清く明るく逞しくっ「キラリティ[chirality]」大石まさる/少年画報社/感想

 ぱっと見、まるで宇宙を感じさせないのに、中身を読めばバリバリSFしてるのは前回の「ライプニッツ」と同じで、今回はとてもレトロフューチャーなファンタジー作品を匂わせる表紙だった。


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”今から遠い遠い未来、人は星の海遥か彼方へと辿り着いていた。火星と木星の間に横たわる小惑星帯で生まれた双子は、「ある目的」のため偽造の身分を手に入れて、月から出るスペースコロニー運搬船・「ドゥルガー10」に乗り込むが?....”
※裏表紙より抜粋






 表紙には前回に引き続き猫の”ライプニッツ”が描かれているが、直接的な繋がりは得に無く、特殊な地球外生命体と意識を共にするようになったライプニッツは騒動を観察しているだけの存在になっており、本作単品で読んでも十分楽しめる作品でした。何より地球から遥か彼方へ進出した人類の三代目だと言う主人公の双子の居住スペースが実に懐古趣味で良い。未来へ飛び立ったはずの先先代の想いが1、2週し、彼らが自然と懐かしく感じる場所を求めるようになっているのが伝わって来ます(ただ最新の物を買えないだけかもしれないw)

 辺境に住むと言うことの苦労を物ともしないどころか、その故郷を明るく飛び出して、自分達の未来を掴みに行く双子の姿は妙に清々しい。月に着いた二人が水が地べたに張り付いている事を茶化したり、どんぐりを見つけて大喜びしたり、何かにつけて感動するのを見ていると、こちらまで幸せな気分にさせられるから不思議だ。

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 離れていても感覚を強く共有出来る二人が、まんまと潜り込んだ宇宙船で入れ替わり生活を送るのも楽しかった。片方が女だとバレたら、双子の男の方は男のふりをした女を演じなければならないし、一方が何処か殴られたら、また一方もそれに合わせて傷を付けねばならなくなる。辻褄合わせは大変そうだが、彼らの生活は一粒で2度惜しいような所もあって、もしも僕が双子でも1度は試すでしょうね。

 にしても、絶対に隠し事が出来ない存在が身近にいるだなんて、ストレスで死にたくなるんじゃないかと常人の僕などは思ってしまうが、この二人は全然苦にしていなかった。小惑星帯に人が住んでいるとか、船でコロニーを運ぶだとか、がっつりしたSF要素があちこちにあると言うのに、この"共感覚"と言うやつが最後まで彼らの陽気さを奪わなかった事が一番SFだったかもしれない。

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 物語は単純に田舎者が都会に憧れる話に留まらず、SFに付き物の開拓魂と言うか独立独歩の精神へと波及し、ハードなSF作品なら宇宙戦争勃発へと壮大に展開するところだが、”大石まさる”さんのSFは優しい収束を迎えるのがまた良い。前回の主人公と同じく、ガッシリした身体つきの眼鏡ヒロインや、既に数冊付き合って来たように感じてしまう個性的な面々も魅力的であったし、今から次回作への期待が膨らんでしまいます。

 一体全体、次はどんな未来にライプニッツが誘ってくれるのだろう?

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