2017年07月19日

夫婦という甘く切ない風景「青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light?」森博嗣/講談社/感想

やめるやめる詐欺ってわけでも無いけれど、嬉しいことに森博嗣さんはまだ本を書いてくれている。しかも物書きとしてのモチベーションを持ち直したかのように質も良い。新しいブログも始めたようだし、このまま生涯現役であってくれたら最高なのだけど、そればっかりは先生にも先生の人生があるから仕方なの無い話だ。




もう何度もここで書いているかもしれないけれど、森作品の中で今1番好きなシリーズは間違いなくWシリーズ。初の本格的なSFシリーズで百年シリーズとの繋がりもあるから実に楽しい。主人公は人間とウォーカロン(人工細胞によって作られた生命体)を見分ける研究をしている”ハギリ”という博士で、なぜか毎度のように命を狙われ騒動に巻き込まれてしまう。


人類がなかなか死ななくなり、子が生まれない未来を舞台に、人に取って代わるかもしれない存在(ウォーカロン、AI等)を交えた森先生お得意の命の定義を揺さぶる展開もさることながら、毎度命を狙われるハギリ博士と、そのボディガードであるウグイ女史との距離感の変化も見所で、最新刊である本作では夫婦同然の掛け合いに発展していて微笑ましかった。AIと人間の女性とを天秤にかけているハギリ博士を見ていると、Wシリーズは結構ラノベ気質なのかもしれないとか思ってしまった。実に羨ましい....


僕は女性に縁がない。というか、そもそもが縁を結ぶことが恐ろしくて仕方ない。でも、互いに想いあっているのに素直になれない者達の不器用なやりとりを見るのは大好きだ。ささきすばるさんとの夫婦仲も、ハギリとウグイのような距離感なんだろうか?気になる気になる.....






今朝テレビでニュースを見ていたら、長らくドラえもんを務めた大山のぶ代さんが認知症になってからも、ずっと寄り添っていて夫の砂川啓介さんの訃報が飛び込んで来た。大山のぶ代さんとの仲睦まじい様子や、妻を置いて先には逝けないと語る砂川さんの生前の姿に泣きそうになった。


「こんな夫婦にならなってみたい」


素直にそう思った....




どんな少子化対策よりも、こんな素敵な夫婦達を世に知らしめる方が効果的な気がしてならない。


まあ、あまりにも出来の良い見本を目にしてしまうと、「こうじゃなきゃいけない!」という気持ちが邪魔になって、逆効果かもしれないけれど........





青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? Wシリーズ (講談社タイガ) -
青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? Wシリーズ (講談社タイガ) -







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辛い時こそ生きている僕「私たちは生きているのか?」森博嗣/講談社/感想

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posted by lain at 20:24 | 北海道 ☔ | 小説 森博嗣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年03月14日

辛い時こそ生きている僕「私たちは生きているのか?」森博嗣/講談社/感想

季節の変わり目だからか、寝込むような風邪をひいた。

病院に行く金をケチっているからインフルエンザかどうかは分からない。37℃ちょっとまでしか熱は上がらなかったから、おそらくただの風邪だろう。

今回の風邪は、鼻と喉とお腹に来た。昨日1日寝込んでも鼻水は治らず、寝過ぎと腹痛で背中が痛いのを我慢して寝続けるより、荒療治のつもりで体を動かした方が治りが早いかもしれないと今日は仕事に行ったものの、作業中数分と持たずに鼻水が垂れ、やっぱり今日もティッシュの山が出来てしまった。終いには脱水症状になりそうだ....


風邪は本当に鬱陶しい。頭はくらくら、お腹はきゅるきゅる、味覚も狂えば、鼻詰まりで呼吸も辛く嫌で嫌でしようがない。

でも、こんな苦しい時だからこそ、生きていることを実感している自分もいて、まるで健康なままより、時々病気になるくらいが丁度良いような気もしなくもない。滝のようにながれる鼻水だって、身体が生きようとしなければ流れやしないのだから。苦しい思いをしないと生きていることを実感出来ないなんて莫迦莫迦しい限りではあるけれど....


僕の風邪なんぞと、森博嗣先生お得意の生きているとはなんぞや?という定義を一緒にしてはなんだが、僕にとって生きているとは、苦しいと感じるかどうかだと思った。




富の谷。「行ったが最後、誰も戻ってこない」と言われ、警察も立ち入らない閉ざされた場所。そこにフランスの博覧会から脱走したウォーカロンたちが潜んでいるという情報を得たハギリは、ウグイ、アネバネと共にアフリカ南端にあるその地を訪問した。富の谷にある巨大な岩を穿って造られた地下都市で、ハギリらは新しい生のあり方を体験する。知性が提示する実存の物語。

by 「BOOK」データベース



今回の「私たちは生きているのか?」では、人間より合理的に生きているウォーカロン達が、脳だけになって仮想空間で生活している村が登場するが、そこではあらゆる物事がプログラミングでしかなく、不都合な天候も病気も存在せず、自分の容姿からパラメータまで好きに変更出来てしまう。確かに合理主義でガッチガチな人ならば、まさに天国のような環境だが、苦痛で生を実感するような僕では、まるで手応えの無い空虚さだけが積もり積もって、仮想空間の中で何度となく自殺を謀るかもしれない。

なんでもプログラミング出来るのだから、苦痛だってプログラミングすれば良いのかもしれない。でも、生身を知る者にとって、そもそも身体を捨ててまで仮想空間で生きることが難しい話だ。この先なんらかの天変地異で仮想空間が保存された電子機器がダメージを受ける可能性だってあるし、自分では身動き一つ出来ない脳の管理を他人に任せるだなんて想像するだけで悍ましい...





脳すら失って自分そっくりのAIが生き続ける未来なんて、僕は欲しく無い。ボケて寝たきりで親族や看護師に迷惑をかけてでも生身で生きていきたい。

ほぼ半分人生を生きてしまった。あと半分、どれだけ苦しい思いをしながら生きて行くのか?

考えるだけでため息が出てしまうけれど、それだって生きていればこそだから、辛いことも込みで笑えば良いのかもしれない。


まあ、なかなかそんな都合よく解釈は出来ないけどね
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posted by lain at 20:16 | 北海道 ☔ | 小説 森博嗣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年11月08日

真っ先に不要だと言われそうな人類代表の僕です「デボラ、眠っているのか?」森博嗣/講談社


なんの為なのか、自らの意思で選択する暇も与えず、あれもこれもと無用な知識を押し付ける学校や親が大嫌いだった僕は、それ以外の場所から知識や人生を学んでいた気がする。小学生までは玩具や学研のひみつシリーズ。中学になるとゲームにアニメに漫画、そして田中芳樹。高校になると少しは詰め込み教育に付き合うようになったものの、大事なことはやっぱり娯楽というオブラートに包まれた物から学んでいた。ひたいに汗してお金を貰うようになった今も、なんら変わることは無い。三つ子の魂百までとよく言ったものである。

そんな僕にとって、森博嗣さんは自分で選んだ教師の一人。それも格別の師だ。何が凄いって、知識の乏しい僕でも理解したり感じ取れる例え方で物事の根幹を伝えてくれるところだろう。生と死とは?学ぶということは?働く意味とは?人を愛するとは?等々、様々なテーマについて、独創的でありながらも的を射た価値観を自作で展開してくれるので、こちらもついその気なってしまい、森先生のような生き方(先生が書く登場人物の生き方も含む)をしてみたいと思わされ、流され易い自分が怖くなる時もある。森さんがその気になれば、宗教の一つや二つ簡単に運営出来てしまうだろう。なにせ真賀田四季を生み出すような方なのだから...


多くの森作品に足跡を残す超天才科学者"真賀田四季"が予見した未来に連なるエピソードとして、そして、森博嗣初の本格SFとして、ファンならずとも見逃す手はないWシリーズ。気づけばあっという間の4冊目。身体のほとんどを新しくすることが出来るようになり、人がなかなか死ななくなって出生率が激減した時代を舞台に、機械とも生物とも分類し難い存在ウォーカロンを交え、生きているとはどういうことなのか?と展開してゆく様は、森博嗣作品の総決算のようでもある。

テーマがテーマだけに、もう兎に角グサリと刺さる言葉が多い。今回は特にヴォッシュ博士にヤられた。作品の肝となるAIについて「複数の知能が存在すると、相互関係から歪みが生まれ、対立が生じる。それは、ようするに、人間社会とまったく同じ、個人と同じだともいえるだろう。人間だって、ただ一人で生まれて、一人で育つなら、邪悪なものにはならないのではないかな?」と博士が話したり、「私は生きているのではありません。したがって、死ぬこともありません」と人間の感傷など一切計算に入っていないAIの発言に対し 、「存在することを、生きているというのだ、人間はね」と諭すシーンなど最高にグッと来た。

普段、理にかなわないことを是としないように見える真賀田四季でさえ、時に感情で判断したりすることがあるから、森博嗣さんのキャラクター造形は憎らしい。まるでウォーカロンのような女性だったウグイ女史にしても、どんどん愛おしさが増している。

AIが人類を値踏みするような危うい未来観と魅力的な登場人物。ほんと、こんなに美味しいオブラートなら、六法全書でさえ読破出来そうだ。





ふと森博嗣流の官能小説が読んでみたいと思った。それこそ綺麗なだけでなく、ねっちょり粘着質なやつを。





タグ:森博嗣
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posted by lain at 07:09 | 北海道 ☔ | 小説 森博嗣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする