視聴者の中にデスノートを持っている人がいたとしたら、この映画の関係者の中で誰が真っ先に殺されるかな?...「Death Note/デスノート」Netflix/感想

もしも、名前を書くだけで人を殺せるノートが手に入ったら、あなたならどうする?

やっぱり自分が気に食わない連中を片っ端から始末するだろうか?

それとも.....



小畑健と大場つぐみによる大ヒット漫画「デスノート」。今更ストーリーの説明などする気にもならないが、その過激な内容は今考えても『ジャンプで大丈夫か?』と思ってしまうほど際どく、頭脳明晰で正義感の強い青年が、ぶっ飛んだ死神の気まぐれのせいで人生を狂わされ、いや、自ら狂っていく過程に、何度と無く虚しいため息が漏れたものだった。

特に宿敵”L”との戦いがメインであった第1部の展開が素晴らしかったため、その部分が様々なジャンルでメディア展開されたわけだが、一般的にウケが良かった邦画実写版はあまり好きになれなかった。何が嫌って、コスプレ同然の微妙な登場人物が数人いることもそうだけど、それ以上に死神が安っぽい3DCGで登場している点だ。

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2006年度版リューク
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去年公開された新作では、かなりディティールは良くなってはいる....



昔の日本映画は小説や漫画の実写化の場合、作者の強い反対が無ければ、そのネームバリューだけを生かし、あとは好き勝手に脚本やらデザインを決めていることが多く、登場人物の服装や髪型だって似ても似つかないことがしょっちゅうあった。それはそれで問題が無いでも無かったが、原作をなぞるだけではない個性が其処には在り『生身の人間』が演る場合の違和感が無いよう改変されているため、無理なく観れる利点もあった。

勿論昔だって特撮を使用して原作に寄せていた作品は沢山あったわけで、一概には言えないが、今の実写化のやり方があまりにも原作の見た目に寄せないと気がすまない物になっているため、原作を知っているとどうしても客観的に観るのが難しい。しかも寄せることによって、役者の演技が粗末だと素人のモノマネみたく悪目立ちするし、素晴らしい演技でも格好がそれだから、いまいち心に響かないなんていう副作用もあり、一体誰が得する実写化の流れなのかいまだに理解に苦しむ。単純に人気作の勢いが残っているうちに、ファンから搾り取れるだけ搾ってやろうとしているだけにも思えてくる。

今回のハリウッドでの実写化も実に陳腐で粗雑。映像の作りもそうだが役者も脚本もどれもこれもB級の中でも下に位置する出来栄えだった。アメリカでは一部のティーンに人気が出たなんて話も聞くけれど、原作への微妙な寄せ方とオリジナルの展開には苦笑するしかなかった。もしもリュークが、なんの変哲も無い普通の人間と同じ姿形で登場し、ここぞという時だけ死神に感じるようなキャラへ改変されていれば、諸手を上げて本作を迎えたかもしれない。





どんな大人気シリーズでも、シリーズを重ねるごとに亜種が生まれ、質もまちまちになるものだけど、予算が円滑に回りそうな海外でもこのレベルというのなら、まだ日本版のデスノート実写版を観てる方がマシに思えた。トレーラー程度の尺ならば、絵になるカットは沢山あったし、黒人がLに扮しているのもアメリカらしい改変で良かったように思うが、Lが体力勝負を挑んだり、シーンとシーンを繋ぐピースが明らかに足りなかったのがとても残念であった。

人を人たらしめている”背景”を疎かにする作品は絶対成功しないなと思った。





posted by lain at 07:57北海道 ☔映画

永遠の命題に挑む生命達「エイリアン: コヴェナント」リドリー・スコット(監督)/マイケル・ファスベンダー(主演)/感想

一体いつからそうなのか分からないけれど、共通の敵(侵略者)に対する団結を描く、もしくは扇動する作品が世界中至る場所で作られている。身近な人間とのいがみ合いを何百、何千何万と年月が過ぎ去ろうとやめられない我々には、どうしても隣人ではない第三勢力の脅威とやらが必要らしい。しかし、結局その第三者と戦わなければならないなら、平和な生き方には程遠いのではなかろうか?ISだの北朝鮮だのが暴走している今の時代、頓にそう考えずにいられない。




映画エイリアンシリーズが、同じように共通の敵であるエイリアンに対し人類が団結していく物語かと言えばそうではない(むしろ逆)し、エイリアンの強さそのものには物語の本質はない。生への絶望と渇望の揺れ動きにこそ本シリーズの真髄はあるように思う。自分で言っててよく分からなくなって来たが、要するに「いつか死ぬにしてもこんな死に方は嫌だ!」というメッセージが込められているのではないか?という話。女性主人公がなけなしの勇気をフル動員して勇ましく戦うのもそうだし、毎度登場するアンドロイドには"生きるとは?"という葛藤がある。今回はひときわアンドロイドの主人公感が強い、いや、間違いなくアンドロイドが主役だった。セックス依存症の男の哀れな姿を描いた「シェイム」で凄まじい演技を見せたマイケル・ファスベンダーが、またもガツンとやらかしている。




