2016年10月23日

僕の名前なんて、どうでも良いよ......「君の名は」新海誠/感想

※少しだけネタバレ有り






 丁度ひと月ほど前『僕は”君の名は”を観に行かない』と、公言していた。

 でも、あの優秀な人材の坩堝で生まれた作品を劇場で観ないなんて、やっぱり出来なかった。臆病な自分を部屋から引っ張り出して、カップルが何組も居るであろう君の名はを観に行く覚悟を決めた....

 公開からだいぶ経っているうえ、雨の日だからお客は少なかった。10人前後である。そのうちカップルが4組。やはり恋愛映画を劇場で観るのはぼっちには苦行だ.....



 公開初日に行き損なってから、メディアの取り上げ方の大きさに嫌気がさし、更に行き辛くなったものの、結果的に観ることが出来て良かったような、良くなかったような、観終わった時は複雑な気分だった。事前に予測していた展開に近い内容だったから、世の中が煽るほど”あの”真相には驚かなかったものの、観る前に思っていた(一般受けの為に、これまでの作家性を失っているのでは無いか?)ことのほとんどが杞憂に過ぎず、なんだ、ちゃんと俺の知ってる新海誠が居る(フェチ心を擽ぐる女性の見せ方、秘めた想いがなかなか伝えられないもどかしさ、やけに染みる風景)...と、感じられたことは良かったのだけど、やはり代償無しにこの成功は成し得なかったようで、形容し難いモヤモヤが僕の心を鷲掴みにして離してくれなかった。

 帰宅後、このモヤモヤの正体はなんなのだろうとひたすら考えた。童貞を捨てて大人に(インディーズからメジャーに)なろうと彼がしたから?あえて悲恋を捨ててハッピーエンドだったから?新海誠の才能だけでなく大勢の才能(製作陣では凄腕の安藤雅司と田中将賀、音楽では若者に絶大な支持のある”RADWIMPS”、一人一人が主役を張れる役者達”神木隆之介・上白石萌音・長澤まさみ・市原悦子”、その脇をガッチリ固める豪華な声優陣”悠木碧・島崎信長・石川界人・大原さやか・花澤香菜”)が目立つ作品だったから?

 結局、一番大きな理由は悲恋では無かったことかもしれない。これまで何度も”叶わない想い”の綺麗さを描いて来た新海誠が、本気でそれを叶えたくなって生まれたのが「君の名は」で、その変化を大勢が諸手を挙げて祝福し、その輪に入って行けない少数派の一人である僕は童貞臭をぷんぷんさせつつその場に蹲ったということなのだろう。自作がなかなか一般人に受け入れて貰えない新海誠の忸怩たる想いが、作中の恋愛模様にも大きく反映されていたように思う。これまでの彼ならラストの階段のシーンではなく、少し手前のお互い気付きそうで気付かないもどかしいシーンでカメラが引いて静かに終わったんじゃなかろうか?



 これが初めての新海誠作品だった人達は幸せだろう。何をとっても完成度がとても高いから。冒頭の彗星が落ちて来る短い作画だけでも素晴らしかった。三葉と四葉のやり取りも最高に笑えた。日本の伝統文化が醸し出す雰囲気の描き方も凄過ぎた。入れ替わりした時の演技も役者・作画共によく練られたものになっていて本当に感心した。あちこちに魅力が点在していた。

 僕の場合は、ただただ酷く個人的な感情が没入感を阻害しただけの話だった。彼が僕だけのために合わせて映画を撮ってくれているわけではないのだから、自分の大きな欠陥こそなんとかしないと、これから先も同じような思いを僕はすることになるのだろう。スクリーンの中で幸せになる男女を見て、いちいちため息をつきつつ憤ったところで、誰も幸せになりはしないのだから。良い意味でも悪い意味でも溜め息が止まらず、他省ではなく自省が急務だと思わされる映画だった。




 やっぱり観なきゃ良かったかな?

 ぼっちは鬱入る人も少なくないでしょう。

 出来の良い恋愛物ほど童貞を殺す物は無いな........








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posted by lain at 11:38 | 北海道 ☔ | アニメ 劇場版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする