台となるのはヴィクター・フランケンシュタインによる死体を蘇生させる技術が成功し世界中に普及しているという19世紀で、ロンドンの医学生である主人公ワトソンが、違法な屍者研究を友人の死体で試した罪を諜報機関に付け込まれ、ヴィクターが遺した最初の”屍者“であるザ・ワンと手記を相棒であるフライデーや、その他御一行と共に捜索することになるというお話。

死者を蘇らせ奴隷のように使うのが当たり前の世界の中で、屍者として蘇った後も魂は其処にあるはずだと問い続ける主人公を中心に、人や組織が入り混じって屍者と生者の有り様をめぐり相対する模様はなかなか面白かった。各々の渇望をドラマチックに描くのには、とても良い舞台だったように思う。

ただ、それなりに伊藤計劃という故人のことを知っている(と思っている)身としては、あらゆる要素から病魔を呪い生者を羨んだ伊藤計劃さんの葛藤と、屍者の帝国を完成へと導いた円城塔さんの伊藤計劃さんに対する哀惜の念を感じ、単なる娯楽として楽しむことは出来ず、なんとも複雑な気分になった。エピローグでの細谷佳正の演技や、フライデーを介した(声にならない想いを呻き声で表現しようと頑張った村瀬歩も素晴らしい演技だった)円城塔氏の熱い想いの吐露には思わず涙が溢れそうになった。全く伊藤計劃を知らない人が観ても、ワトソンとフライデーの絆に何かを感じるに違いないが、やはり伊藤計劃や円城塔さんの想いを少なからず知っている人の方が重くのし掛かってくる作品になっているだろう。




溜息が出そうなほど素晴らしかった伊藤計劃さんによる序章のあと、個人的には馴染みがなかった円城塔さんの言葉使いに掻き乱され、細部まで読むことなく端折ってしまった屍者の帝国を、映像という形であってもちゃんと味わえたのが嬉しかった。原作だと合わない作品でも、第三者の解釈を経ることで、こんなにも食べ易くなるものだなと思う。

不幸な出会い方をした円城塔さんの別作品は結構楽しめたので、決して円城塔さん自身が合わない身体だったわけではないだろう。

自分が思う以上に伊藤計劃という存在が大きなものだった、そういうことなのだろうか?




死んだ人は蘇らない。蘇らせてはならない。宗教的な理由を抜きにしても、それは禁忌に思える。でも、もし魂を失わないまま蘇らせる技術があったとしたら、蘇らせたい人の一人や二人誰にでもいるはずだ。僕は伊藤計劃さんを蘇らせることが出来たなら、円城塔さんには申し訳ないが伊藤計劃100%の『屍者の帝国』を書いて貰いたい。

きっと円城塔さんも、それを読みたかったはずだから....




posted by lain at 07:41北海道 ☔アニメ