どんな過去も、現在の自分に欠かせない宝物「ヒルコ/妖怪ハンター」諸星大二郎(原作)/塚本晋也(監督)/感想

「KOTOKO」「野火」と観て来て、いよいよ自分が塚本晋也監督作品が好きであると確信した僕は、手始めに直ぐ観始める事が出来る「鉄男」から時系列に沿って鑑賞してみることにした。

最初に観た「鉄男」は噂通り面白く、これぞ原点と感じさせるに十分な作品だった。が、当然名作の裏には駄作があるもので、次に観た本作「ヒルコ/妖怪ハンター」は微妙な面が強かったかもしれない。






実際に読んだことは無いが、大勢のクリエーターが氏の影響を受けていると言うから、きっと間接的に触れているに違い無い”諸星大二郎”先生の「妖怪ハンター」を映画化するに際し、塚本晋也監督に白刃の矢が立ったようなのだけど、お金の面や知名度の高い役者の確保、そして機材に人材、様々な物が揃い過ぎて逆に自由に撮る面白さが損なわれ、ちょっと笑える普通のホラー映画になっていた。塚本晋也の無駄使いであります。

考古学に詳しい中学校の教諭"八部が、ヒルコの遺跡を開放してしまい、そこから解き放たれたヒルコが学校で生徒達を血祭りにし始め、八部の後輩でヘタレ考古学者の”稗田”はハ部の息子と共にヒルコを封印しようと奔走する、という内容なのだけど、ヘタレな考古学者を沢田研二が面白く演じていたこと、どんな映画のどんな役でもブレない存在感を放つ”竹中直人”が居たこと、そして「ぼくらの七日間戦争」でも共演している”室田 日出男”と”工藤正貴”(工藤夕貴の弟)が出ていたこと、この三つが個人的に大きかった。時折塚本晋也監督らしいシーンもあったが、ほとんど役者を活かす為の犠牲に終わっていて、いざ見せ場になったところでも、思っていたような効果が得られない合成映像になっていて物足りない。CGが当たり前の今観ているからそう感じるのかもしれないけれど。


ただ一つ凄く塚本監督らしくて好きなシーンがあった。ハ部の息子が密かに想いを寄せていた女学生の首を利用しているヒルコをなんとか足止めしようと稗田がダンボールを使ったゴキブリホイホイならぬヒルコホイホイを作り、そこにまんまとヒルコが入ってしまってダンボールに空いた穴から懇願するような表情を浮かべるところである。散々男子中学生の命を弄んだ輩の媚びた様子に思わず萌えてしまった。どんな陰惨な展開でも笑いを忘れないスタイルは、メタルギアの小島秀夫監督にも大きく影響を与えたことだろう。





おそらく塚本監督のファン以外、観る必要も無い作品だ。ファンさえも黒歴史扱いである。

だが、こうした作品を手掛けることで得たお金を塚本監督は次の自分のやりたい映画に繋げて行ったのであり、良いことも悪いことも吸収して野火へと昇華されたのだと思えば、絶対に避けて通れない映画だったと言える。メジャーな世界も知らないでインディーズに居座り続けていたら、一生掛けても見れない光景というのも有るに違い無い。



今更ついでに言えば、諸星大二郎先生の原作をちゃんと読みたくなる反面教師な作品でしたね。









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