ケムリは居てもけものは居ない春

独りではなく複数人で働く場合、どうしても避けられないのが”引き継ぎ”。一人もしくは一つのチームで最初から最後までやれるのが理想的であっても、スキルを鑑みた人員効率の問題で、どうしても手の空いた人間がカバーする場面が出て来てしまう。

そうなると当然情報共有が大事になるものの、少し間の空いた案件になると前任者の記憶も曖昧で、マメな人でも無ければ覚え書きすら存在しないなんてこともざらだ。実際に現場へ赴くと話が違うレベルを通り越して唖然とすることもある。一応の統一規格が存在していても、そこに至るアプローチは人それぞれだから、その続きを別の人間が引き継ぐというのは一筋縄ではいかない。



だから、けものフレンズを引き継いだスタッフも、同じくしんどい思いで仕事をやっていたのではなかろうか?と、ちょっと思った。





前もって言っておくと、僕は別にけものフレンズファンではない。1作目も初めは1話切りしている(その後周囲の反応が気になってまとめて観た)アプリにも手は出さないし、イベントやグッズにも興味はない。ただ、たつき監督による続編があったなら観てみたかった思う程度には、SFとしてけもフレを楽しんだ口なのだ。そんな熱心でもない人間からしてもけもフレ2は残念で仕方なかった。キャラクターの可愛らしさは1作目と比べ物にならないくらい潤沢な資金の甲斐もあって向上しているのに、大事なものはすっぽり抜け落ちているのが致命的だった。たつき監督ならではの思わせぶりな世界観の表層だけを真似たスッカスカの演出やストーリー展開が酷かったのもあるが、それ以上に動物達への”敬意”が足りなかった。イルカが餌を貰って芸をする姿を誇張して描いたり、人間に命令してくれと懇願する犬を登場させたり、「そうじゃないだろう!」と何度思わされたかしれない。

イルカや犬を出すのはまあ良いとしても、もう少し違うアプローチがあったのではなかろうか?犬にしても命令ではなく、対等な友としてセリフを選ぶべきだったのではないか?フレンズという言葉の意味を履き違えてしまったのは失態だったと言えるだろう。






スタッフの名前や経歴だけを見れば無難であったのに、何故ここまで炎上してしまったのか?ここまで燃え上がっても計算内だと角川は言うのか?モヤモヤは晴れそうにないが、けものフレンズの代わりにケムリクサがあったことは救いだった。



けもフレ以上に不穏で個性的な世界観に、今どきの可愛らしいキャラクターと不釣り合いなほどのSF展開が待ち受けていたのが面白かった。全てを明らかにせず(明らかに出来るほど設定を組み上げていないのかもしれない)肝心な部分は匂わせるだけに留める”はぐらかし”の巧さが光っていた。ただ、少し間延びして単調な部分もあり、全6話のOVAくらいの方が丁度良い作品にも感じる。いっそ劇場版という選択肢も悪くないだろう。

可愛らしいキャラでやる内容だからバランスが取れている作品なのは重々承知だが、たつき監督の闇の部分だけで構築されたシリアスでバッドエンドしかない作品にも興味がある。多くのたつき監督ファンは、監督がハッピーエンドにしてくれることを望んでいたが、僕は正直哀しいばかりの路線でも良いのではないかと考えていた。監督自身がそういう内容を嫌なら仕方ないが、自分が嬉々としてやったわけではない仕事が、逆に評価されることもあるわけで、一度逃げ道の無いガチなSFをやってみるのも一興だと思う。






意味合いは違うが、次作品のハードルが更に上がってしまったたつき監督とけもフレ陣営。

次はどんな喜びと失望を与えてくれるのだろうか?......