芸能人は眼が命?「顔のない眼(原題:Les Yeux sans visage)」ジョルジュ・フランジュ(監督)/1960年

 雨が降る中車を走らせる女。

 曇るフロントガラスを頻りに気にして何処か落ち着かない。

 ふとルームミラーを弄って後部座席に眼をやる。

 そこには帽子を深く被り、ぐったりとした誰かが映る。



 車がようやく停まる。

 女は後部座席から”誰か”を引きずり出すと、川に捨てた..... 









 それなりに名の売れた医者の男が、車の事故で顔に怪我を負った娘の為に、自分を慕ってくれる秘書と共に何度と無く女性を拉致して顔の皮を剥がすというスリラーなのですが、怖いというよりエグかったです。古い映画だから特殊効果にしてもカメラワークにしても、現代のように完成されてはいないものの、顔の皮を剥がすシーンが微妙に長かったり、医者の男が報いを受けるシーンの激しさなどは今観ても結構キツイ。

 せっかく移植した皮膚が、どんどん壊死してゆく過程を収めた写真が流れるシーンもあり、当時劇場で本作を観た女性達は相当ショックを受けたのではなかろうか?



 何故「眼のない顔」ではなく「顔のない眼」なのかと思っていましたが、見終わればとてもしっくりと来るタイトルでした。娘は顔に怪我を負っているために、父親から仮面を着けるように言われているので、両目と身体の動きで感情を目一杯表現しなければならず、娘役の”エディット・スコブ”さんも相当役作りには苦心したに違いありません。

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 まるで自分を実験台にしているような父の呪縛から解放され、娘が森へと歩み去るラストシーンがとても詩的で美しかったです。人によっては恐ろしいと感じるのかもしれませんが、僕は彼女のマスク姿も綺麗だと思いました。一旦移植に成功した時の彼女の顔より何倍もです。

 白黒映画は暗い部分と明るい部分がハッキリと出るので、顔を失った娘の仮面の白さが本当に印象に残ります。無駄に毛穴まで映るような現代の映像作品より、よほど詩的な情緒を出せる時代だったのだと変に納得していました。

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全然関係無いけど、劇中に登場する車がシトロエン製で独特



 オードリー・ヘプバーン主演の「ローマの休日」をわざわざカラーに着色してリメイクするなど、カラーにしたがる人も多いですが、白黒は白黒として楽しむのが吉な気がしてならないっすね(´・Д・)

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