これは懐古主義じゃない。漢の美学だ。「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」虚淵玄(原案・脚本・総監修)/感想

僕が素直にアニメを楽しんでいた時代から長い時が過ぎ、今じゃ題材や言葉使いもまるで別の国に来たみたいに様変わりした。近年の作品でセリフやシチュエーションに違和感を覚えない作品はほぼ皆無で、僕が老いて来たことを差し引いてもお釣りが来るくらい物語と言葉がディスカウントされている印象がある。

そんな折、PCゲーム畑からアニメ業界へと踏み込み大成功を収めて来た”虚淵 玄”がまさかの人形劇を放り込んで来た。流浪の剣客が訳有りの女性を助け、一癖も二癖もある連中と共に悪者を懲らしめに行く、と言うのが大雑把な内容だが、ラスボスまで雪崩れ込むまでの揺さぶり方が実に堂に入っていて気持ち良い。少し古めかしいくらいの虚淵節が見事なまでに世界観にマッチしていた。




豊かな表情を浮かべる人形達の細かな動きから、少々グロいまでのアクションシーンの切れ味まで、隅々からスタッフの優秀さが伝わり下手なアニメの何倍も面白く、脚本家としてでなく演出家としての手腕も虚淵さんにはあるなとつくづく思った。時代は3DCGに傾きつつあるわけだけど、どんな先端技術よりも、もっともアナログな場所にこそ表現の基礎があり、それが廃れることは無いのだと実感出来たことも嬉しかった。


人形劇だからと云って観るのを止めた人は実に勿体無い。同じベタならこれくらい格好の良いベタを若いクリエイターにはやって欲しいし、是非見て欲しい。

そうすれば自分たちがいかに矮小な物作りをしているか思い知るだろうから.......