みんなで幸せになれたはずが、なれなかった人がいる映画「カメラを止めるな!」上田慎一郎(監督)/劇団PEACE「GHOST IN THE BOX!」(原案)/感想

久々に、普通の人々と、捻くれた人間が、一緒になって楽しめる映画に出会えた気がした。




普段から、世間一般でウケている映画を観に行ったりはしない。だから、観たい映画が異様にヒットしていると、映画館に行くことが非常に躊躇われる。「君の名は。」の時も、新海誠と安藤雅司さんが絡む映画なんて絶対観たかったのに、周囲が”君の名は。”の話題をしなくなるくらいまで劇場へは行かなかった。

今回の「カメラを止めるな!」に関しては、6月公開で今は10月ということになっているものの、我らが旭川市では、9月の末にようやく上映を開始したばかりということで、実際にはかなりの喰いつき具合で劇場へ脚を運んだと言える。事前に目にしたのはネタバレしないよう「面白かった!」としか言わないような人達の感想と予告映像のみだったから、まさかこんなにファミリー映画だとは思いもしなかった。見た人みんなが幸せになれる作品だったのだ。

派手な役者はいないし、知名度の高いアイドルも出ていない。曲者か無名者しかいない中、これほど成功した映画は近年稀だろう。今更ネタバレをしないように書くのも馬鹿馬鹿しいが、クソ映画のBDを買ってメイキング映像を見たら本編の凄さが分かってしまって最高だった!とか、マジックを種明かし込みで見せてくれるような感覚の面白さが魅力の映画だと言える。伏線回収が三度の飯より好きな人には絶対外せない作品だ。二度目を見たら、また違う楽しみ方が出来てしまうのもたまらないだろう。ぶっちゃけネタバレしててもちゃんと楽しめるような気もするけれど、どうなんでしょう?







本作の元ネタになった舞台を主宰していた人に、原案ではなく原作と表記して欲しいなど、爆発的に人気が出た作品にありがちなケチもついたが、この映画はこの映画で本当に面白かったし、監督である上田慎一郎はことあるごとに元ネタは「GHOST IN THE BOX!」という舞台だと言ってきたわけで、決して舞台そのものの価値を下げるような映画ではないのに、こういうケチのつけ方をすると、自分の価値だけでなく素晴らしい映画の元となった素晴らしい舞台の価値すら下げてしまうのではないかと思ってしまった。

まあ、舞台という箱ではなく、映画で似た手法の作品を作った途端大成功というのでは、舞台で頑張ってきた人は少なからず面白くないのはあるだろう。なら尚更週刊誌に煽られる前にお互いで解決して欲しかったものである。作り手あっての受け手ではなく、受け手あっての作り手でもあるのだから。


良い作品は気持ち良く味わわせてくれよ........











posted by lain at 09:44北海道 ☔映画

この作品は心の肥料みたいだった「人生フルーツ」ドキュメンタリー/感想

フィクションの娯楽映像作品は、どんな被写体であれフィルムを繋ぎ合わせ、盛り上がる音を当てるだけで幾らでもドラマをでっち上げられるが、なるべく客観的に撮ることを目指したドキュメンタリーにはそれが出来ない。だから、出来上がった映像に意味を見いだせるかどうかは、被写体とそれを観測する者次第だと言える。


すなわち一番最初の観測者であるカメラマンや音声さんの責任は重大だし、なにより編集の人の感性は大事。更にそれらをチェックするプロデューサーやディレクターの仕事も欠かせない。そういう意味において、本作は良いスタッフに恵まれていたように思う。プロの役者でもない人の生活から何か引き出したいと、ほんの些細な物にも注目して拾い上げる丹念な仕事っぷりは素晴らしかった。




国内外の都市計画(建物の配置や植樹の位置などを設計するお仕事)に携わっていた”津端修一”(90歳)さんと、その妻”英子”(87歳)の自給自足な生活に密着したドキュメンタリーで、老夫婦のゆったりと穏やかな日常が淡々と続く作品。

盛り上げよう感があったのは、自身が携わった台湾のニュータウンに招待されたシーンくらいで、後は秋の陽光が香って来そうな心地良いBGMと、樹木希林さんが繰り返し口にする『風が吹けば、枯葉が落ちる。枯葉が落ちれば、土が肥える。土が肥えれば、果実が実る。こつこつ、ゆっくり。人生、フルーツ。』というナレーション以外、撮影スタッフの声はしないし説明的なテロップもご主人のことで一度きり。こういう配慮に関しても唸るものがあった。ジブリの鈴木敏夫さんが自身のラジオでべた褒めしていたことがあったが、被写体である老夫婦の独特なスローライフはジブリ作品に通ずるもの(生活感もそうだが、ニュータウンの近くで自然を少しでも残していきたいという思いに「平成狸合戦ぽんぽこ」がよぎった)を感じたし、他人事にはできない年齢の鈴木さんであればなおのこと胸に届くなにかがあったに違いない。

同じく今まさに老後を迎えている人の目にはどう映るのだろうか?他人の手をなるべく借りず、やれることはなんでも自分たちでやり、しかも二人ならそれも楽しいと言わんばかりの姿を見せつけられて鬱に入るのか、それとも自分も頑張ろうとなるのか?どちらにせよ大いに感化されるのではなかろうか?....

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犯罪現場のマーキング状態の畑

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肥料に落ち葉を使う

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餅も自分でつき

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織り機まで使う

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津端さんの師アントニン・レーモンドさんの自邸に倣って建てた家は、頭上が広く開放的。




スローライフの良さを云々というより、生きることも死ぬことも分け隔てなく捉えた怪作と受け取る人もいるかもしれない。僕は老夫婦にほんわかさせられつつも、食生活や仕事に至るまで身の回りを豊かに出来ない未熟な自分を思い知らされ、心の何処かがチクリとした。

同じスタッフで同じように撮ったとしても、もう二度とこの味わいは出せないだろう。

ドキュメンタリーは被写体あってなんぼだなと、つくづく思った。

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公式サイト http://life-is-fruity.com
posted by lain at 13:16北海道 ☔映画

ちょっぴり長いが普通に観れる普通のジュラシックシリーズの系譜「ジュラシック・ワールド/炎の王国」J・A・バヨナ(監督)/感想

道産子には少々辛い暑さが和らぎ気持ちに余裕が生まれたのか、5度目の恐竜の夏を味わいに劇場へと足を運んだ。




ストーリーとしては、ジュラシック・ワールドだった島の火山活動が活発化し、そこにいる恐竜を国で助けるべきか否かというところから始まり、恐竜の保護運動家や世捨て人になっていたメインキャストの二人が、ハモンド(初代パークの生みの親)の盟友だった富豪の助けを受け恐竜を救うべく島へ戻って行くも、利用されるだけされて置き去りにされそうになる。富豪に取り入り側近となった男が恐竜で一山当てようとしているのを止めることはできるのか?.....と、展開していった。

ジュラシック・パークでの教訓を活かし、事件から22年ぶりに恐竜のテーマパークを復活させた連中が、失敗まで真似て大惨事を引き起こしたジュラシック・ワールドの続編なわけだが、1作目から撮影技術は比べるまでもなく向上しているのに、やっていることはあまり変わっていなくて、映画として目新しいことは何もなかった。教科書通りのアングルで撮られている印象で、ハズレが無いだけでアタリも無いように思えた。恐竜一頭一頭の動きや表情もとても豊かで素晴らしいが、逆に豊か過ぎてリアリティを損ない始めている。一緒に観に行った友人は「まるでディズニーみたいだ」と言っていた。結局最後は特定の恐竜との絆に物を言わせるし、ゴジラみたいな扱い(ゴジラは続編以降、他の怪獣を倒してくれるヒーローのような扱いになっていた)になりつつあるTレックスをオマケ程度に出してしまうのだからそう言われても仕方ないだろう。



とは言え、娯楽としてはよく出来ている。噴火で閉ざされる島に取り残されるブラキオサウルスのシルエットの見せ方や、萌えと笑いのバランス、恐竜を復活させたことで得た技術の転用による罪の形などなど、この映画を構成する個々のパーツそれぞれは結構楽しめる。個人的に面白かったのは、出資者の富豪の孫娘が、男女のメインキャストが横並びになって怖く無いからこっちにおいでとやっているシーンで、直に顔を合わせたことのある女性ではなく、ラプトルの飼育ビデオで見たことがあるだけの男にガシっと抱きついたことだった。


”こいつ肉食系だぞ”


と暗がりでほくそ笑んでしまった。

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息の長い作品の続編は難しい。これまでのイメージを壊せないのに壊さなければならないから。

キャストも製作陣もその多くは子供の頃にジュラシックパークを”訪れている”人たちであるし、自分の頭にこびり付いたジュラシック・パーク像を再構築するのは大変なことだろう。懐かしの人を再登場させるのも嬉しいと言えば嬉しいが、新三部作の最後を飾るであろう次作品で、何処までオリジナリティを発揮出来るかのか?あまり期待しないで待つこととする....

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posted by lain at 09:32北海道 ☔映画