変わりたく無い者から、変わり行く者へ「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」押井守(監督)/感想

僕の小さな頃は、まだまだアニメ=子供の観る物だった。

既に社会現象にまでなったガンダムのような大人も楽しめる作品はあったけれど、寅さんやハリウッドの大作のように幅広く愛される存在では無かったのだ。

だから現代において、特別オタクでも無い人達にアニメや2次元キャラが受け入れられていることには違和感を隠せないし、今じゃ当たり前に見掛ける行政が2次元キャラをキャンペーンに使うなんてのも慣れない。




一般の親の考え方かどうか、他の親に育てられた事が無いから分からないけれど、うちの親は教育上のことを考えてか、アニメはアンパンマン・日本昔話・世界名作劇場といった、一般的なモラルを扱った作品だけ僕らに許していて、ヒーロー物さえ全然見たことが無かった。中学に上がった辺りから、ビデオデッキを使わせて貰えるようになり、親が居ない時にあれこれと観出すようになってやっとアニメの世界がググッと広がった記憶があります。

中でもBSで取り上げられていた長編の数々には本当に僕の人生を左右するような力があり、「王立宇宙軍オネアミスの翼」「AKIRA」「逆襲のシャア」等々、失った時間を取り戻す勢いで中・高とアニメを観漁ったものです。



「機動警察パトレイバー」もそんな作品の一つでした。TVシリーズもまともに観たことも無いまま、the Movieの2作品を見たのですが、一言も発せずブラウン管に釘づけでした。真っ赤に燃える不穏な夕焼け。不敵な笑みを浮かべて飛び降りる男と鴉の羽音。その後も続く不安感を煽る演出やらストーリー展開やらで、第2小隊の面々同様”帆場暎一”に振り回されパトレイバーの世界にドップリ首まで浸かり、更に押井守監督の作家性が色濃く反映された2作品目の醸し出すリアリティにガツンと打ちのめされたものです。


昨日ようやく、そのパトレイバーの実写版である『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』を観たのですが、このシリーズが始まった時に感じたままの残念さが最後まで付きまとっていた気がしました。時系列的にはアニメ版the Movie2から繋がっているストーリーなのに、あえて初代のメンバーに似た名前を登場人物に付けたり、シチュエーションを近付けたりしていて、過去作品を知る人へのサービスのつもりなのかもしれませんが、おかげで最終回の柘植のやったことをもう一度やろうとする一派とそれに対処する第2小隊の対応の仕方に新鮮さをまるで感じられませんでした。完全に新しいキャラと新しい脚本を用意し、後藤さんの名シーンを真似るような要素はなるべく最小限に留めて欲しかったです。オリジナルのエピソードや「ダンジョン再び」の続編にあたるエピソードが面白かっただけに、締め括りはもっとオリジナルであって欲しかった。ガンダムSEEDを観た時と同じく、良い面があるからこそ過去作品を彷彿とさせるシチュエーションが僕の中では命取りになったように思います。

首都決戦で唯一良かったのはやはり南雲さんでしょう。顔を映さず、"榊原良子"さんが声をあてていたのもミステリアスで美味しかった。後藤さんは結局出て来なかったが、南雲さんの登場で、きっと後藤さんも何処かでこの状況を見ているんだろうな...と思わせてくれただけで十分だったのかもしれない。




何もかも駄目だったかと言えば、そんな事も無い実写化でしたが、素直に喜べるほど無邪気でも無いし、パトレイバーの可能性を諦めているわけでも無いので、アニメより実写に興味を移した押井さんよりもっと本気でパトレイバーを撮りたい人の登場を期待してしまうし、押井さんには久々の実写「GARM WARS」の方で本来の切れ味を期待しています。


変わらない者も、変われない者もこの世には居ません。常に我々はそれと気付かなくとも変化しているのです。

でも、だからこそ変わりたく無いと思ってしまうのも、人情なんでしょうね。ついそんな事を思ってしまう映画でした。

この記事へのコメント