我が青春のOVA1987 #5「ブラックマジック M-66」士郎正宗/北久保弘之/感想

「ブラックマジック M-66」は、今年実写版まで公開された攻殻機動隊の原作者”士郎正宗”氏の漫画を元に作られたOVA。

もはや作品が一人歩きしている感がある攻殻機動隊に比べ、本作は実に士郎正宗さんのテイストで溢れている。







主人公は服を着るのも忘れて特ダネを狙う女性ジャーナリスト。軍の慌ただしい様子を察知した彼女は、軍のヘリが落ちた現場へ急行し、軍の開発中の兵器が暴走したことを知る。そして柄にもなくジャーナリストの本分を忘れ兵器にターゲットとして登録された少女を助けるべく奮闘するといった内容なのだけど、古い作品の割に軍の対処の仕方のディティールがしっかりしているし、暴走したロボットの機密保全の為の証拠隠滅に至る過程まで今見ても感心してしまう。

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服は忘れてもカメラは忘れないシーゲル

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彼女のネタのおこぼれに預かりたいリチャードとは良いコンビ



始めはクマや人間を襲い、止めようと動く軍人を無表情で薙ぎ払っているものだからM-66に対する怖さが勝っているものの、いかついロボットよりスリムなフォルムで髪まで生えている姿も相まって終盤にはプログラムに従わされているだけの可哀想な存在に思えて来たりもする。普通なら暴走を招いた軍が悪者になるところを、それぞれがそれぞれの立場で最善を尽くそうとしているだけなのだと描写しているのも悪くない。

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M-66の生みの親たち

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気持ち良く笑う兵士のおっさん(CV 若本規夫)

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回収部隊の隊長(左)厳しい判断も下す堅物だが、最後には話が分かる渋い叔父様



後はそう、戦うジャーナリストを榊原良子さんが演っているから思わずSACやパトレイバーの暴走ネタが観たくなってしまうし、随所で良いカメラアングルのシーンがあり実写演出の意識が高い作品だとも思った。

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山で逃げ惑う男達

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自分に効果のある装置を持ったシーゲルとM-66が睨めっこするシーン


富野由悠季さんや押井守さんもそうだけど、本当は実写が撮りたかったけど様々な事情でアニメにたどり着いた人も多い中、本作の監督を務めた北久保弘之さんは実写への欲求はそれほど無いと語り、こんなことをTwitterに書いていたのも印象的だった。











本作を観ていたら、高校生の頃レンタルショップでアニメを借り漁っていたのを思い出す(本作もその頃出逢った) 当時としては珍しかった旧作100円の日があるお店で、借りる事の出来る限界までVHSをカウンターに持ち込んでいたものだ。

何もかもが「新しい」と感じられる時期はあっという間に終わるものだから、早いうちに古い物にも触れて欲しい。偉大に思える先駆者にもお手本が大抵いるものだし、古い物がイコールベストではない。ただ、大勢が今「新しい」と感じる物の源流に"訳者"を通さず触れることにはきっと意味があるような気がするのだ。


遡れば実写でも書籍でもキリは無いが、時間の許す限り元となった存在に僕も触れてみたいし、気が向いたら皆も触れてみたら良いんじゃないかと思った








関連過去記事
『我が青春のOVA1987 #4「超時空要塞マクロス Flash Back 2012」』