永遠は眩しい太陽、では無いと思う歳になった....「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」重松清(著)/感想

 今では当たり前のように消費・歪曲されている異世界ファンタジーを、初めて”それと”意識したアニメは「ロードス島戦記」だった。剣と魔法を以って多種族が絡み合う世界観が実に重厚で、VHSのテープが擦り切れそうなくらい何度も観た。世界観構築に「指輪物語」を参考にしただけのことはある。


 そのロードス島戦記には麗しいハイエルフが登場する。永遠に近しい寿命を持つらしい彼女だが種族の中では年少で、見た目も17~19歳。僕はそんな何から何まで持ち合わせている彼女が羨ましかった。そんなに長生き出来るのならば、せかせか生きる必要もなく、ゲームや漫画を楽しみ放題だと思ったのだ。



 しかしそれから20年以上が経って実感するのは、人生は短いようで結構長くて疲れるということ。そして終わる恐怖より終わらない恐怖の方が重そうだということだった。たかが40年にも満たない人生を過ごしただけで、こんなに世の中や自分にがっかりしてしまうのだから、何百年も生きていたら死より恐ろしい体験が待っていそうである...





 ”永遠を旅する者”


 「ロストオデッセイ」は、そんな異名が相応しい不老不死の男が主役のRPGで、FFの生みの親”坂口 博信”さん製作総指揮のもと、キャラデザに”井上雄彦”、音楽はFFに引き続き”植松伸夫”さん、そして死ねない男の過去を紐解くサイドエピソードを”重松清”さんが担当。重松さんの綴るそれらの短いエピソードを一冊にまとめた物が「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」だった。


 ロストオデッセイ自体はまともにクリアしていないため、何故彼が死なない、老けないのか理由は知らないものの、重松清さんの書く千年の夢を読んだことによって、生き長らえることの辛さ、苦さは存分に味わえた。素朴な町の素朴な住民の悩みから、治る見込みの無い病に侵された少女や、将軍に祭り上げられた男の苦しみまで、長いスパンで人や町を観測し続けることが出来るカイムならではのベタなストーリーの数々に何度もジーンと目頭に来た。


フィールドを歩き回っていると、ふとカイムの古い記憶が蘇る瞬間があり、それを千年の夢と称して楽しんで下さいという趣旨だったわけだが、そこだけ容量不足だったのかムービーではなくテキストだけ(文字が軽くアニメーションする)になるため、ゲーム本編とは直接的な繋がりも無いから飛ばしてしまうプレイヤーも多かったのではなかろうか?僕は正直こちらの方がゲーム本編より面白いと思った。壮大な展開より、ありふれた出会いと別れが長い年月をかけ熟成された想いへと成長して行く千年の夢の方が、永遠の命を持つ者の物語に相応しいと思うのだ。


時代も場所も違うのに何もかも変わらない、変われない男を軸に、一つ一つは関連性が無さそうでありながら、いつの間にか大きな意味を成している。そんなストーリーを味わいたかった。戦いだけがRPGの醍醐味では無いのだから。







これが初めて読む重松清作品で良かったかどうかはわからないが、この本を読んで本当に良かった。おそらくロストオデッセイはクリアせずに終わるだろうから。


派手なOPからシームレスに最初の戦闘が始まる冒頭は本当に素晴らしいと感じたし、Xbox Oneの後方互換のおかげでネックだったロード時間も解消されヤル気さえあればサクッとクリア出来そうではあるものの、遺憾せんエルフじゃない僕には時間も体力も足りない。




やっぱり辛くてもカイムのように永遠の命があった方が良かったかな?