これだからラリーは止められない「WRC第4戦 ラリー・アルゼンチン」

WRC
 何故自分はWRCが好きなのか?

 車同士が並んで走るわけでもなく、エンジン音がド派手と言うわけでもなく、スポンサーのステッカーはあちこち貼ってあるけれど、F1のように作り込まれた見た目とは違い外観も市販車となんら変わらない。

 にも関わらず何故好きなのか?


 その答えが第4戦アルゼンチンには集約されていたような気がしました。





 開始早々そこら中、石だらけなアルゼンチンの洗礼を受け、次々とトラブルに見舞われるドライバー達。昨年度から連勝を続けて来たセバスチャン・オジェさえ早々に戦線離脱を迎える。速くて上手い安定度抜群なドライバーでもどうにも出来ない事態である。

 優勝候補の本命が離脱後もイレギュラーなコース状況に悪戦苦闘する彼らの中で、たまたま運良く酷いトラブルに合わずに済んだ男クリス・ミークが首位を取る。同じマシンに乗る同僚オストベルグは体調不良。周囲のトラブルの多さに慎重になってしまったのか、ワーゲン唯一の星になっていたラトバラのペースはイマイチ上がらない。悪く言えば先が無い中年男が優勝するのに、これほどのお膳立てはなかなか無い状態でありました。

 ところがリタイヤ数が多いミーク相手だと、これだけの好条件でもヒヤヒヤ物。どんな些細なことが彼を地獄へと叩き落すフラグになってしまうか分からないから、各セクションでのインタビューシーンでさえ見ているこちらが緊張してくる(あと一本走れば終わりと言う場面で、彼はインタビューに無言で応え、これが初優勝の重みなのだと神妙な気分になりました。)



 35歳のクリス・ミークは、ラリーのキャリア自体は長いものの、正直華のあるドライバーではありません。自分が思っている以上に走りが好調だと、後半プレッシャーに負けてペースを崩しリタイアしてしまう「またか」を嫌と言うほど見て来ました。しかし自分のミスにトコトン落ち込んでいる彼の表情を見ていると、生き方が不器用な苦労人臭がして、なんだか放っておけないのであります。

 結局、自分以上に不甲斐ないライバル達を差し置いて優勝を決めたミーク。パワーステージでオジェがトップだったことを考えると、決してミーク本人の実力で手にしたポディウムの天辺ではありませんが、それは本人が重々承知していることであるし、彼は彼なりにベストを尽くした結果の優勝を喜んで良いのだと思いました。

 ミークがレースを終えた直後、涙を堪えながら「一番支えてくれた人はもういない」と自然に今は亡き恩人へ感謝をイタンビュアー相手に語っていたのも感慨深いものがありました。彼のおかげで久しぶりにコリン・マクレーの名が世界中に響いた気がします。もしかしたらミークは今年の運を使い果たし、二度と優勝することも無いかもしれない。きっとオジェとフォルクスワーゲンが持ち前の安定感で勝利を重ねて行くことだろうし。でも、時にはこんなドラマが生まれる日があっても良いじゃないか。

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 およそ日本の道路事情では理解出来ないような大自然の中をコースと呼び、アクセルペダルを床まで踏み込んで恐ろしい速度のまま突き進むWRカーの躍動感や、付き物である激しいクラッシュの数々も勿論見応えがあるわけだが、指標となるタイムも無いままベストを尽くすしか無いドライバー達の生生しい表情をSS終了直後に確認出来る点がWRCの一番の魅力かもしれない。コース上での抜き合いが観れるわけでも無いのに、これほどTVで見ていて面白いレースがあるだろうか?

 安定した環境下で順位を競うF1とは明らかに違い、ビジネス以上に人生や誇りを賭けて仲間と戦うラリー関係者の気持ちがモニターを飛び出して伝わって来るから、観客も深く彼らと関わっている気になれるのです。

 今回は富にイレギュラーが起き易いアルゼンチンでしたから、ラリーというのがいかに過酷で遣り甲斐も見甲斐もあるスポーツであるかが良く分かるレースでした。



※油断すると速攻でこれである



 レースも人生も、水平線の先に何があるかハッキリしているより、少々波風が立っている中船を出した方が燃えて来ると言う物です。どんなに楽でも平坦な道のりでは飽きてしまうもの。

 まあ、ある意味そんな飽き易い条件の中をモチベーション高く維持して進める人の方が凄いと言う見方も出来るやもしれませんがね(´Д` )




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