2014年07月03日

こんな迷惑な公務員に払う税金はねぇー!w「ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件」/七尾与史/幻冬舎文庫/2011年・2013年/小説/感想

 「死亡フラグが立ちました!」のシリーズで、大いに楽しませてくれている七尾与史さんの同じく代表的作品であるドS刑事シリーズ。何もかも有り得いのが楽しかった死亡フラグ〜と違い、一応ミステリーとしてちゃんと筋が通った刑事物でした。


『静岡県浜松市で、人間が生きたまま次々と焼き殺される、残虐な連続放火殺人事件が起こる。被害者は、元ヤクザ、詐欺師、OL、主婦、歯科医など様々で、何の手がかりもない。それなのに、県警からやってきた高慢ちきな美人刑事・黒井マヤは、殺人現場で「死体に萌える」ばかりで、やる気ゼロ。相棒の代官山脩介は、そんなマヤに振り回されながらも、被害者の間で受け渡される「悪意のバトン」の存在に気づくが―。』
by.BOOKデータベース




 ただ、そんな筋道が整った刑事物であっても、七尾さん独特の一筋縄で行かない捻くれ心がしっかり反影されていて、シリアスにすると自身の文章が滑稽に見えてしまって嫌なのか僕みたいなオタクがニヤニヤするネタ(隠れアニメファンの上司が時折口にするセリフ「悲しいけど、これ、◯争なのよね」「にげちゃだめだ!にげちゃだめだ!」等々....がアニオタホイホイ過ぎるw)を個性的な登場人物と共に封入してきます。 おかげで本来なら陰惨な事件でさえ、B級ホラーさながらの軽さに感じ、気持ちの負担も少なく直ぐ消化出来るから本当に読み易い。



 で、今回何がドSなのか?ということなんですが、別にムチでびしびし打ったりするわけではなく、ようはツンデレ美人刑事が被害者も加害者もどうでも良いと豪語し、ただ自分を高揚させてくれる事件現場と死体に執着してるところが、深い意味で(そうでも無いか)恐ろしいドSっぷりなんです。

 一歩間違えるとモラルの問題になって、良く分らない民間団体に怒られそうな言動&行動を取る女刑事だが、操作能力だけはピカイチ。ところが犯人が自分の中で早々に分かっても、次の殺人現場が見たいがために誰にも真相を話さず、そのうえ現場から被害者の”一部”を持ち帰る始末....

 そんな女刑事の不審な動きから、事件解決の糸口を掴めと上司に言われた主人公(ジョニーデップほどでは無いがイケメン)も良い迷惑といったところ。

 でもまあ、少し変(コアなホラー映画やらグロいグッズやらも大好き...)ではあっても美人だし、完全無欠じゃなくて顔に出るタイプだし、こんなお嬢さんに気に入られた主人公がちょっぴり羨ましいかもしれない......w




 ふざけたタイトルだし、犯人や犯人の犯行目的が早い段階で分かってしまうかなりライトな読者向けの作品ですが、陰と陽のバランスが七尾さん上手く、犠牲者ごとの視点で章立てして「こういう人が今殺されました」と言うのを読者に感じされる手法なども面白かったです。

 死体萌えなS女が、この先どんな暴走を見せるのか次が楽しみだわい(・┏_┓・)



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2014年03月19日

真犯人は、本の外に居るっ!?「仮題・中学殺人事件」/辻 真先/創元推理文庫/東京創元社/1972年/2004年/小説/感想

月に数冊程度の活字ファンである僕でさえ読む、もっともポピュラーなジャンル”ミステリー”

元より娯楽作品として産み出されたジャンルでありますから、幅広い層に人気があって当然なわけですが、案外大御所な作家のミステリーは頭の中で事件を整理するのが難しいなんて場面もあるので、好きだけどトリックは何となくしか理解して無いなんて人も多いんじゃ無いでしょうか?僕は勿論なんとなく派です♡ (= ワ =*;)

そんなトリック説明読み解くの面倒臭っ!っていう僕のような読者にも丁度良い作品だったのが、今回読んだ”辻 真先”さんの「仮題・中学殺人事件」

作者の軽〜いノリが良いテンポでトントン進むから非常に読み易く、それでいてお客が飽きないアイディア満載で非常に満足感があったりします(よくある鉄道を使ったアリバイネタが分かり易いよう親切に時刻表を載せてくれたりもしてます) ”町田康”さんぽい軽快なストーリーテリングが好きな方には向いてる気がしますね。逆に作者口調で始まる冒頭を薄ら寒く感じてしまったら、そこで読むのを止めてしまう小説かもしれません。

ただ、作者がいちいち入れて来る注釈や、過去のミステリーネタに少しでもニヤリと出来たならば、無類の娯楽作品へと変貌すること請け合いですd(。ゝ(ェ)・)


さて、大袈裟に僕がステマ状態で褒める本作の何が凄いって、冒頭で作者らしい人物がこう断言するところ....

