僕の瞳は無い物しか映らない鏡「少年は荒野をめざす」吉野朔実/集英社/感想

幼い頃の僕の世界は、バスで往復する幼稚園までの道程と、自宅から半径100mだった。

近所に店もなく、唯一のお隣さんも田んぼ越し。もう少し離れたところに祖母の家があることを除けば、実に静かな場所だ。

そうなってくると、遊び相手も必然的に身内へ求めるようになるもので、二人いる姉にべったり張り付き遊びに入れて入れてといつも必死。やっと仲間に入れて貰えても、男である僕の感性が姉達には気に入らなかったのか、最後にはのけ者にされ一人遊びばかり上手くなっていった。ぬいぐるみも人形も大好きだったのに、何がいけなかったのだろう?....

小学校に上がり、性的な衝動を知ってからも、姉達と自分が何故違うのか疑問だった。肥満までいかなくとも、若干ぽっちゃりした体つきで胸もあったし、色白で声も高めだったから、いつか自分は姉達のようになって行くんだ、くらいに思っていた時期もあった。別に男の子が好きだったわけでは無いけれど、運動も苦手でゲーム機も無かったから男子の遊びにも上手く入っていけず、無い物ねだりを拗らせ女性への憧れも加速度的に捻れていったということだと思う。今でもなれるものなら我が儘で短絡的で欲求に素直(褒め言葉)な女性になりたい。こういうのもトラウマというのだろうか?




こんな取り留めも無いことを書いてしまうのも、うっかり、吉野朔実さんの「少年は荒野をめざす」を読んでしまったからだ。中3年の少女”狩野都”が、自分にそっくりな男子高校生”黄味島陸”と出会い、幼い頃病弱だった兄の分まで男の子らしく過ごしていた昔の自分の成長した姿を彼に重ねてしまい、男女のそれではない憧れや嫉妬が綯い交ぜの感情を募らせてゆくお話なのだけど、狩野と元々仲の良かった二人の少年との距離感の変化や、他人に理解されない博愛っぷりを見せる黄味島の危うい魅力も相俟って、なんとも言えない空間に放り込まれた気分になる。

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幼い頃の経験を書き起こした作品が賞を獲ってしまうくらいの才能を持つ狩野の頭の中にいるみたいに、詩的で間合いがとても良い漫画で、少し前にアニメが放送していた某エロゲー(少女たちは荒野を(以下略))とはえらい違いだった。全6巻まであるそうだが、1巻で完結でも文句無しの仕上がりだと思った。集英社さんは、少年誌だとバトルばかりで大味だが、少女誌になると実にじっくりと感情と向き合った作品が多くて素敵だ。
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無料だから読んだ。ただそれだけで終わらせたくなくなる本をありがとうございます吉野朔実先生。

もしも、昔読んでいたのに忘れただけだったらごめんなさいo┐ペコリ

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