薬物は清く明るく逞しく「イカロス」Netflix/ドキュメンタリー/感想

またもNetflixで興味深いドキュメンタリー映画を観た。

トップ10には手が届かないものの、アマチュアの割に良い成績である自転車競技選手の男が、ドーピングをしたらどれだけ自分の身体能力が向上するか?という実験をしだすというもので、前代未聞の番組だった。




その男”ブライアン・フォーゲル”は、専門家に協力を仰ぐものの、その人が我が身可愛さに及び腰になり、代わりにと紹介されたロシアの反ドーピング機関の所長である”グレゴリー・ロドチェンコフと実験を進めてゆくことになるのだが、グレゴリーの人となりもあって序盤は明るい犯罪現場のような様相で、とても後ろ暗いことをしてるようには見えはしない。しかし実際に薬物を太ももや臀部に注射して腫れたり出血しているのを見ていると、流石に笑って居られなくなっていった。

練習中のデータだけなら、実験は大成功だった。身体能力は向上し、グレゴリーのおかげで尿検査もパスできた。しかし、成果を確かめるべく出場したレースでフォーゲルは大敗してしまう。メカニカルトラブルが大きな理由だが、それが解消された後も順位を上げられなかったのである。このドキュメンタリーの前半はドーピングしたからといっても惨めな思いからは逃れられないのだという教訓を得て終わる。



レースが無残な結果に終わった後も、二人は実験を続けていたのだが、ロシアの国ぐるみでのドーピング疑惑が持ち上がり、それに関わっていたグレゴリーは生命の危険を感じるようになってアメリカへと逃れ、全てをぶちまけ出す。ロシアの誰が指示し、どうやってドーピングをコントロールし、尿検査を突破したのかまで全てを。

それは信じ難い話だった。もしも真実なら、政府機関そのものがマフィア同然だと思った。多くのマスコミがグレゴリーの望む通りにデータをリークし、信用のおける人物のお墨付きまで彼の証言は貰っているにも関わらず、ロシアは完全否定。ドーピング機関の幹部が2人も不審死している事実から考えても、あの国は芯まで真っ黒だとしか言いようがない。



命の危険を感じ全てをぶちまけたグレゴリーも、ロシアに翻弄された可哀想な男だが、本当に可哀想なのはフェアに戦っているつもりだった一部のロシア選手達だろう。知らぬ間にドーピングに関わっていた選手もいたはずだ。このドキュメンタリーの中で、選手が五輪への出場が認められない状況への憤りを吐露している場面があるのだけれど、その時傍にいて話を聴いているプーチンの表情がなんとも言えなかった。あのバツの悪そうな顔は言いたいけど言えないことがある時の顔である。

彼にも良心というやつがあるのだろう。他国がどうなろうと関係ないが、愛すべき自国の民が自分達のやったことで苦しんでいるのだから、辛くないはずがない。これで少しは懲りて欲しいものだが、これでダメなら更に巧妙なドーピング技術を身につけようとか考えているんでしょうな......

IMG_7339.jpg

IMG_7346.jpg