細腕が支配する骨太な歌たち『ハルカトミユキ TOUR 2018-19 〜大人なんていないんだツアー〜 12/15札幌musica hall cafe』感想

昨日は何年振りかに床屋へ行った。

何年振りと言っても、腰に届くほど伸ばしているわけではなく、普段は自分で切っているからなのだけど、なんとなくリセットするつもりで行くことにした。

本当に久し振り過ぎて、顔も忘れられたのではないか?と思っていたら、呆れ顔で「久し振りだね」と言われ、嬉しさのあまり喋りすぎてしまった。最近は激安店が増え、待ち時間が長く若干割高な個人店から客足が遠退いているのではないかと思い、やんわりと尋ねてみると、案外固定客は浮気しても直ぐに戻ってくるものだと言う。確かに安ければ従業員の給料も安く、個人店と違って自分の腕一つで店が傾く覚悟もないからモチベーションも低いのだろう。個人的にもお客一人一人にじっくり時間をかけてくれない店で切ってもらいたいとは思えない。それでなくとも刃物を身体の近くで使う商売である。信頼関係が無い人間に任せるなど恐怖でしかない。

ご無沙汰していた床屋の主人はおばちゃんなのだが、以前より更に腕が痩せ細ってきたような気がした。この店が無くなったら、俺は何処へ行けば良いのだろう?....



そうして軽くなった頭をもたげながら、午後からはツルツル路面を車で駆けていた。無論ハルカトミユキを肉眼で観るためである。




ハルカトミユキはどんなユニット?そう聞かれると、正直上手く説明出来ない。まず聴いてくれという他ない。僕の拙い解釈で評するなら、出ない答えを求め続ける儚さを情感たっぷりに歌い上げるユニットといった感じだろうか?プラスαで中二病っぽさも付与されているのがまたなんとも言えない人たちだと思う。

amazarashiのように、どうしようもなく哀しい物語を求めているようなところもツボに入り、数年前から好んでよく聴いていたものの、ライブには初めての参加。女性が多いのかな?若い人ばかりかな?そんな一抹の不安を抱えつつ会場へ行くと、まあまあ老若男女問わず、不器用に人生生きてますと言わんばかりのお客ばかりで安心してしまった。車谷浩司のソロプロジェクト”Laika came back”以来のmusica hall cafeは相変わらず雰囲気は良いがキャパ的には狭く、よくもまああれだけの客が入れるものだと変に感心したりしたが、兎に角ハルカトミユキを近くで見れるのは嬉しい限りだった。

生のハルカトミユキは可愛らしかった。以前の男前な髪型の印象が強かったため、眉毛が見えない前髪ぱっつんで登場したハルカは、何処のアイドルかと思うほど綺麗で、ミユキは近くに居てくれるだけで安心感をくれそうな柔らかそうな笑顔が印象的だった。インディーズの頃の尖った彼女らをライブで知らないため、今の彼女らと比べてどうなのかは分からないが、音源で良いと思っていた曲は全て生でも素晴らしく、特に”シアノタイプ”と”ナイフ”と”手紙”は大好きな曲だから涙腺が軽く決壊した。





勝手に気難しい子なんだろうと思っていたハルカの瞳は凄く綺麗で、細腕でもって愚直にギターを弾きながら熱唱する彼女は床屋のおばちゃんみたいに職人で格好良く、それにぴったり寄り添うように合わせるミユキのコーラスと鍵盤も素晴らしく、まさしく二人で一つの存在なのだと痛感した。北海道では初ワンマンだったようだが、次回はもう少し大きな箱でもいけるのではなかろうか?

人数が入ればバンド編成でもやれるわけで、ライブの幅も広がるに違いないし、今回のようなアットホームなライブも素晴らしいが、大きなステージでのハルカの孤高な姿も見てみたい。何よりまだまだ生で聴きたい曲が山ほどある。



アニメとのタイアップである”17才”で新たな扉を開いたというハルカトミユキ。大人なんていないんだツアーが終わった先の彼女らに、何が待っているのだろう?

まだ暫くは付き合い続けたいアーティストの地位は揺るがなそうだ。





セットリスト

1.光れ
2.ドライアイス
3.シアノタイプ
4.プラネタリウム(BUMP OF CHICKENのカバー)
5.未成年
6.朝焼けはエンドロールのように
7.君はまだ知らない
8.嘘ツキ
9.世界
10.Pain
11.ナイフ
12.17才

アンコール

13.(新曲)
14.手紙






ハルカトミユキ TOUR 2018-19

2018年12月2日(日)東京都 渋谷7th FLOOR
OPEN 18:30 / START 19:00

2018年12月3日(月)東京都 渋谷7th FLOOR
OPEN 18:30 / START 19:00

2018年12月7日(金)愛知県 HeartLand
OPEN 18:30 / START 19:00

2018年12月8日(土)岡山県 城下公会堂
OPEN 17:30 / START 18:00

2018年12月9日(日)広島県 音楽喫茶 ヲルガン座
OPEN 16:30 / START 17:00

2018年12月15日(土)北海道 musica hall cafe
OPEN 18:30 / START 19:00

2018年12月23日(日・祝)東京都 LOOP
OPEN 14:30 / START 15:00

2018年12月23日(日・祝)東京都 LOOP ※女性限定
OPEN 18:30 / START 19:00

2019年1月5日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
OPEN 16:30 / START 17:00

2019年1月6日(日)宮城県 enn 3rd
OPEN 16:30 / START 17:00

2019年1月13日(日)東京都 渋谷7th FLOOR
OPEN 18:30 / START 19:00

2019年1月14日(月・祝)東京都 渋谷7th FLOOR
OPEN 15:30 / START 16:00

2019年1月25日(金)福岡県 ROOMS
OPEN 18:30 / START 19:00

2019年1月26日(土)大阪府 ROCKTOWN
OPEN 16:30 / START 17:00

2019年1月27日(日)京都府 京都MOJO
OPEN 16:30 / START 17:00

posted by lain at 15:38北海道 ☔音楽

僕らはみんな”女王蜂”に群がる働き蜂🐝

夏アニメと呼ばれる新作アニメが既に数話放送されている状況で、僕はまだ春アニメを見ている。

特別春アニメが多かったわけでもなく、ついついゲームをやってしまい家での消化があまり出来なかったのと、出先での鑑賞に支障を来すほど、ここひと月ほど”女王蜂”というバンドにハマっていたのが大きな原因だった。




元々注目度の高いバンドだったそうなのだけど、僕はDAOKOとの楽曲「金星 Feat.DAOKO」で”この人いつもこんなに裏声多用する人なんだろうか?....”と興味を持ったのが最初だった。昔ならここでレンタルショップかレコード店に走ったものだが、今はApple Musicみたいな定額制音楽サービスがあるから本当に便利なもので、直ぐに彼らの曲をリストへ加え聴いていた。

ただ、去年の自分はそこまで彼らにハマっていなかった。理由はちょっと分からない。女王蜂の中心であるアヴちゃんの、何処か吹っ切れたような「HALF」の完成度に何かのスイッチが入ったのかもしれない。其処からは兎に角新旧聴けるものは全て聴きまくった。




男である自分、女である自分、日本人である自分、日本人でない自分、様々な自分と折り合いをつける為に選んだ音楽がこれだったんだろうと、勝手に納得していた。辛いことは辛いし、怒りも哀しみも消えないけれど、それをエネルギーにして愉しんでしまおうという力が彼らにはある。

何より気に入ったのは、その楽曲自体の混沌さだ。もう素人の耳にはどのジャンルが混じり合っているのか分からない。ただ一つ言えるのは”和”の味わいが常に根底にあるということと、それが僕は大好きだということ。訳が分からないのに訳が分かってしまうアヴちゃんの歌詞共々、新しいのに新しくない女王蜂というジャンルは熱い。






ちょっとライブまで行くのは熱狂的なファンが怖くて行けないが、あと10歳若ければ絶対生の彼らを観に行ったことだろう。中性を売りにしたアーティストはこれまでも大勢いたが、間違いなく女王蜂はその系譜の先端にいる。男が男らしくなくてもいい。女が女らしくなくてもいい。本当に良い時代になったものである。


まだまだ差別はあると言う人はいるだろうけれど、今の世の中ほど差別を受ける側が声を上げやすく仲間を見つけやすい社会はこれまで無かったのでは無いかと思う。差別とは好きか嫌いかを決める行為と同じだ。ほぼ全ての人が無意識のうちに差別を行って生きている。“そんなもの”を是正しようと考えることすら差別に他ならない。

だから、そんなつまらないことは考えずに女王蜂を堪能するのが吉だ。単純に彼らが格好良い可愛い面白いで聴くの良いだろうし、自分の鬱屈を重ね合わせて聴くのも良いだろう。





これからもっと女王蜂は子を増やす。

働き蜂である僕らの仕事はこれからだ🐝






posted by lain at 07:23北海道 ☔音楽

森田童子というひとと、同じ時代を生きてみたかった

小さなお友達から、大きなお友達まで(大きいお友達の方が多いか)夢中になっていたE3の最中、森田童子さんが亡くなっていたとのニュースが流れた。


享年66歳。体調を崩し何度も病院の厄介になっていたそうで、心不全とのことだった。






いくら2003年に制作された続編で、もう一度楽曲が使われていると言っても、既に15年ほど経っているわけで、ドラマ「高校教師」の主題歌を歌っていた人だよと話しても、分かって貰えないかもしれないことにまず哀しくなった。90年代のTVドラマ全盛時代を知る者にとって、93年度版の「高校教師」は本当に特別な存在で、高校教師が女生徒と恋仲になるという単純な筋だけでなく、何故2人が恋仲になってしまったかという背景描写が実に重厚かつ詩的で、普通なら誰も応援しないはずの男女関係を、TVの前の皆は切実な想いでもって”成就してくれ”と見守っていたものである。


だが、あのドラマの結末が明るいものであったなら、誰の心にも残らなかったろう。心中同然で終わってゆくからこそ忘れ難かったのだ。そもそも原作者である野島伸司さんの作品は、兎に角陰湿で主役を幸福にする気などまるでない場合が多い。叶わないと心の何処かで分かっているのに、求め続けずにいられない者達の哀れな様ばかり描いている。そして僕は、そんな彼の脚本が大好きだった。高校教師以上にドロドロだった「人間・失格」、尾崎豊と言う人を本気で聴くきっかけとなった「この世の果て」、生きる意味を無くした2人の男が愛を問う「世紀末の詩」、どれもこれも未だに心の片隅に居座り続け、事あるごとに脳裏を過ぎる。もういっそトラウマでしかない。




で、尾崎豊を聴くきっかけになったと書いたが、野島作品は主題歌選びが兎に角毎回秀逸で、森田童子さんの「ぼくたちの失敗」も物凄くドラマにフィットしていたから当然大ヒットに繋がった。流行り廃りで語れない彼女の表現力は素晴らしく、ベストコレクションとして発売されたアルバムを聴きながら、絶対に替えが効かない歌手だなと思ったものである。僕が生まれる前の時代の歌が、年月を軽く飛び越える凄さたるや、なんとも言い難いものがある。叶うことなら森田童子さんと同じ時代を生きてみたかった....


高校教師で自曲がヒットした頃、既に森田童子さんは活動を休んでいたわけだが、今まさに不遇な扱いを受けているアーティストは、是非我が道を信じて歩み続けて欲しいなと思う。”売れた今こそもっと売ろう”ではなく、”やっと聴いてもらえるようになったから聴いてもらおう”という瞬間のために。


まあ、ヒットに合わせて活動するような方であったなら、これほど特別な存在になっていなかったのだけど.......









本当に惜しい人を亡くしたものである..................













posted by lain at 07:50北海道 ☔音楽