堅苦しく書いているけど、要するに爺ちゃんに可愛がって欲しかっただけの俺「アリスと蔵六」今井哲也(原作)/桜美かつし(監督)/高山文彦(シリーズ構成)/J.C.STAFF/感想

僕は”祖父”という物を見たことがない。

1人は僕が物心つく前に亡くなり、また1人は父が子供の頃に祖母とは別の女性と消えた。



こんな風に書くと、下手に同情されることもあるわけだけど、当の本人からすると祖父というのは両親と違い、初めから居ないとなるとそれが当たり前になってしまうし、周囲から悪く言われるようなことも無かったから特に気にしていなかった。自分の親が蒸発した父の方が、よほど傷は深いに違い無い。僕などが被った迷惑は、せいぜいお年玉の額が少なかったことくらいだろう。

ただ、時々、祖父が居たらどうだったのだろう?と考えないでも無い。祖父に対し嫌悪を抱いている父もまた、それほど良い父親とは言えない人で、子供の頃あまり構ってもらった記憶がない。平日は仕事だと言って遅くまで帰って来ないし、日曜はパチンコに入り浸り。家に居ても自分が気が向いた時だけ子供を構うだけ。いつの間にか居ても居なくても構わない、そんな存在になっていた。父の父がまともな人であったなら、父も僕ももう少しマシな人間になっていたのではないかと思ってしまうのだ。



風の噂で不貞を働いた祖父も亡くなったと聞いた。時が経って父に対する蟠りがだいぶ薄らいだように、父も祖父に対する怒りは和らいだかもしれない。血筋のせいにしても仕方ない話だが、血を完全に無視出来るわけもないから困ったものである。

”蔵六”という家族を手にいれた”紗名”を見ていたら、そんな取り留めのないことを考えてしまった。




自分の想像した世界を物理的に具現化出来る少女”紗名”が、自分の力を利用しようとする連中の元から逃げ出し、頑固一徹な”蔵六”と出会って、人として成長してゆく優しい物語だった。

前半はバトル物の様相を呈しているものの、終盤は力を持て余す少女達の心模様をじっくりやっているため、かなり視聴者は振るい落とされたのでは無いかと思った(個人的には最高の幕引きだと感じた)危うい少女達の闇を、あっさり祓う蔵六の深い優しさに、紗名でなくとも泣きそうだった(実際には泣いた)

終盤の仕上がりはシリーズ構成を勤めた高山文彦おじさんの色が強く出ていた。誰も死なない展開なのに、無駄に人が死ぬ作品より空気を重く感じたし、最後に残る切なさの質感も高山さんの匂いがしたように思う。流石は林原めぐみに「仙人」と言わしめた伝説の人である。

コトリンゴのEDも素晴らしい



あまり気にしていないつもりでも、心の何処かでは祖父という存在に興味があるのかもしれない(渋いおじさんや融通の効かない爺いキャラが大好きなのも、その反動か....)僕も蔵六爺さんのような人に生き方を教わりたかった。いじけた根性を叩き直してくれたことだろう。

もう高校生の子供が居てもおかしくない年齢でありながら、何を言っているのだろうと我ながら苦々しく思うけれど、大人だの子供だのという線引きは無益なのだと、人生も折り返し地点に到達する今ならはっきり言える。年老いることで身体や精神は確かに草臥れる。でもただそれだけの話なのだ。年を重ねるだけで偉くなれるというのなら、日本における高齢者の扱いも、もっと素晴らしいものになっているはずである。




完全な人になる必要もないし、大人になる必要もない。

ただ、当たり前のことを大事に出来る人間でありたい。そんな風に思わせてくれる作品だった。

それだけは間違いない。












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