家族って、どうやったらなれるんだろうね?「私・空・あなた・私」いくえみ綾/幻冬舎

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自宅でエステサロンを営む胡桃とその娘の林檎、杏が暮らす安達家へ突如、中学生の少女・れもんがやって来る。実は、れもんは蒸発した胡桃の元夫が浮気をして出来た子供。安達家の女3人は身寄りがなくなったれもんを受け入れ、「家族」となることに。腹違いの子供であるれもんは、「いい子」で家族の一員となり生活を送る。そんな中、女4人が暮らす家に訪れる新たな訪問者――植木屋の男性「イズミ」が、安達家へやって来て...!? 





 もしも、自分が父親と母親の浮気によって生まれ、しかもそのどちら共まともに暮らしたことが無いまま、父親が裏切った前妻の元へ預けられることになったら、どんな気分がするのだろうか?

 きっと僕だったら両親の仕打ちに憤ったまま気持ちを整理出来ず、ふて腐れた状態で全く血縁関係に無い自分を引き取ってくれた女性の心の内など考えようともせず荒んでしまいそうだが、本作の主人公"れもん"は自分に良くしてくれた母方の祖父と祖母に預けられて居たせいもあるのか、自分に優しくしてくれる新しい家族を気遣うように笑っていた。

 でも、その笑顔の裏には、行方の知れない実父、さっさと子供を捨てて再婚した母親、他界した祖父、認知症の祖母といった存在が付き付き纏っているのが見て取れて、何処か痛々しく見るに忍びなくなる。

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 そんな本音を言えず笑ってばかりの"れもん"が、経験の浅い植木屋のお兄ちゃんの登場で、本心を新たな家族の前で漏らすようになり色々と波風が立ち始めるものの、僕は逆に安心してしまった。下手に周囲に気を使い、気持ちを押し殺したままでいたら心が壊れてしまいかねないから、ちゃんと気持ちを口に出来るようになって来た”れもん”なら、衝突を繰り返しながらも新しい家族との絆を深め、今までの家族との関わり合いも自分の中で整理して行けるに違いないと嬉しくなったのだ。

 男と女。親と子。血の繋がりや単純に割り切れない性に振り回される少女と少女を取り巻く人々が、どんな紆余曲折経て本物の家族として生まれ変わって行くのかが楽しみだ。

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 おそらく初めて"いくえみ稜"さんの漫画を読んだはずだが、"いくえみ稜"さんが"くらもちふさこ"さんのファン(ペンネームの由来が”くらもちふさこ”さんの作品の登場人物)であることもあって、とても初めて読んだ漫画家さんとは思えないほどしっくり来る。家族だからこその説明を省いた会話の仕方や、"れもん"と彼女を引き取った"胡桃"さんの心の流れ、そして1番ご都合でファンシーな存在ではある植木屋のお兄ちゃんの軽くやさぐれた態度と不器用な優しさの表現、どれもこれも自然に胸へ届きます。

 特に、とても可愛らしい笑顔を見せたかと思うと、次の瞬間全てが真っ黒に染まっている"れもん"の浮き沈み描写はとても丁寧で真に迫るものがあります。同じような境遇では無いにしても、本当の自分を分かってくれる人が周囲に居なくて孤独を深めているような人に寄り添ってくれる作品だと思いました。


 いくえみ稜さん凄く良いですね。あまりにも流行っていたから、あえて避けて通った「潔く柔く」も読んでみようかな?

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植木屋のお兄ちゃん、僕の中じゃ窪塚洋介ですね

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