もう"新海誠って誰?"とは言われなくなった。でもその代償は?...「君の名は。」新海誠(著)/角川書店

kindleで小説を読んだのは久方振りだった。やっぱりなんだか味気ない。


漫画の電子版と異なり、小説の電子書籍化はKindle用に書式を整えるため変換されているように思うのだけど、実際紙媒体との違い(字間・行間とかフォントの味わい)はどれくらいの物なのだろう? もしも大差無いであれば、新海誠は小説家としてまだまだなのかもしれない。場面転換の仕方や瀧くんと三葉のモノローグが交互に入るシーンなどの文字表現が、映画を見た後の人ならすんなり理解出来るものの、小説から入った人ならピンと来ないのでは無いかと感じた。劇場で刺さったシーンを思い出し、しんみりしたり笑ったりするには凄く良い本。でも単体の作品としては物足りない。まるで絵の無いフィルムブックみたいな手応えの本だった。


あとやっぱり、二人は最後すれ違いで終わって欲しかった。そうすれば僕は映画館で号泣していたと思う。叶う想いより叶わない想いの方が重く感じるのだ。あの最後の盛り上げどころが大いなる蛇足に感じた人も少なからず居るのでは無いかと思う。未だにナウシカを生き返らせたラストシーンが正解だったのかどうか脳裏をよぎることがある宮崎駿のように、新海誠もここで終わらせておけば良かったかな?と思う日が来るのだろうか?





ユーリ!!! on ICEの仕上がりについ注文を付けたくなったのと同じで、良い作品だからこそ些細な点が心に引っかかってしまうのは僕の悪い癖だ。君の名はの制作において、沢山の出逢いを果たし変わってしまった新海誠。これからも面白い映画は撮るのは間違いないが、もうあの頃の掛け替えのない手触りは彼から産まれないんだろうな、と思うとどうしても小言が溢れてしまう。ここまで世間一般に受けた1番の理由は川村元気さんなんでしょう。同時に新海を普通の監督にしてしまったのも川村元気さんだ。


無論これは良い悪いの話では無い。どんな作り手も同じ物を同じように作るなんて楽しいわけもなく、変わろう、変わりたい、認められたい、認めさせたい、もっと上手くなりたい、もっともっと上手くなりたい、そう考えるうちに作る物の姿も変化するのが普通なのだ。ただ昔の彼を好きだった人はそりゃ寂しい気持ちが芽生える。それも避けられない話。自分の感情さえままならないのが人間なのだから、人様の感情に口を出しするなんて愚の骨頂でしか無いのに、それでも恨み言を言いたくなる自分の狭量な心にも寂しさを覚える。



 しっかり名前を覚えて貰った今こそ、もっと個人的な味わいを出した作品で勝負しても大丈夫な気がするが、もう周囲がそれを許さないでしょうね.....変なプレッシャーの前に壊れて欲しく無い男です新海誠。










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