無様に屈する僕の鉄錆を誰か喰らって下さい「鉄男」塚本晋也(監督・脚本・美術・照明・特撮・編集)/田口トモロヲ(主演)/感想

昨夜はいつもよりディティールの細かい変な夢だった。

様子のおかしい人々の群れを乗り物で振り切り、仲間との合流地点であるしばらく使われて居ない建物へ逃げ延び、皆と一息つきながらあれこれし始めるのだが、僕はじっと大きなシラミのような生き物が建物の穴から出たり入ったりしてるのから眼が離せずにいるところで夢が終わった。大変疲れる夢である....



何故夢を見るのか?という問いには、完璧な答えは実はまだ無い。心を休ませる為に見せているだとか、願望が反映されているのだとか、日常生活で散らかった脳内の情報を最適化し整理する際に生まれる幻だと言う人までいる。それらすべてが正しいかもしれないし、そうじゃない可能性もあるが、ただ一つ確かなことは夢の中で常識は通用しないということ。羽や推進剤が無くとも空を飛べるし、童貞だってセックスが出来る。人だって殺せるし、殺されることも出来る。

そう考えるとなんでもやりたい放題でサイコーじゃん!と思えなくも無いが、大概は支離滅裂で自分の思い通りの夢を見ることなど出来ず右に左に振り回され(僕の子供頃は意識的にどんな夢を見るか寝る前に考え、実際その通りの設定の夢を見ていた。一度目覚めても続きを見ることも出来た)、あまりに幸せな夢を見てしまった時などは目覚めた時の虚しさに押し潰されそうにもなる。夢を見るのが有益か無益か考えると、差し引きゼロなのかもしれない。



そんな見たいけど見たく無いような夢の不思議な魅力を映像に起こすのが得意な人達が世の中には居る。アニメ業界で言うと「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の”押井守”さんや、「千年女優」「妄想代理人」などを手掛けた今は亡き”今 敏”さん辺りが有名だが、「鉄男」を見て”塚本晋也”さんも同じ人種だったのだと、つくづく思わされた。






冒頭からして唖然であります。何処ぞの工場の作業員らしい男が構内をぶらぶらと歩いて部屋へ入ったかと思えば、配線やら金属やらよく分からないジャンクに囲まれた場所へ身を埋め、いきなり自分の太腿を切り裂き太い金属の棒をその箇所へ捻じ込んで行くのです。もう見ているこちらとしては言葉がありません。気持ち悪いのにどうしても釘付けになる。ほとんど全て塚本監督が一人で手掛けているだけあって、特殊メイクもセットもちゃちな物なのですが、塚本監督の生々しい演技とモノクロ撮影のおかげでぐいぐい引き摺り込まれました。冒頭の男から違う男へとカメラが動いた後も、兎に角”普通”という状況が一度も無いのです。

工場の男に代わって映し出される眼鏡の男は、髭を剃っているうちに自分の頬に金属が突き出ていることに気づきます。普通ならこの時点で病院へ行くところですが、こいつは仕事へ行こうとする。その通勤途中で様子がおかしい女に襲われ結局会社へは辿り着けないし、女との死闘後、更に男の身体は変調を続け徐々に金属の身体になって行く。

何処となく生物的な金属を身に纏う彼の姿は混沌とした異形でとても目を惹き、これだけでも面白いのだが、目に見えておかしくなって行く部分以上に、ちょっとしたやり取りの異質さが夢の世界を連想させ面白い(男がまだ人間らしい姿の時、恋人と「もしもし」「もしもし」としつこく言い合っているシーンや、患者の置かれた状況を見て喜んでいる医者の言動が怖いシーンなど)

物語全体は一人の男の復讐が発端となった、怪人(ヒーロー物の敵)誕生までの軌跡を描いたようなストーリーで、二人の男が生きるか死ぬかの泥臭い鬩ぎ合いの中、妙な愛情を育んでぶっ飛んでしまうまでを熱苦しく捉えているから、非常にシュールで捻れた男根映画に見えなくもない(ドリル◯◯◯も出て来てサイコーだし)断片的に何がなんだか分からない映像が挟まれていたのも収束していって意外と気持ち良かった。




お金を沢山掛けたら出せない味が随所にあって素晴らしい映画だった。たった60分ちょっとの映画なのにじっとり脳に張り付いて離れない。

とてもじゃないが女性や子供には勿体無くて(理解して貰えそうに無い)見せられないですね♡ζ*'ヮ')ζ

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