2017年03月15日

変態出来ない変態が羨む青い変態「ぼくらのへんたい 10完」ふみふみこ/COMICリュウ/徳間書店/感想

父親は居るものの、日頃留守がちで母や姉二人と過ごすことが多かった僕は幼い頃普通に気弱で、よく「逆(姉と性別が)だったら良かったのに」と周囲から言われたものだった。

徐々に体が大きくなり、男友達と遊ぶようになれば流石にやんちゃな男の子になっていったものの、少し年の離れた長女の膨らんで来た胸を見ながら、いつか僕も大きくなって来るんじゃないかと本気で思うくらい、性別への違和感に苦しんだ時期もあって、こんな物さえ無ければ良いのにと股間を叩いたり切ってはどうか?と考えたこともあった。

人間と暮らすうちに自分を人間だと勘違いしてしまう犬と同じような感覚だったのかもしれない。性的な物への目覚めに対する戸惑いも相俟って、男であることに激しい自己嫌悪を抱いてしまっただけなのだと今なら思える。間違ってもハサミで切らなくて良かった........


「ぼくらのへんたい」は三人三様の切実さで女装せざる得ない少年達の泥沼青春話だったわけだけど、7巻以降の笑顔な表紙そのままに笑い合える関係に最終的には落ち着いて本当に良かった。作者が最終巻のあとがきで、どうしても好きになれない3人の主人公に「こいつら全員不幸になれ・・・!」と呪いながら描いていたという言葉通り、前向きになれそうでなれない彼らを見守るのは辛いことが多かったから、それぞれに救いがある
収束には感慨深いものすら感じてしまった。男でも女でもいい、僕らはみんな"へんたい"で良いんだと笑う彼ら全員を祝福したくて仕方ない......







まだ、女性に対する憧れはある。

それは性交渉の相手としてもそうだし、自分が女になって可愛らしい服を着たり、旅行をしたり、女性ならではの視点でこの世界を楽しんでみたいという気持ちも大きい。

男(僕)は世界をつまらない物にしか出来ない。短絡的な性や暴力を心の何処かで求め、諦めと道義の利口さを盾に一歩を踏み出さない。少々思慮が足りないくらいの方が、絶対人生を楽しめるに違いないのに。

あ、けして女性が考え足らずだと言ってるわけでは無いけどね(言ってるなこれ)










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posted by lain at 07:18 | 北海道 ☔ | 漫画 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年01月19日

変わりたい気持ちに性別も優劣も必要無い「ぼくらのへんたい 1巻」ふみふみこ/COMICリュウ/徳間書店/感想

人は何かしらの問題を抱えた時、似たような境遇にある誰かを潜在的に求めたりするものですが、今のようにネットが在って当たり前な時代は、案外あっさり赤の他人と悩みを共有出来てしまうから、逆に有り難みを実感していない人も多いのでは無いでしょうか?

それこそ本作の舞台が30年前の日本であれば、女装する理由を抱えた10代が同志を見つけるなんて、夜のお店が立ち並ぶ繁華街へ足を踏み入れるしか無かったのではないか?とさえ思えて来ますし、まだまだ肩身が狭いとはいえ、現代日本において性別に関するストレスを抱えた人達は幸運なのかもしれません。



この作品は、三人の女装少年達がオフ会を開くところから始まります。

溺愛していた娘が死んだ事を受け入れられない母親のために、家へ帰ると姉そっくりに女装する少年

幼い頃のトラウマの影響で好きな男の先輩が望む通りに女装し、自分を偽り傷つけ続ける少年

普段の姿は男装で、これは女装では無いと感じている少年

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三者三様の理由がそこにはあって、同じように見えて同じではない彼等の想いが交錯し、傷つけ慰め合い、かさぶたが硬くなるみたいに少しずつ大人になって行くほろ苦さがなんとも味わい深い。彼らを取り巻く周囲の人達の心模様についても触れていたのが大きく、少々女装した時の少年感に物足りなさがある絵ではあっても、切っても切れない性的な表現も含め避けては通れない部分に触れているからこその生々しさがありました。

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三人の中で中心的な存在の青木 裕太。女装している時の”まりか”と変わらず普段から可愛らしい
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と、詰襟を評し
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初めてのオフ会で気持ち悪いと言われたことに気落ちする純粋な子



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まりかを傷つけた張本人の木島 亮介
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しかし、母のために”ユイ”へと変貌する彼はガチで病んでいる....


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三人共に見ていて辛い瞬間が多いが、田村 修くんが女装して”パロウ”として生きている瞬間が一等苦しかった......



僕は特に、幼少期のトラウマから糞ったれな男供に身を委ね、自らを貶め続ける少年が自分にダブって見えて仕方なかったです。別に同じような境遇にあったわけでは無いのですが、このままじゃ自分が駄目になるだけだと分かっているのに依存し続けてしまう彼の姿には身につまされるものがありました。変わりたい。変わらなきゃいけない。そんな気持ちが僕の中で燻り続けているのでしょうね....

女装云々に限らず、変わりたい人の気持ちを動かす良い漫画です。



※AmazonのKindle Unlimited を利用していれば、1巻だけ無料




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2017年01月16日

親しき仲にこそ劣等感あり「おとなりコンプレックス 1巻」 野々村 朔/クロフネコミックス/感想

「もしも生まれ変わるなら、男と女どちらが良い?」

なんて会話を人間生きていれば1度や2度すると思いますが、特に多感な年頃には身体も出来上がっていないため、何故自分は男(女)に生まれてしまったのだろうと、子供の頃思い悩んだ方も少なく無いはず。

ところが 、女装や百合なんて言葉が普通に飛び交う今の時代でも、意外と男女共に同じ性別に生まれ変わりたい人の割合が多いと統計が出ているそうです。生涯未婚が女性10%のところ男は20%だったり、出生率は多いのに早死にするから人口比率は女性の多いなど、数字だけ見ても僕などは女性に生まれ変わった方が利点が多いように思うのですが 、案外男でいる事を気に入っている男性が多いものだと思いました。立ちション出来るのが大きいのだろうか?

せっかく生まれたのだから楽しまなきゃ勿体無い

そういう気持ちがちゃんと行動に現れていて、男のように考えるだけで満足するような控えめな面がまるで無いのが女性の良い所であり、悪い所でもあるけれど、綺麗に化粧を施し、色鮮やかで全く機能性が皆無な可愛らしい服に身を包み、その余剰エネルギーをお前は何処で発散するつもりだ?と側から言いたくなるほど甘い物を喰らう姿を羨ましい以外の言葉で言い表すことなど出来やしない。月1の鬱陶しい血の儀式は要らないなぁと思うものの、僕はやっぱり生まれ変わるなら女になりたくて仕方ない。


だがしかし「おとなりコンプレックス」に出て来る男の子ほど女装が似合うなら、男に生まれる方が楽しいような気もする。





大学に入っても兄弟みたいにべったりな幼馴染の男の子(幼い頃から女装させられていた)と女の子(何処からどう見ても爽やかなイケメン)が、年相応の色恋に巻き込まれ、互いのコンプレックスと向き合いつつ幼馴染から男と女として意識するようになって行くという、良い意味で普通の少女漫画展開が読んでいて楽しかったり辛かったりで面白い。女装とイケメン女子という逆転カップルな設定があるだけで、これだけありふれた内容が面白くなるんだなと思った。好きかもと思っていた合コンで知り合った男子が、女装した幼馴染を女だと思い込んで付き合いたいと言い出した時のイケメン女子の心理描写や、自分だけの物だと思っていたイケメン女子が他の男と仲良く会話しているのを女装したまま見守っていた男の子の気持ちなど、本当に甘酸っぱくて酷く羨ましい。

野々村 朔さんの女装表現は、ただ女の子の絵に実は男の子だという設定を付け足した物ではなく、何処となく骨格に男の特徴が残っている匙加減が良い。イケメン女子も、その時々で女性らしさが垣間見える瞬間があって、ちゃんと二人の感情が男としての物なのか、女としての物なのかを表現出来ているような気がした。特にイケメン女子が作中可愛らしい女の子に萌えるシーンや、女装男子が嬉々として女物の服選びをしているシーンにリアルさを感じた。同性愛者だろうが異性愛者だろうが、自分の中に絶対異性としての思考が誰にだって少なからずあるわけで、そこを意図的に呼び覚ませば僕らはもっと自由に生きられそうである。




結局のところ、僕は同性愛者でもないから、無い物ねだりを拗らせ女性に憧れているだけかもしれない。

だけど、簡単に手に入るものならば、誰も憧れたりしないことだろう。

もしもRPGのように、自分で性別を選べるなら、あなたはどちらを選びますか?

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posted by lain at 07:00 | 北海道 ☔ | 漫画 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする