裏の仕組みは知らないより知った方が良い?!「ウイナーズサークルへようこそ」甲斐谷忍/集英社/感想

長いスパン同じ作者の漫画を読んでいると

「この人自分でお話し考えない方が良いのでは?」

などとつい思ってしまう事がある。


有名なところで言うと「北斗の拳」の”原哲夫”や、マクロスでお馴染みの”美樹本晴彦”氏、「ヒカルの碁」「デスノート」の”小畑健”さんもそうかもしれない。たまたまかもしれないが、キャラ絵に拘りを感じる漫画家さんに多い気がする。

ただ、上にあげた御三方原作のストーリーが全て駄目かと言えば、そうでも無い。個人的には小畑健さんが"土方茂"と名乗っていた時代の「CYBORGじいちゃんG」は大好きだったし、派手さ無くとも美樹本さんのオリジナル作品は温かくてちょっぴり切ない空気感が凄く良かった。所謂売れ筋から外れると言うだけで、普通に面白味を感じる面も必ず有る。逆に原作付きでも絵と噛み合わず最悪の相乗効果へと繋がるなんてのもざらだ。漫画家としては隅々まで自分色に染めたいに違い無いが儘ならないものである。



そういった面から甲斐谷さんを見つめてみると、実は少し複雑な気持ちになる。あれは高校時代だったろうか?汽車待ちの為に駅の売店で時間を潰していて見つけたのが「ソムリエ」だった。ワインに対する味覚が天才的な主人公がワインの世界で活躍しつつ己と向き合うことになる作品で、まだ未成年なのに無性にワインが飲みたくなったものだった。

一度好きになると、全ての作品を追いたくなるもこで、普通にその後も甲斐谷作品を読み続けた。直球しか投げないが、回転数を意図的にコントロールすることで三振の山を築き、アウトひとつで500万、1点取られたらマイナス5000万と言う契約を願い出るアウトローが主人公の「ONE OUTS」や、甲斐谷氏の名前を一般的なレベルにまで広めた「LIAR GAME」も然り。普段意識することの無い世界の裏側の下衆さを存分にエンターテイメントへ昇華しているのが面白かった。

しかし、何時しかそんな下衆い世界の話が胃にもたれるようになり、ここ数年彼の本は買っても読まなくなっていた。甲斐谷作品で数字のトリックを知れば知るほど、地道に汗をかいて働いている自分を惨めに感じるようになったからかもしれない。今回たまたま”となりのヤングジャンプ”で「ウイナーズサークルへようこそ」を読まなければ、更に氏から遠ざかっていたはずだ。

久しぶりの甲斐谷作品は相変わらず下衆くて面白い。ずぶの素人である青年が隠れた才能を発揮し、それに気付いたとある競馬サークルの面々が彼を上手く誘導して馬券回収率を上げようと四苦八苦するものの、マイペースで天然100%の青年に振り回されるという構図が微笑ましくてたまらない。





元より下衆い世界である競馬が題材で、主人公が数字のトリックでは無く馬体を感覚的に見抜き馬券を当てて行くスタイルであるのが功を奏したのか、実に読んでいて楽しかった。

好きになったのが原作付きの「ソムリエ」からでなければ、こんなに回り道をせず戻って来れたのだろうか?単純に時の流れのおかげなのか?


『好き』が何故こんなに揺らぐのかを得意の数字で甲斐谷さんに描いて貰いたいとふと思った。








となりのヤングジャンプ http://tonarinoyj.jp/manga/winnerscircle/