辞めた女と、辞めなかった女の話

久々の連休を漫然と貪っていた僕は、二人の女性の選択に気をとられていた。




一人は長年歌手として活動し、まだこれからという時期に引退を発表した安室奈美恵。これを機に一切の芸能活動から足を洗うようだが、まあ辞めたいなら辞めれば良いのではないかと思うし、何故彼女の引退をそこまで惜しむのかが分からなかった。


僕は他人にやらされるだけの人や、お金や周囲との関係の為に辞められない人など、社畜と変わらないから芸能の世界からさっさと消えて欲しいと思っている。そもそもちゃんと発信したい物を持っている人なら、自分がどう老いていこうとも軽々しく引退など口にしない。今回の件で、安室奈美恵はやはり職業歌手に過ぎなかったのだと酷く納得してしまった。


スーパーモンキーズ時代の安室奈美恵は好きだった。理由はよく分からないが、同世代の女子だから好きだったのかもしれない。ソロになって一気に顔黒度が増し、初々しさが消えて一気に興味を失った。周囲が“安室ちゃんかわいい”と口にする度なにかが冷めていった。彼女の歌に感動など一切覚えたことはない。周囲も見た目ばかり褒めていた。そんな歌手をアーティストとは僕は呼べない。今回の引退にしたって、安室奈美恵ばかり褒めず、これまで彼女を支えてきた人達こそ褒めるべきだ。沢山のスタッフは勿論のこと、彼女のモチベーションを上げてきたファンあっての安室奈美恵なのだから。


唯一安室奈美恵を褒めてやりたいのは、母親があんな死に方をしなければならなかった家庭環境にありながら、根性で芸能の世界を生きてきたということだろう。歌も踊りも見た目も維持するのは並大抵のことではなかったはずだ。であればこそ引退などと口のすべきではなかったのではないかと思わずにいられない。






二人目は樹木希林さんだ。家族に見守られ自宅で亡くなったというニュースに妙な安堵を感じたものである。

生涯現役という言葉が似合う役者の一人で、安室奈美恵のような華やかな見た目でもなく、名脇役といった彼女だったが、晩年の心身から滲み出る重みのある演技が本当に素晴らしく、ある種キムタクと同じで、演技の幅は狭かったかもしれないが、演技の質は非常に高く自然な味わいがたまらない人だった。つい先だっても「人生フルーツ」という老夫婦の独特な生活を撮ったドキュメンタリーのナレーションで演技だけでは表現出来ないものを感じたばかり。「万引き家族」を劇場へ観に行かなかった自分が憎い.....



全身を癌に侵されつつも、最後まで表現者として生きた女性と、五体満足でありながら表現者の道から去る女性、どちらが正しいという話ではないものの、どちらを惜しみたくなるかは自明だ。


せめて安室奈美恵は「あの人は今?」的な番組へ出たりしなければ良いなと思う。


一時代を作った女として、それくらいの矜持はあって欲しい....