2016年06月15日

Mの世界は広大だわ....「χの悲劇」森博嗣/講談社/感想

 『人の格差を技術が作り出す。技術を手にした者は、社会人を容易にコントロールすることが可能になった。』


 前回の「キウイγは時計仕掛け」では、一旦核心(真賀田四季)から離れ、またGシリーズらしい同窓会色が強かったから、ちょと肩透かしをくらったところがあったものの、今回の「χの悲劇」は同窓会気分だけでなく、これまで(S&M、Vシリーズ等)繋がることが無かった点に光を当てている為、点と点が結びついて美しい星座となり素晴らしい風景でした。

 相も変わらず再読する暇を作れないような読者なので、やっぱりこの人どういう人だったっけ?と思い出すところから始めなければならない面もありましたが、なんと言っても島田文子さんが主役であることで絶妙な軽口を楽しめたり、Wシリーズとの親和性を感じずにいられないネットワーク表現がすこぶる気持ち良くて最後まで楽しかった。それに、その昔色々とあった島田さんの話ということで、あの方が我々信者の前に降臨なされたことも喜ばしく、ちょっとした驚きと共に島田さんをお救い下さり、我々一同感謝の念に堪えません(なんかヤバイ人っぽい)

 これまでのシリーズを知っていれば+αで楽しめるだろうし、そうで無くとも少し未来のお話としてしっかり楽しめる構造になっているから、ここから一連のシリーズに雪崩れ込むのもありなのかもしれない。 にしても、やはり活字ならではのミスリードが上手いお人だ森先生。島田さんが書かれている通りの◯◯だったとして、Wシリーズなどとの繋がりを考えると見た目は◯◯通りで無い可能性もあるし、この人物は一体誰なのか?と会話の端々から読者があれこれ妄想を膨らませられるような余地の残し方に年季を感じる。そんじゃそこらの”言葉中毒”な若い作家には出せない匙加減では無いだろうか?




 思っていた以上に長いシリーズになりそうなGシリーズ。次は一体誰が悲劇を演じるのか?

 少々悪趣味な期待に胸踊ってしまう我々の森博嗣信仰は、つくづく度し難い......




タグ:森博嗣
posted by lain at 07:06 | 北海道 ☔ | Comment(0) | 小説 森博嗣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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