本当に”ありがとう”と”お疲れ様”しかない浮かばない....「天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3(完)」小川一水/早川書房/感想

二度に分けての島出張がとうとう終わりを迎えた。合わせて1ヶ月近く行っていたことになる。10数年ぶりの長期外泊だった。

山と海を一望出来る風景は綺麗だし、宿のご飯は海沿いならではの充実っぷりだし、観光気分なところもあったものの、やはり慣れない部屋で慣れない布団に収まり、同僚達との生活習慣の合わなさにヤキモキしているとストレスがどんどん溜まってかなり疲れた。

人間はやっぱり自分が住処と認めた場所でしか生きられないのだなと思った。縄張りが必要とか、ちゃんと動物だよ人間も....



そんなこんなで、自分もそこそこ苦労してきたわけだが、この度無事完結を迎えた「天冥の標」の作者”小川一水”さんは、その比ではないほど、ここ数年苦労していたのかもしれない。

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植民星メニー・メニー・シープに突如現れた褐色の怪物と広まり続ける感染症、圧政者とそれに反抗する者達、ようやく真実に辿り着くと、そこには絶望しかなかったという1巻から、毎巻ありとあらゆるジャンルで読者を楽しませてくれた天冥の標だが、各巻のテーマ(パンデミック、宇宙海賊、官能、農業、etc..)を取り扱うに際し、小川さんは相当勉強なされたのではないかと改めて思った。好きだから嬉々としてやれた瞬間もあるやもしれないが、そんな生易しいレベルの勉強で済ませていて書けるような作品では絶対にない。嘘を織り交ぜ格好の良いハッタリをかますにしても、本当のことを知らなければ嘘もつけないのだから。

最終巻である10巻の三冊にしても、ここに来て膨大な新要素(複数の異星人の生態)を放り込みつつ、これまでの10年のこと(シリーズは今年で10周年)を回収しなければならないという、素人考えでも気が狂いそうなことをやってのけるのはしんどいことだったはずだ。途中もう書きたくないと思う時があったというのも当然だろう。作品作りというのは本当に面白い。作者が動かしているはずが、必ずしもそうはならなくなっていくのだから。書き手と読み手の想いと、書かれた者達の想いが合わさって初めて物語は紡がれて行くのである。特に長く続く作品は。





終盤少し雑に感じたり、淡白に思えるところがあったけれども、そんなことでこれまで積み上げてきた物が崩れ去ることなど一切なかった。ヒトとヒトでない者達の連綿と続く物語に立ち会えたことは本当に嬉しいの一言。ミニマム(被展開体)からマキシマム(超新星爆発)まで、余すことなく楽しめました。愛しいヒト達のことを、しみじみと思い返している自分がいます。

またいつかアクリラに会いたいけれど、これから大変な小川一水さんに無理は言えない。あまりSF色を感じない作品でも書いて気分転換して貰いたいものだ。

長い間お疲れさまでした.....




天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)