2017年05月21日

俺は、ネット端末遺伝子を見つけた気がする「BLAME!」弐瓶勉(原作)/瀬下寛之(監督)/ポリゴン・ピクチュアズ(制作)/感想

一般的な反応として、2次元好きは整った絵を是とする傾向にある。

没個性ではあっても安定した女の子を提供してくれる絵師が大人気だったり、無料配布されている原作漫画を、別の漫画家がより綺麗に作画し直した作品が大ヒットしたりもする。まるで整形美人を愛でるような所業であることに、どれだけの人が気づいているのだろうか?....




斯く言う僕も場合によっては不安定な作品を敬遠して生きて来た。黒田硫黄の漫画が凄いと一部で人気になろうとも、初見では好きにならなかったし、他の追随を許さないようなインパクトのグラップラー刃牙は未だに生理的に受け付けない。のちにどハマリしたファイブスター物語でさえ、一度はこの絵は駄目だと思ったものだった。”人間は見た目じゃ無い”なんてことはありえない。何せ中身を知るより見た目で判断した方が断然楽なのだから....


BLAME!も見た目でまず避けられる作品だった。能面のように表情の乏しい主人公。どう場面が転換したのか分かり難いコマ割りや構図。説明セリフが少ないが故の置いてきぼり感。どれをとっても連載当初のBLAME!は読み易い漫画では決してなかった。

ただ、鬱蒼とした構造物の生み出す圧倒的な孤独や、人ならざる者達の驚異的な存在感のおかげでそれらの弱点など直ぐに気にならなくなった。少女漫画もそうだが、それぞれの漫画の文法が理解出来るようになると、その世界感が普通に居心地の良い物へと変貌するのである。




少なからず読者に努力を強いる作品ではあったかもしれない。おそらく弐瓶勉氏が一番それを理解していることだろう。今回の劇場版についても戸惑いがあったと聞いた。しかし今回は氏の努力の結果、劇場アニメになると知った時の喜びを遥かに凌駕する喜びが僕の全身を貫いていた。




BLAME!のようなカルトな人気を博した作品は、得てして『イメージと違う』と、言われてしまいがちだが、作者自らの総監修により紛れもないBLAME!になっていて、空も大地も見えない構造物の混沌ぷりや無感情に人を狩るセーフガードの恐ろしさの中を探索する空気が凄くよく表現されているなと感じた。エンターテイメント性を持たせた映像化により、具体性が増して原作の味わいが損なわれている面も、もしかするとあるかもしれないけれど、それを上回る魅力をもって世界観が底上げされているから満足度はすこぶる高かった。

磨きのかかったトゥーンレンダリングな作画は当然素晴らしかったし、まず音ありきなのでは無いか?と思ってしまうほど、物体の質量や熱の有無、更には空間の奥行きまで豊かに語っている音作りが凄かった。残念ながら地元の映画館では上映しなかったため、自宅でNetflixにて鑑賞(劇場公開と同時にNetflix独占で配信)したわけだけど、これは断然音響の良い環境で観てこそ真価が分かる映画に仕上がっているなと貧弱なスピーカーでも伝わるものがあった。

「人間だ」と口にするのがこれほど似つかわしくない男霧亥の雰囲気作りが上手くいっていたのも素晴らしく、こんなに喋らない櫻井孝宏は初めてなのでは?と思った。霧亥に雑な扱いを受けるシボの捉え所の無い自由さや、分かり易いヒロインであるづるの可愛らしさは勿論のこと、珍しくチャラくない宮野演じる捨造の婆ちゃん子なところが微笑ましかったり、キャラの面でも格段にバランスが取れていた。

やはり弐瓶勉さんの世界観は日本の3DCGの質感がしっくり来る。ディズニーのでは駄目だろう。海の向こうの真似をするより、こちらのテイストを極めていった方が日本のアニメの将来は明るいのかもしれないとつくづく思った。






今でこそシドニアの成功で一般人にも振り向かれる漫画家になった弐瓶勉氏だが、BLAME!が無ければまず間違いなく今の氏は無かった。これを機会に若い子にはBLAME!に触れて欲しいし、もしよければ原作漫画も最初の方は辛抱して読んでいただきたい。必ず癖になること請け合いだ。


さんざんっぱら拙い文章を書いて来たけれど、理屈など置いておいて普通にBLAME!をまず楽しんで欲しいものだ。馬鹿でかい建設者、わらわらと湧いて来る駆除系、狡猾で美しい上位セーフガード、無機質への愛情がこれほど掻き立てられる作品はなかなか無い。ボークス辺りがBLAME!のキャラのドールとか出してくれたら即買いするだろうなぁ僕は......




にしてもありがとうNetflix。これからもお世話になります....













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2017年04月24日

楽園を追放されるタイプの感想でスマン「楽園追放 -Expelled from Paradise-」水島精二(監督)/虚淵玄(脚本)/ニトロプラス/東映アニメーション/感想

数年前話題になった「楽園追放」をAmazonプライムビデオで見掛け、なんとなしに見てみた。

周囲の反応や予告映像などから予想していた出来栄えから、それほど外れることもなく、良い作品だなと普通に思った。

そう、普通の良いアニメだった。




ナノマシンの暴走で地上での生活が困難になり、人類の98%が肉体を捨て宇宙ステーションで情報体として生き長らえているという設定の時点で個人的にかなりツボで、無重力の電子世界で機械的な考え方しか出来なくなった人類と、地上のアナログな世界で人間味を養ったAIの対比が非常に面白い作品だった。

両者の間で何が正しくて自分のしたいことなのか?を考えることになる主人公が、程よいカタルシスをもたらしてくれるのも悪くなかった。尻とおっぱいが良いのが分かっていたけれど、それだけじゃないキャラだったんだなぁと思わされた。彼女の相棒役になるチャラい感じの男も、そこそこ良かった。これは三木眞一郎さんの力によるところが大きいだろう。

でも、キャラクターのMVPは人間ではなく神谷浩史の演じたAI”フロンティアセッター”だった。正直言って人間のキャラデザに関してはやはり微妙。表情を豊かにしようとする度、可愛い顔が歪になるのもそうだし、相棒の男になると根本のデザインが良いと思えない。好みもあるのだろうけれど、”ありふれている” "ニコ動などのMMDみたい"という意見にこそ酷く納得する自分がいた。せめて地上に降りたら露出を抑えた目立たない格好に着替えるとか、相棒の男をもっと老けた中年にする(CV大塚明夫)とか、これだけ魅力的な世界観ならもう少しやりようがあったのではないかと欲が出てしまう。

シドニアの騎士のように、特殊な環境下にある人類ならば、3DCGの味わいが生きる場合もあるし、一概にCGキャラが悪いとは言い難いものの、ディズニーのような3DCGの方がまだマシに思えてしまうほど、日本の3DCGの技術はまだ怪しいと言うしか無い。予算的な制限はあるのだろうけど、「STAND BY ME ドラえもん」級の物がぽんぽん作れる時代になって欲しいものである。






面白かったのは面白かった。ずんぐりむっくりなメカも、アクション込みなら物凄く格好良かった。主人公が情報体をメカに移し大気圏へ突入するシーンがお気に入り。自転している惑星上で戦っているのだとちゃんと伝わる描写だったから。

アップルシード的な立ち位置も期待出来る世界観をこの作品だけで終わらせるのは勿体無いくらい良い出来。でもだからこそ手放しで褒める気にならない。

だって水島精二だし。これくらい作れて当たり前だと僕の中ではハードルが上がっているのであります。

次はおっぱいと尻と釘宮に頼らないガチのやつをたのんます
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2017年02月20日

酷く厄介な愛のお話「コードギアス 亡国のアキト」赤根和樹(監督)/サンライズ/感想

去年の今頃は、劇場で最終章が上映されていたであろう「亡国のアキト」を、だらだらした日曜の気まぐれで1章からまとめて観てしまった。


正直言って、1章を初めて観た時の印象は芳しくなくて、既存のコードギアスの良さと、赤根監督の良さが相殺し合って中途半端な仕上がりになっているような気がしていた。しかし、こうして改めて一気見してみると、紛れもない赤根作品であり、コードギアスでもあり、これはこれで良い物になっているなと普通に楽しんでいる自分がいた。

ストーリーとしては実にシンプルで、主役であるアキトが、ギアスの力に飲まれてしまった兄をヒロインである”レイラ”や仲間と共に止めようとする話なのだけど、赤根監督らしい説明は少なめの思わせぶりなシーンをじっくり見せる演出や脚色のおかげで凄く重みのある手応えを感じさせられた。お陰様で1章2章と鬱展開しかこの先待っていなさそうに思えてならなかったものの、終盤は辛いシーンと同じだけ救いもあって後味も悪く無い。動物のような挙動を見せる不気味なナイトメア”アレキサンダ”のアクションも実に見応えたっぷりで娯楽作品としてもかなり良かったと思う。






障害を乗り越え親密になっていくアキト達のドラマも良かったが、僕は特に悪役であるアキトの兄”シン”の気持ちにばかり同調してしまった。幼い頃に母親の不貞に傷つき、全てを終わらせることを願ってしまったシンが、その母親の不貞の象徴である弟の無垢な魂に否定され、暴走して行く姿は不憫で本当に辛かった。

レイラ達のおかげで自分の存在を肯定出来るようになって行くアキトとは対照的に、死者とばかり会話をするシン。自分を最後まで見捨てず愛してくれた女性の存在を肯定して事切れる最後のシーンには思わず涙が溢れた........




ひとによって亡国のアキトの印象はまるで違うかもしれない。駄作と切り捨てる人も当然いることだろう。でも、少なくとも僕はアキトを観たことで今進行中のコードギアスの完全なる続編が楽しみで仕方なくなった。ほぼオマケ程度の出演でしかなかったスザクとルルーシュのあれからも知りたいし、シンやアキトを翻弄したギアスの力の正体も、もう少し知りたい。

どんな力なのか今回はっきりしなかったレイラの再登場はあるのかどうか分からないけれど、コードギアスであってコードギアスでない、亡国のアキトくらい挑戦的な新作になっていると良いなと思う。






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posted by lain at 07:04 | 北海道 ☔ | アニメ 劇場版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする