楽園と自由は共存出来ない「アップルシード(1988年版)」士郎正宗(原作)/片山良一(監督・脚本)/感想

”士郎正宗と言えば攻殻機動隊の人、そう思ってくれるならまだマシ(アニメ版の監督達”押井守” "神山健治"ばかりに目が行って原作者の名前がうろ覚えの人もいるから)というものかもしれないが、けして攻殻機動隊だけの人ではない”

熱心なファンはそう言って嘆いているのだろうな、というタイミングでフルCGのアニメとして復活したのがアップルシードだったのだが、今日はその新しい方のアップルシードではなく、古い方のアップルシードの話である。

OVAに合わせて作られた実写映像。本編はYouTubeで探せば.....




そもそもアップルシードとはなんぞや?ということだけど、それほど熱心に原作を読んだわけでもないから語れるほどの答えを持ち合わせていないのだけど、要約するに新たな世界大戦が起きて荒廃した世界の中で、人類が過去に夢みていた未来世界を実現させているオリュンポスという都市に拾われた二人が、その街の抱える問題を目の当たりにしつつテロや権力者と戦う話。

そして1988年に作られたOVA版は、恋人がオリュンポスに馴染めず自殺し、その後の心無いオリュンポス側の自分に対する仕打ちに傷ついた警官の男がテロリストと組んで”間違っている”都市”をぶち壊そうとする話で、右に倣えが出来なかった者の悲哀が割と良かった。丁度日本の高度成長期が終わる少し前という時代で、大人が子供を抑圧することへの不満が様々な作品に影響していたこともあり、OVA版アップルシードもそういった背景で産み落とされた感はあるなと今更ながらに思った。まあ幾ら何でも自分の記憶を無理やり覗かれるような目に遭えば、この国潰したろ💢と誰でも考えるよね....


人の種を守るためというか、かつて人が夢みた世界を守るために人の自由を侵害するオリュンポスのやり方を見ていると、今の日本とどう違うのだろう?と思わざるえない。ソ連の粛清の時代に比べればマシかもしれないが、ほんの10年20年前なら笑い話で済んだことが、今の時代は一大事として扱われ、ほんの些細なミスや罪が赦されずトコトン追い込まれる場合も増えている。スマホの普及により情報の流れが加速し、正しい情報だけでなく誤った情報も散々流れ、その割に誤りの修正は広まらないから混沌の色は濃くなる一方だ。

今がどの程度何者かに情報操作されているのかは、全ての現場に居合わせるわけではない僕に観測しようもないが、本気になれば事実を虚構で上書きすることなど造作もない時代だ。これを怖いと言わずしてなんと言えばいいのだろう?......




ガイナックスが自ら作らなかったことに不満を覚えている人には駄作でしかない1988年版だが、個人的にはお話が面白いのだから良いじゃないかと言いたい。情報量が多い(士郎さんの作品はどれも多いけどさw)本作への入門という意味でも良い作品だろう。ついでに「THEビッグオー」の片山良一さんの頑張りを少しでも感じて貰いたい。

それにしても、SFを作る人たち全般がそうだけど、未来の便利さと愚かしさを見事に予測しているものだなとつくづく思う。



予測の範囲を抜け出せないでいる人類の行く末はいかに........