この胸に湧き上がるコナミへの憤りだけは幻ではない『メタルギアソリッドV ファントムペイン」小島秀夫(監督)

※ネタバレバレでお送りします












 一月以上かけてMGSⅤをクリアしました。

 最早そこにあるはずの無い幻の痛み”幻肢痛(ファントムペイン)”とサブタイトルにでかでかと銘打たれているのが、色んな意味で身に沁みる内容でした...




 仲間の裏切りや自分達を排除しようとする世界の動きに心身共に傷付き、以前はビッグボスという存在を中心に一枚岩だった面々がバラバラの方角を向いて後戻り出来ない道へと歩を進めて行くストーリー展開が本当に重苦しかったです。左腕を無くして9年間昏睡状態だったビッグ・ボスの痛々しい姿に呆然となり、拷問で手足や目を負傷したカズヒラ・ミラーのささくれ立った言葉にため息をつき、生きてはいたものの生ける屍と化したパスから目を背け、小心者のヒューイが保身に走り、作り話と責任転嫁を繰り返した挙句、妻であるストレンジラブまで死に至らしめたことを知った時には、あまりの救いの無さで胸がいっぱいになっていました。

 虚しい物語は馴染みのメンツに留まらず、FOXの裏の顔として暗躍していたXOFの指揮官であり、幼い頃に故郷と共に母国語を失なった男スカルフェイスが、がん細胞のように世界の言語を食い尽くす英語を根絶しようと英語を話す者だけを殺す寄生虫を手にするも哀れな最後を迎えるのも呆れるほど虚しかったし、そのスカルフェイスに身体改造を施されボスの寝首を掻こうと画策するも、最後には自分の命を賭してボスを救い、自らは独り死に場所を求め砂漠に消えていったクワイエットの後ろ姿は本当に忘れ難い物がありました。もう何処をどう切り取っても、癒すことの出来ない傷跡に翻弄される物語ばかりで、安易に泣くことすら許されない雰囲気が凄く良かった....






 ボスが完全に悪役となるメタルギアサーガの一作目に繋がるエピソードなので、当然今までのようにただの”良い人”ではなく心に深い闇が生まれるような出来事が必要なのは分かっているつもりだったのですが、ビッグ・ボスだと思っていた男が実は影武者で本物は騒ぎが収まるまで違う場所で組織作りを目指していると聞かされた時には「僕の知ってるボスなら絶対そんなコソコソしたことをしないはずだ!ましてや仲間を囮にするようなことを是とするわけがない!!」(スニーキングゲームだけど)と、ちょっぴり思いました。

 とは言え今までボスと信じていた男が偽物だったと聞いたおかげで、色々とモヤモヤしていたもの(オセロットのボスに対する態度、リキッド・スネークと思われたイーライが血液検査の結果ボスと血のつながりがなかったこと、冒頭病院からの脱出を手助けした男の行方等)が一気に晴れていったのは良かったです。思いつきでシリーズを進めて来たツケが回って、MGS4以降はどんな作業よりもストーリーの帳尻合わせが重要なミッションになっていそうですし、今回も相当あーでもないこーでもないと苦心なさったことでしょうな。帳尻合わせをしながらこれだけのドラマを盛り込んだ手腕は流石です。影武者が鏡の前でビッグ・ボスのメッセージをカセットで聴き、何かが吹っ切れたように感情を露わにするシーンも痺れた...


 




 惜しむらくは、イーライとの決着のエピソードが発売日に間に合わなかったこと。「蠅の王国」と呼ばれる幻に終わったそのエピソードが無くとも十分に素晴らしい余韻に浸れましたが、限定版に収録されたという映像をネットで観てみたら、MGSらしいド派手なお祭り騒ぎが予定されていたことがビンビン伝わってくるイメージボードと未完成なカットシーンの連続で、MGSⅤの大トリを飾るのにこれほど相応しいものは無いように思えてならなくなっていました。ビッグ・ボスであってビッグ・ボスで無い影武者ヴェノム・スネークが改めてボスや自らと向き合った後だからこそ、言葉にならない想いがヴェノム・スネークとイーライの間で行き来しているように感じられるのが良いんです。今回のサイコ・マンティスだけではなく、バルカン・レイブンスナイパー・ウルフとイーライがどのように出会いリキッド・スネークとして覚醒して行くのか描いた外伝とかあっても面白そうですよねMGS。






 コナミの経営方針の刷新に煽りを受け、シリーズ中最高の作品になりえた作品が不完全なまま世に出てしまったのは本当に勿体無い。小島監督の好きなようにやらせていたら人件費や宣伝費が幾らあっても足りないだろうけれど、最終的に黒字になれば利益率が少なくたっていいんじゃないかと僕は思う。「あのメタルギアソリッドを作った会社のソフトだから買おう」そんなふうに考えるお客さんが少なくないことも分からない会社になってしまったのだろうか?モバイルゲームで”こぢんまり”とやるのも良いでしょう。でもそんな商売だけをしていたら、先細りするのは目に見えているし、最後には所有する既存のコンテンツの管理をするだけの会社になって終わりなことでしょう。

 もしかしたら、小島監督がMGSⅤで全てを焦土と化した本当の理由は、辻褄合わせでも何でもなく、コナミに対する決別の証だったのかもしれません。”余計な課金要素と大事なエピソードの欠如”小島監督がこれらを見過ごして発売にGoを出すわけがなく(希望的観測)、不本意な内容を受け入れざるえなかった小島監督以下コジプロスタッフの皆さんの苦々しさに溢れた顔が容易に想像出来ます。ボスたちではないが、コナミに対し復讐心が湧いてくるというものだろう。



 これまでサッカーゲームはFIFAではなくウイイレを中心に遊び、パワプロも目が霞むほどプレイ。ファミコンの時代から数え切れないほどのコナミ産ゲームを楽しんで来ました。でもそれもMGSⅤで終わりにしようと思います。

 どこか良い会社がMGSごと小島監督を引き受けて欲しいですなぁ(=ワ=)






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