逆に、作品全体としてやっていることには何も驚きはない。プロットから撮影手法まで完全に使い古されたものだ。ところが、先が読めていても震撼せずにいられない闇がマイケルを中心に充満していたから最後まで緊張感を保って鑑賞することが出来た。かなり悪趣味ではあるけれど、エイリアンにはアンドロイドが居ないとねと、少しでも思う方には必見の価値があるだろう。




造られた者が、創ろうとする恐ろしくも哀しい物語として…







関連過去記事


『リドリーのこれが観たかった♪『プロメテウス』/リドリー・スコット/2012年/米国/映画』


喰う・寝る・セックス...『SHAME』/マイケル・ファスベンダー(主演)/スティーヴ・マックイーン(監督)/2011年/イギリス/映画/感想


posted by lain at 13:11北海道 ☔映画

アニメのような実写のような、結局"押井守"は何処へ向かうのか?「ガルム・ウォーズ」押井守/Production I.G/感想

昨夜帰宅すると、腹の虫が疼いたのか、ガルム・ウォーズをなんとなく見てみる気になった。





今の日本には本当の意味でのファンタジーが足り無いと感じ本作を試みた...といったようなリップサービスを押井守氏がしていたような気がするけれど、確かにこれは王道のファンタジーで、創造主に見捨てられたガルムという者達が幾つもの部族に分かれ惨めに殺し合いを演じているという世界感からしてそうだった。


ただ、押井おじさんがそんな素直に指輪物語やハリポッターのような王道を作るわけもなく、押井おじさんらしい未来的なメカが登場するSFに仕立てられており、可変する羽根でもって鳥のように滑らかに舞う戦闘機や、押井ファンには馴染み深い戦車、巨人のような機械兵士、巨大戦艦に至るまで特撮臭は止まらない。


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主人公である”カラ”は死しても記憶をクローン体に引き継ぎ、何世代にも渡って戦い続けてきた戦闘機乗りなのだが、敵対している部族から逃げ出した”ウィド”に出会い、この世界の真実を知るための旅に出ることとなる。ガルムが子を作れないのは何故か?神はどうしていなくなったのか?という彼女の偽らざる気持ちが敵対部族の男の気持ちまで動かし、残酷な真実を知ることになって展開など、王道と言わずしてなんと言えば良いのかと思った。そういう意味においては、これまでの押井映画の中で一番分かり易く出来ているかもしれない。


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自分の代わりが死ぬほどいるガルム達


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いまだ、その個性は衰えていないランス・ヘンリクセンがウィド役


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敵対部族であるカラの気持ちが分からないでもないスケリグは本作におけるバトーさんポジション






結論を言うと、これまでの押井実写と同じく、押井さんらしい惜しさが全体を支配していたと言える。これはこれで有りなのだけど、これがアニメーションであればと思ってしまう自分もいた。メカも良い、風景も綺麗、日本人とは瞳の色が違う役者達もなかなか様になる。それでも何かが足りていない気がしてしまうのだ...押井監督の好むフィルタリングのせいか、作り物の安っぽさを感じてしまうせいかもしれない。


これならば低予算を吹き飛ばす勢いがあった「トーキング・ヘッド」の方がよほど意味不明で面白かった。いつの間にか押井作品といったら美麗なCGいうイメージが出来上がってしまったが、色々とケチがついたガルムウォーズでさえこうして日の目を見れたのだし、もっと規模を縮小して小さな空間なのに銀河級の広がりを感じるわけのわからない映画を好きに撮ったとしても、ちゃんとファンは応えてくれると思うが、そんな期待に応えたいなんてまるで考えないのが押井おじさんだから仕方ない....


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直ぐに退場するキャラですら存在感半端ない


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ケロベロスサーガの香りもする


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そしてとにかく絵になるシーンが多い


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後ろ姿がなんとも言えない

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新作を作らないなら作らないで困りものだけど、作ったら作ったで何かと困りものでとんだ性悪監督だなぁとも思うが、まだまだ押井守という監督を見ていたい自分がいて救いようが無い。


次は犬しか出てこない映画撮るかもしれないね.....それはそれで面白いかもしれないな........🐶


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映画『ガルム・ウォーズ』公式サイト

posted by lain at 22:14北海道 ☔映画