高野山を汗臭い男たちの聖地にしてしまった張本人「孔雀王」荻野真(原作)/AIC/OVA/1988年/懐アニ

現代の創作世界は、一言で言って混沌だ。

これはこういうジャンルだと、区分するのが非常に難しく、和洋折衷どころの話ではない”合いの子”で溢れている。



そんな中でも、昔から女性に人気なのは和の呪法の世界だろう。最早流行の先端というわけでも無いけれど、陰陽師を題材にした作品は今でも普通に人気が高く、美形が式神を繰り出す姿はそこら中で散見出来る。

だが、そういった和の呪法の世界を僕らの馴染み深い2次元の世界に落とし込んだ元祖は、そんな美形が爽やかに邪気を払うような作品ではなかった。いや、一応あの時代ならイケメンだったのかもしれない。ただの生臭坊主なのだけど....


OVAと同年に実写映画化されるほどの人気だったようだ



僕が初めて孔雀王を読んだのは中学生の頃だったろう。週刊少年ジャンプ以外を開拓したくなり、ちょっぴり大人びたヤングジャンプに手を出して孔雀王も知ったのだ。ただ毎号読めたわけでもなく、コミックを自分の金で買えるようになるまでは長かった。ぶっちゃけ就職してから古本屋をハシゴして全巻集めたものだった。しかも自分が知っている孔雀王は、続編の”退魔聖伝”の方で、無印の方を初めて読んだ時は絵の古臭さに面食らったものである。

IMG_7729.jpg

IMG_7731.jpg
生臭坊主な孔雀だが

IMG_7730.jpg
能力は折り紙つき



で、どんな作品かと言うと、高野山に裏の顔を持つ退魔集団がいて人知れず魔を払っており、主人公である孔雀は孔雀明王の守護を受ける優秀な退魔師で、様々な怪異や密法を悪用する者と戦うこととなり、物語は徐々に日本の言い伝えの範囲を超えた壮大なものへと膨らんでゆく。そういう意味でいうと、必ずしも純粋な和の世界観とは言えないかもしれないが、世界各地の言い伝えを上手く結びつけて話を盛り上げていたようにあの頃は感じていた。おそらくはゴリ押しだったのだろうけど、不勉強な素人目には、ただただ説得力のある世界観でしかなかった。

IMG_7732.jpg

IMG_7733.jpg
グロい世界観とバランスを取るかのように...

IMG_7728.jpg
お色気がちょいちょい挟まれた。まるで”10分に1回”は性交渉のシーンを入れなきゃいけなかった日活ロマンポルノみたいだ(見たことないけど)

IMG_7734.jpg
「オン アビラ ウンケン ソバカ」って練習したよね.....




にしても、孔雀王のOVAシリーズ1作目のラスボスは、まさかの安倍晴明なのはやはり面白い。現代人なら絶対正義側に配置しそうな者を悪役に据えるセンスが最高だ。アニメの仕上がりに関しては、あまり触れないでおきたい。いまや大御所の方々(秋山勝仁、板野一郎、會川昇、摩砂雪、等々...)にも若かりし時代があったのだし、当時の作品としては決して悪い物でもない。ここが凄いという点がイマイチ見つからないだけである...まあ声優デビュー5年目のペーペーだった関俊彦の若々しさや、納谷悟朗さんの物腰柔らかな声を楽しむには良い作品かもしれないし、もっと目の肥えた人なら見所の一つや二つ見つけることが出来るに違いない。


ただ、これまた古い作品にありがちな正規のルートでのネット配信では観ることが叶わない。中古のDVDを買うくらいしか方法は無い。

去年から様々なOVAの30周年を追って来たが、そのほとんどが死に体のコンテンツと化していて実に残念だ。アニメの動画を違法にアップロードしている人たちを裁くのも大事だろうが、そういった死に体になったアニメ達を守る道も示して欲しいものである。