2017年02月20日

酷く厄介な愛のお話「コードギアス 亡国のアキト」赤根和樹(監督)/サンライズ/感想

去年の今頃は、劇場で最終章が上映されていたであろう「亡国のアキト」を、だらだらした日曜の気まぐれで1章からまとめて観てしまった。


正直言って、1章を初めて観た時の印象は芳しくなくて、既存のコードギアスの良さと、赤根監督の良さが相殺し合って中途半端な仕上がりになっているような気がしていた。しかし、こうして改めて一気見してみると、紛れもない赤根作品であり、コードギアスでもあり、これはこれで良い物になっているなと普通に楽しんでいる自分がいた。

ストーリーとしては実にシンプルで、主役であるアキトが、ギアスの力に飲まれてしまった兄をヒロインである”レイラ”や仲間と共に止めようとする話なのだけど、赤根監督らしい説明は少なめの思わせぶりなシーンをじっくり見せる演出や脚色のおかげで凄く重みのある手応えを感じさせられた。お陰様で1章2章と鬱展開しかこの先待っていなさそうに思えてならなかったものの、終盤は辛いシーンと同じだけ救いもあって後味も悪く無い。動物のような挙動を見せる不気味なナイトメア”アレキサンダ”のアクションも実に見応えたっぷりで娯楽作品としてもかなり良かったと思う。






障害を乗り越え親密になっていくアキト達のドラマも良かったが、僕は特に悪役であるアキトの兄”シン”の気持ちにばかり同調してしまった。幼い頃に母親の不貞に傷つき、全てを終わらせることを願ってしまったシンが、その母親の不貞の象徴である弟の無垢な魂に否定され、暴走して行く姿は不憫で本当に辛かった。

レイラ達のおかげで自分の存在を肯定出来るようになって行くアキトとは対照的に、死者とばかり会話をするシン。自分を最後まで見捨てず愛してくれた女性の存在を肯定して事切れる最後のシーンには思わず涙が溢れた........




ひとによって亡国のアキトの印象はまるで違うかもしれない。駄作と切り捨てる人も当然いることだろう。でも、少なくとも僕はアキトを観たことで今進行中のコードギアスの完全なる続編が楽しみで仕方なくなった。ほぼオマケ程度の出演でしかなかったスザクとルルーシュのあれからも知りたいし、シンやアキトを翻弄したギアスの力の正体も、もう少し知りたい。

どんな力なのか今回はっきりしなかったレイラの再登場はあるのかどうか分からないけれど、コードギアスであってコードギアスでない、亡国のアキトくらい挑戦的な新作になっていると良いなと思う。






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posted by lain at 07:04 | 北海道 ☔ | アニメ 劇場版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年02月05日

普通が普通であるために「この世界の片隅に」片渕 須直(監督)/こうの史代(原作)/MAPPA/感想

※ちょっぴりネタバレ(?)注意





僕は、右を向けと言われれば左を向きたくなる天邪鬼だが、こればっかりはどうしても皆と同じ方角を向いてでも避けては通れない道だと思い、映画館へ足を運んでみた。

最後の最後で、鼻水ダラダラ流しながら泣いてしまった.....



18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。

夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。

ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。

1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。

※公式サイト”ものがたり”より





最近はすっかりアニメ映画も観に行くようになったものの、本作は、はっきり言って予告やポスターの絵がピンと来ず、いずれ何処か(TV、ネット配信等)で観れれば良いかくらいに思っていました。しかし、あまりにも”映画”としての評価が高く、僕にとってネックだった予告やポスターなども良い意味で詐欺だと聞き及んで、居ても立っても居られなくなり、衝動に身を任させて観に行くことに....


結果、鼻水と涙とツィートが流れ落ちる惨事賛辞と相成りました。「君の名は」を作った新海誠のことをポスト宮崎駿と世の中は大きく触れまわりましたが、すばり次代の宮崎駿は片渕 須直さんの方だとさえ思った。味のあるキャラ絵や美術もさることながら、とにかく当時の生活描写や演出が素晴らしく、キャラクターのほんわかさとフィルム全体を包む寂しげな情緒が掛け合わさり、後半部分の辛い現実の連続へと結びついて、全てが終わる頃には普通の生活への愛おしさでいっぱいになりながら結実するのが本当に良かった....

フィルム全体を見事に一貫した情緒でコントロールしてくれた音楽についても素晴らしかった。今はKIRINJIでも活動しているというコトリンゴさんによる今回の仕事っぷりにすっかり惚れてしまい、彼女の歌声を生で味わいたくて仕方なくなった。KIRINJIは札幌によく来ているし、まずは彼らのライブでコトリンゴさんに逢ってみようかな?




今のようにお金さえ出せばあっさりなんでも買えてしまったり恋愛結婚が普通の世の中ではなく、道端の草さえ創意工夫して食し、家同士が勝手に縁談を組むような時代であっても、それはそれで幸せをちゃんと見つけられるものだったのでしょうね。笑顔さえあれば何処でも関係なく。勝手に流転する世界に翻弄されながらも、ただひたすら目の前にある生活を見つめ続けるちっぽけな女性のでっかい幸せが素敵でした。

上映が終わっても直ぐ席を立つ人が居なかったのも印象的でしたね「この世界の片隅に」

皆、普通の毎日の有り難さを噛み締めていたのかもしれません......





原爆で焼け落ちた広島で、主人公である”すず”が、旦那さんに「この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう」と口にするシーンがあるのだけれど、この作品を見てくれてありがとうとか、クラウドファンディングに参加してくれてありがとうとか、様々なありがとうが重なっているように思えてぐっと来ました。

こちらこそ本当にこの映画を作ってくれてありがとうございました.....







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posted by lain at 13:59 | 北海道 ☔ | アニメ 劇場版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年11月10日

トランプよりはシビュラの方がマシ...かな?「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」/感想

ドナルド・ジョン・トランプが、まさかの逆転勝ちで第45代アメリカ合衆国大統領確定のニュースを見た時、あぁやっぱりアメリカ人は馬鹿だと思った。きっとまた選んだことを後悔する日が来るだろうとも。

本当ならば他所の国の話だし、日本人である僕の知ったことじゃないと言いたいところだけど、残念ながら長年アメリカの顔色を伺い他国からの脅威を虎の威を借る狐状態でアメリカにおんぶに抱っこしてもらってきた国の一員としては、強い影響力を持つアメリカ大統領の人事を当然無視出来なかった。僕としては、生理的にも政治経験的にも年齢的にも不安しかないトランプではなく、昔ながらの政治家で外面を取り繕うことが出来るヒラリーの方がマシだと思っていた。旦那や自身の失敗で様々なことを学んできた人物であるし、女性初のアメリカ大統領という意味でも、それに恥じないよう頑張ってくれたのでは無いだろうか?ドラマ「24 TWENTY FOUR」に女性大統領が登場していた時期に、この選挙戦があったなら結果は違ったことだろう。アメリカ人の民意なんて、その日の気分であっさり変わるのだから。

それでなくとも敵が多いのに、嫌われ者が王座について更に敵は増えるだろうし、アメリカなんて程度の良いヤクザみたいな物なのだから、せいぜい寝首をかかれないよう周囲に気を配って欲しいものだ。間違っても金や名誉のために戦争を起こしたりしなきゃ良いが....





日本の包括的生涯福祉支援システム"シビュラシステム"が他国のリーダーを自分の分身入りの人形に入れ替えていたという、いやぁ〜な話の劇場版「PSYCHO-PASS サイコパス」を見ながら、シビュラシステムならトランプを何色(人間の犯罪係数を色相で表現するときがある)だと判断するのだろう?と思った。シビュラシステムはアメリカと同じように自己の利益の為に"過剰"なお節介を周囲にもたらす存在ではあるものの、基本公平で生理的に駄目とか気分次第と言うのがほとんどないから、トランプのことも阿呆だが無害だと判断しそうな気がする。

そんな劇場版の出来はというと、良い面悪い面それぞれあって、アクションシーンは見応え充分で日本の公安にそこまで権限があるのかよ!と、ツッコミたくなる脚本もサイコパスらしさがあって面白かった反面、戦場の空気感や戦車の重量感は物足りなく、1番がっかりしたのは狡噛慎也がタバコを吸うシーンで、吸っていないのにタバコの燃え方が異様に早い作画のせいで渋くキマるはずのシーンが台無しになっていた。

ついでに言えば、シビュラシステムに唯一口出し出来る主人公の常守朱が、新人時代から変わらずガリガリ体型な点にリアリティが無かった。ムキムキの狡噛慎也とあれだけ格闘出来るなら、もっと筋肉質でいいんじゃなかろうか?



重箱の隅を突いたって非生産的なだけだ言う人もいるだろう。でも、本当は存在しない物に命を吹き込むのならば、重箱の隅にだってプライドが必要になる。万人が受け入れやすいキャラクター造形やストーリー展開もさることながら、細やかな描き込みや繊細な動きに拘った「君の名は」がヒットしたことでもそれは証明済みだ。

トランプも、ああ見えて実は細やかな気配りが出来る男だったら.....もしかすると...........


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posted by lain at 07:13 | 北海道 ☔ | アニメ 劇場版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする