旧友との苦々しい思い出が蘇る一品「冥王計画ゼオライマー」平野俊弘(監督)/會川昇(脚本)/AIC(制作)/感想

今日は1日、現在放送中の作品をそっちのけで、空いている時間の全てをゼオライマーの視聴にあてていた。

正直言って、作品そのものへの思い入れは強い方ではないのだが、この作品を大好きだと公言していた旧友を思い出してしまい、30周年をスルーする気にはなれなった。

※ダイジェストっぽい動画。公式でPVやトレーラーが存在しないアニメは、こういう時非常に困る....



電子の世界で70%のシェアを誇る企業が、実は”鉄甲龍”という秘密組織の隠れ蓑で、15年もの年月をかけて八体の巨大ロボを建造し、世界征服をしようと目論むものの、裏切り者の手により1体のロボットが日本政府へと渡る。主人公である”秋津マサト”は拉致監禁され、ロボットでの戦闘に躊躇いが生まれぬようにと、養育費を受け取る両親を見せつけられ、自分が試験管ベビーであることも知らされる。

自分はゼオライマーに乗る為だけに存在するのだと思い知らされたマサトは、政府の望み通りの戦いを繰り広げるのだが、彼の中の狂気が目覚め自体は急変していく....



もう兎に角、こんなことして誰が得をするのか分からない作品なのが凄い。世界征服を心から望む者など最終的には何処にもいないし、自分を作った科学者の呪いを一身に受けた主人公が、死亡フラグ立てまくりの悪役側を蹂躙するのである。マサト本人の思い出らしい話など一切語られず、育ての親の情が垣間見えるシーンも皆無な中、敵である秘密組織鉄甲龍の面々は、どいつもこいつもベタなほど人間らしい悩みを抱えながら、勝てないかもしれない相手に立ち向かってゆくのである。必然的に負け試合へ挑む側を応援したくなっていた。秋津マサトは言うなればシャアではなくアムロであったし、碇シンジでもあるだろう。同情の余地はあるが、好きになれない理由も少なからず存在するのだ。全ては一人の狂気が生み出した茶番であることが分かりだすと、マサトへの気持ちも高まりだすが、やはり運命に逆らえなかった者たちの方が、圧倒的に愛おしくなる話だ。

下手な横槍を許さない潔いナレーション(時々大真面目なのが笑える瞬間がある)や、シンジくんなどまだVIP扱いでしかない秋津マサトの招集のされ方の酷さであるとか、本当は全て仕組まれたことであったという虚しい収束のさせ方もさることながら、アクション描写もこれぞ平野俊弘の決定版というべきものになっている気はするのだが、少々淡白に幕引きしたことが、胸の何処かに引っかかっている。元々の設定だけを活かし、ほぼ別作品になっているOVAだが、当時打ち切り状態で連載を終えていた原作に肉付けすることが難しかったということなのだろうか?決して未完だとは言わないが、余韻に浸る猶予が欲しかったという気持ちに嘘はつけない。ただ、こうした詰めの甘さすら、人々の記憶から消し去るのに30年では足りない作品へとゼオライマーを押し上げている要素の一つになっているのは間違いないだろう。



成人向けの雑誌に連載された漫画のOVAが、まさか口コミでここまで息の長い作品となり、ファンの語り草となってスパロボにまで登場するとは、旧友の”あの男”も思わなかったはず。

くだらないことで疎遠になってしまったが、彼のお陰でゼオライマーを知ったことには本当に感謝しているし、きっと何処かでゼオライマーを観ているであろう彼が壮健であって欲しいくらいには、まだ想っている。

改まって連絡を取るような柄でもないが、いつかどこかで出会ったら声をかけてやりたいものだ。

見直したら結構楽しめてしまったぞと........