(`ハ´)<一寸光阴一寸金!!「刻刻」大橋誉志光(監督)/堀尾省太(原作)/感想

父が親族経営の会社で孤立し、辞めることを決めたとき、僕は丁度高校を卒業する時期で、2人の姉が大学に行ったことが関係していたのかは分からないが、なかなか多めの借金を父がしていたことが発覚してかなりゴタゴタしたのを覚えている。

それを言い訳にしたくは無いが、安い大学どころか専門学校にすら行く気にならなかった。あんな疲れた顔をして「気を使わずにお前も行きたいところがあったら行って良いんだぞ」と言われて“じゃあ行きます”と空気を読まずに言えるほど叶えたい夢もなく、兎に角金が欲しいと思って就職を選んだ。




それから10年が経ち、20年が経ち、ただただ仕事に追われ衰えゆく体と頭の中身に怯えるようになった今は、金以上に時間が欲しくてたまらない。金持ちになれれば時間も買えるだなんて言う人もいるが、定時ぴったりに退社出来るタイプの公務員(教師などは時間外での無給活動が多すぎるため当てはまらない)や、お飾りのポストのお陰で自動的に金が入る中高年、そして外国の大企業に勤めている人でも無い限り、人脈や金を育てるために日夜活動しているから暇には見えない。

感じ方には個人差はあるだろう。所詮貧乏人(僕)の視点でしかない。しかしまあ、いくら金を持っていても自由になる時間の量に関しては、満足いっていない人の方が間違いなく多いのではなかろうか?

時間が十分にあれば睡眠もしっかり取れるし、ゆっくり食事をしたり風呂に浸かれるうえ、飽きるほど娯楽も堪能出来て心に余裕を持って仕事や勉強に打ち込めそうである。きっと様々なプレッシャーから解放され争い事とも無縁になるだろう。



ただ、本作のように時間がまったく動かなくなったらなったでどうなのか?というのはある。しかも自分の時間だけは動いているから、周囲が止まっているうちに自分はどんどん老けてしまう。

皆が止まっていたら、あんなことやこんなこともやりたい放題で楽しそうだと最初は思うかもしれないが、移り行かない世界というのは酷く味気ないし、誰の反応も返って来ない世界など、孤独過ぎて心が壊れそうだ.....





主人公である佑河 樹里の甥と兄が誘拐され、それを救うために彼女の祖父が先祖代々受け継いで来た石を使い時間の止まった世界(止界)へと家族総出で赴くのだが、誘拐犯の本当の狙いはその”石”であることが分かり、どうにかして家族みんなで元の世界に戻ろうとする話なのだが、なんでもない置物にしか見えない石のデザインや、特殊な術が使えるようにはまったく見えない祖父の風貌だとか、今の日本で腐る程見かける崩壊寸前の家庭環境であるとか、そういう物の一つ一つが、なんでもない人たちが特殊な状態に巻き込まれているのだぞと主張しているのが印象的な作品だった。

止まった状態の人間を殺そうとしたら止界の守護者が現れるため、気に入らない連中を皆殺しとはいかなくて(やりたいんかい)せいぜい泥棒行為しか出来ない世界ではあるものの、ちゃんと元の世界に戻る手段があるならたまに行ってみたい場所ではある。アニメの消化も楽々出来るだろうしね....あ、でも機械は止まってるのかな?.........



悪役の男が、時間が止まっていることだけに飽き足らず、周囲の時間を進めるような方法を見出そうとして主人公に阻止されるわけだが、正直実直な主人公より悪役の男がやろうとしていることの方が面白そうだと思った。自分以外の人間は止界から追い出せるのに、自分のことだけは元の世界に戻せなかった彼女が苦悩する終盤のシーンが凄く良かったし、佑河家が絆を取り戻して綺麗に収束して行くのも悪くなかったのだけれど、あの男が目論見通り世界を傍観し続ける存在になれたルートも見てみたかったのも確かだ。

まあなんにせよこの手の時間を超越したジャンルは面白い。設定次第でドラマが如何様にも化けるから。ノリの良いOPや梅津泰臣さんの趣味全開なEDも含めご馳走様でした。

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"ぼくのりりっくのぼうよみ"も以前より好きになってきた....