『この推理小説中に伏在する真犯人は、きみなんです。』


読者=犯人だと言うのです。

こう断言されたら、誰でも気になって仕方無くなるでしょ?好奇心からでも、意地悪な気持ちからでも思わずページをめくりたくなるはずです。

終わってみればなぁ〜んだと、大したこと無いミスリードに感じるかもしれませんが、冒頭で作者らしい人物が言う通り、犯人を読者に求めたミステリー作品は世界中でもほぼ皆無であり(僕が知らないだけかもしれないので、辻 真先さんが世界で初めて試みた手法だとは言えません)まさにコロンブスの卵状態で良い手法だったと思います。

犯人の動機やトリック、それから主人公のご都合な設定(読書の虫で元気いっぱいな美少女中学生ヒロインは、読んだ本の知識をそのまま実践出来るスーパーマン)など、少々強引だったり構成に穴がある部分もありますが、それらの甘ささえ愛おしく感じる活き活きとした登場人物(上記のヒロインのワトソン的存在(ただし深い真相は彼が解き明かしている)で無口な"牧 薩次”通称”ポテト”(ジャガイモ)君の地味な見た目にそぐわない洞察力や、ミステリーファンのヒロインが突飛な推理ばかり繰広げるところに常識人ぶって軽口を叩くヒロインの兄など)や、それらを書いている作家役の男のちょっぴり切ない恋心なんかも程よくてとても面白いんです。



あとがきで”桂 真佐喜”さんが書かれていましたが、その面白いはずの軽快さが大人な読者にはウケがあまりよく無かったそうです(本書の初出は昭和47年) あの時代は骨太なミステリー作家多かったですもんねw

当時としては時事ネタであった物がふんだんに盛込まれているのも読者には伝わり難い部分もあるでしょうし、文章が時々現代らしからぬところもあって少し首を捻る場面もあるでしょうが、漫画やアニメを当たり前のようにたしなむ現代人にこそフィットする読み心地なのかもしれません。


200ページに満たない物量でサクッとこれだけ楽しませてくれる辻真先さん、クセになりそうだ♪

本作のスーパーヒロインと愉快な仲間達の続きが結構出ているそうなので買い漁って来ます(。・`ω´・。)ゝ


読者が犯人というアイディアがめちゃ斬新w




辻真先HP http://2323.la.coocan.jp

辻真先Twitter https://twitter.com/mtsujiji web拍手 by FC2
posted by lain at 07:19 | 北海道 ☔ | Comment(2) | 小説 推理物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2014年02月05日

半翼を捥がれた天使の哀しい物語「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子/早川書房/2013年/小説/感想

 驚異の80代作家”皆川博子”さんの力作「聞かせていただき光栄です」の続編にあたる本作。今回も18世紀のイギリスにタイムスリップしたかのような感覚を文字で届けて下さいました。当時のイギリスを感じさせるディティールを丁寧に織り込み、実に巧みに美味しい物語へと昇華させてらっしゃるので、イギリス独特な情景や登場人物達の姿が脳裏に浮かんで来るのです。


『18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、正体不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には“ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ”と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。』
※「BOOK」データベースより




 前作から5年が経ったと言う設定で、馴染みのメンツもそれぞれ大人になったはずなんですが、バートンズの連中はまだまだ子供なままだし、作品の雰囲気がまったく変わっていなかったのですんなり入っていけました。

 今回メインになるのは盲目の判事”ジョン・フィールディング”の善悪の葛藤でありましたが、天才的な音感の持ち主の硝子職人のエピソードも良かったですし、ミステリー部分もぼちぼちではありましたが、1番の見所は前作でエドと共に恩師の元を離れた”ナイジェル・ハート”の手記でした。

 自分と言う存在がどのようにして出来上がったのかを、産まれ育った精神病院での顛末と共に掛け替えの無い友人エドへ遺したナイジェル。たとえ重苦しい精神病院であっても、彼が愛し愛された人々との想い出に溢れた告白の数々には、自分がエドになったかのように胸が締め付けられました。

 犯した罪の大きさに等しい罰を自分に与えるため、”死者”として生きると皆の前から2人が消えたあの日から、何度も夢見たエドとナイジェルとの再会の日。でもまさか、こんな哀しい再会が待っているとは思いもよりませんでした。皆川さんの残酷な神ぷり半端無いです。

 まあ、そんな残酷な運命を背負う者達だからこそ僕ら読者も思い入れてしまうわけですが.....



 今回、自分の我が侭でナイジェルを追い込んでしまった事実に深く傷ついたエドですが、最後に新たな物語の舞台として相応しい場所へ彼は赴くことになるので、是非次巻はエドを中心にあの大陸で彼が自分を責め抜く重ぉ〜いエピソードを読ませていただきたいところです。まだまだ、このシリーズの登場人物には活躍の余地がありそうな気がしますし。

 ていう、活躍して欲しくて仕方無いっすw

 こう思うの絶対僕だけじゃないよね? (= ワ =*)ニコ♡

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 ハヤカワオンライン http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/123979.html



 関連過去記事

  『このバイタリティは何処から湧いて来るのだろう....ゴクリ『聞かせていただき光栄です』/皆川博子/2011年/早川書房/小説/感想』 web拍手 by FC2
posted by lain at 07:13 | 北海道 ☔ | Comment(0) | 小説 推理物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする