いつのまにか春アニメを見終わっていた

茹だるような暑さの春を超え、意外な涼しさに包まれた初夏も遅れた梅雨と入れ替わるように終わり、アニメもいつのまにか入れ替わっていた。

そんな風に感じるほど、印象に残った作品が少ないシーズンだったように思う。





一般的に春期一番盛り上がっていたのは「鬼滅の刃」だったろう。家族を鬼に殺され、唯一生き残った最愛の妹も鬼にされてしまった主人公が、鬼を狩る存在として成長していく展開は確かに鉄板の面白さだった。鬼達が人間だった頃を思い出しつつ消滅していく姿も個人的にたまらなかった。原作力だけでなくアニメの出来も良かったからこその評価だと思う。逆に期待を裏切ったのは「ワンパンマン」だ。原作力に胡坐をかき、テンポも悪ければ売りだったアクションのスケールもダウン。アニメでやる意味が声優だけになっていたような気がした。ただ、1期もこの作りなら誰も何も言わなかったかもしれないので、スタッフ云々より同じ条件で2期を作ろうとしなかった上の連中の責任が大きい。

まだ終わっていない中では「この音とまれ」「フェアリーゴーン」「MIX」など色々と楽しんだが、ダントツだったのは「キャロル&チューズデイ」。歌で繋がった生い立ちの違う二人の少女のサクセスストーリーにAIを絡める世界観も素晴らしいが、作中の楽曲やアーティストのパフォーマンスシーンの秀逸さが本当に良かった。国内だけに発信する作品では絶対にこうはいかないなと痛感するディティールの王道っぷりである。一生ボンズと渡辺信一郎に付いて行こうと思った。



一生付いて行こうと言えば幾原邦彦監督である。ウテナ、ピングドラム、ユリ熊と、思わせぶりというか意味不明なのに刺さるナニカがある作品を残し続けて来た氏の最新作「さらざんまい」たるや、あまりのバランスの良さにすっかりヤラレテしまった。訳あり少年達が河童の王子に尻子玉を抜かれ、カパゾンビにされた者たちを浄化することになるという、言葉で説明するのをすかさず諦めたくなるほど荒唐無稽な世界観でありながら、物語の構造は至極分かり易くて、ちゃんと最初から結末が出来上がっていたのではないかと愚考するほど、これまでのどの幾原作品よりもまとまりの良さを感じた。少年達の切実さと現実の重み、それを独特なデザインで演出。やりすぎに思えるほどの腐れ描写すら若者達の心を解放する道具としてキッチリ作品にフィットしていたのが印象的だった。腐女子の皆さんは、そこら辺に繁殖しているBLなど棄てて、さらざんまいを観ることをお勧めする。どんな嗜好が売りの作品でも、経過のリアリティが大事なのだと知らしめてくれたような気がしてならない。





「面白かった」

ただそれだけで終わる作品は山ほどある。それが初めて観る類の作品であれば記憶に残るのかもしれないが、長い人生歩んでいると満足は出来なくて直ぐ記憶から抜け落ちてしまう。

そんな中、最新作が最高傑作と思えるクリエーターが居てくれるのは本当にありがたい。宮崎駿を始め、徐々に作品のまとまりが怪しくなってきた監督は非常に多い。頑張っているクリエーター達に本心から感謝したくなる作品に、これから先も出逢えたら幸いである。

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