懐かしいだなんて言わないで....「serial experiments lain」中村隆太郎(監督)/小中千昭(シリーズ構成)/トライアングルスタッフ(制作)/感想

サッカーW杯に日本が初めて出場し、ゲームボーイが今更感たっぷりとカラーになり、ポケモンが劇場までも席巻した1998年。

ソニーはプレイステーションでの成功を機に、オタク分野の開拓に夢中で、ゲームやアニメや漫画の雑誌を発行し、看板ゲームのアークザラッドやワイルドアームズをアニメ化までした。

その時出たアニメ雑誌の名は「AX」と云う。

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既にアニメージュ、ニュータイプ、アニメディアという世代毎にフィットしたアニメ雑誌が揃っていたところに参入したAXには、正直”何故?”と思ったものの、特性のトレカを付録にしたりAX独自のメディアミックスもあったため、ついつい創刊から休刊まで買っていたりした。

そして、そんなAXブランドの中で一際印象的だったのが「serial experiments lain」だったのだ。

日本語のトレーラーが見当たらない....



「どんな作品?」と訊かれると、少し言葉に詰まってしまうけれど、至極簡単に言ってしまえば、攻殻機動隊のネットワークの部分だけを現代風(1998年当時での現代)にアレンジし、ネットとの関わり合いを玲音という少女を使って表現したアニメだった。攻殻の方がスタイリッシュで達観した見せ方であるのに対し、lainは脳髄に纏わり付くようなオドロオドロしい表現で、最初は可愛らしい端末を使っている玲音が、どんどん端末を増設し、直接自分を配線で繋ぎだすまでに至るのが非常に怖い。しかも玲音の周りには、現状の肉体と精神の有り様を憂いている者達が群がり、彼女を神のごとく扱い始めるからカルトさに拍車がかかって本当に不気味だった。

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画面が小さくておもちゃみたいなナビだったのが...

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どんどん弄くり回し...

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最後には電子のジャングル.....




電柱のトランスが唸る酷く虚ろな夜の街並みへ、微笑みを浮かべた少女が飛び降り自殺するだけでもシュールなのに、その少女から来るはずのないメールが届くわ、その子と普通にやりとりしだすわ、母親から娘への愛情を一切感じないわ、父親は気持ち悪い笑い方をするわ、瞳孔の開いた瞳で玲音を監視してる男達までいて、冒頭から非常にわけがわからない(褒め言葉)が、これはひとえに今は亡き”中村隆太郎”監督とシリーズ構成の”小中千昭”氏の融合のせいである。中村隆太郎監督の空間や音でもって心の均衡を揺さぶり、音にならない台詞で印象付かせる演出と、小中千昭さんのホラー要素の相性は抜群で、電子の世界と現実の世界の境界線を行ったり来たりさせられる感覚は、サイバーホラーとでも云うべき発明だった。誰にでも分かるような説明は確かに存在しないが、冒頭の愛を感じない家庭環境や、玲音の世界の観測の仕方一つ一つの意味が後々ちゃんと見えてくるし、2人の仕事は玲音への愛着を通常より深めることに成功していたと思う。

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ボンヤリした表情と不揃いな前髪と髪留めが本当に可愛らしかった

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実は結構良い人なんだけど、この時の笑い方はトラウマレベル...

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影の配色がまたなんとも言えない






主演を務めた清水香里さんは、当時15歳でlainが声優デビュー作品でもあり、声の演技はまだまだであったけれど、その拙い感じが実に玲音とリンクしていたようにも思うし、キャラデザの安倍吉俊さんや、岸田隆宏さんも含め、様々な人の人生を左右した作品だったと言える。当然そこには僕を合わせた視聴者の人生も含まれる。お陰様で何かしらのアカウントを作る時、真っ先に浮かぶのはlainの名だ。けして草薙素子ではない。

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小中千昭の玲音への愛情がたっぷりなシナリオ本

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lainではないが、安倍吉俊さんのカレンダー。仕舞い込んだ画集はいくら探しても見つからない...

OPも大好きだった。”BoA”じゃなくて”bôa”だって言っても分かって貰えないのが辛かった...






技術的なことは、この20年であっという間に追い抜かれたかもしれないが、この作品にしか成し得なかった答えが、やはり此処にはある。

悪いことは言わない。

BDを買いなさい

買うのです...

買うn..

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おやすみ玲音.....










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