人が走らせるのか?馬が駆けたいのか?「優駿の門 -ピエタ-」やまさき拓味/秋田書店

毎度のことながら、日曜も終わりに近づいてようやくゲーム以外のことに目が行き出し、本作を読み出したら止まらなくて所有している巻まで一気読みしてしまいました。

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「優駿の門」と言えば”やまさき拓味”さんの代表作であり、型破りで馬にも人にも情が厚い男の中の男とでも評すべき騎手”光優馬”が、数奇な運命にある者達と競馬界で一陣の風を巻き起こす漫画で、”ピエタ”はそのシリーズ三作目にあたります。


 "優馬が日本を飛び出し世界的な騎手になっている頃、優馬や調教師の”捨造”と共に馬の世話を焼いていた元厩務員の小林は、借金まみれの牧場に婿入りしていた。銀行からも最後通告を受け、もう後がないところまで経営が傾いたところに、トドメの台風による水害で所有馬を全て失うことになる。しかし、奇跡的に出産間近だった牝馬が子馬を残していたことを知り、僅かばかりの希望が射したかに思われたが、今度は妻である秀子が白血病だと知らされ、数日後には亡くなってしまう。失意の小林は死を決意するも、子馬や捨造そして優馬に助けられ、亡き妻との結晶である子馬”ピエタ”を支えるべく厩務員へと戻って行く。"



ピエタの冒頭だけを説明すると、昭和臭のする厩務員小林の物語でありますが、優駿の門には他にも大勢の立場が異なる人々のドラマが散りばめられており、光優馬が周囲のドラマを繋ぎ止める役割を果たしています。言葉こそ発しないが、感情を豊かに表現する馬達と優馬の派手なドラマに重みをもたらす意味で、小林厩務員のような泥臭くてしみったれた男が本作に不可欠 な存在になっています。

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父親のような存在である小林を思い遣るピエタが愛おしい

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清涼剤として欠かせないお茶目なシーンも見所





馬と人との信頼関係が物を言う競馬において、厳し過ぎる現実と絆を強調した優駿の門はぴったりハマる作品です。愚直に頑張る人々が馬鹿をみる世界で、そんなことは無いと希望を与えてくれる優馬と馬達は本当に眩しく輝いています。人間の自己満足かもしれませんが、人馬が一体になる瞬間はやはり美しい。

特に今回のピエタは本当に人懐っこくて健気な"めんこい"馬でしたから、否が応でも気持ちが高まりました。どんなに良い調教師でも、どれだけ凄いジョッキーでも、馬が頑張らなければ勝てないのだから、やっぱり最後の最後は馬が主役なのだと思わされます。

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沢山の想いを背負って走ることの不安と心強さがドラマを呼び、僕ら愚鈍な読者は喜怒哀楽を引き出される。このやりとりが癖になるからやまさき拓味漫画は止められない。


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