可愛い子役がどう変化してゆくかを観察する映画としても楽しめるのかも?「6才のボクが、大人になるまで。」リチャード・リンクレイター(監督・脚本・製作)/2014年

 僕の親は、昔から毎日のように喧嘩ばかりしていた。

 父親が食事もせず玄関の扉を怒りに任せて閉める音も、母親が部屋に篭ってすすり泣く声も、ある意味日常の光景だった。

 それでも何故か、この二人は別れなかった。


 僕を含めて子供が三人も居たし、まだまだ体面を気にする時代の結婚だったのもあることだろう。 けして、愛がどうのという美しい話では無かったと思う。だいたいズルズルと続けてゆけば、愛の有無に関わらず腐れ縁が二人を繋ぎ止めるものだ。

 もしも、僕が子供の頃に両親が別れる決断をしていたら、どうだったのだろう?

 母親と子供達だけで暮らしただろうか?それとも父親と?

 子供達全員が一緒に居られただろうか?バラバラに生活させられたんじゃなかろうか?

 両親は再婚しただろうか?

 一生独り身を貫いただろうか?

 僕ら子供の心にどんな痕が残っただろうか?

 実際にはそうならなかったわけだから知りようも無いことではあるけれど、離婚した姉の子供二人の様子を見ていたら、心の傷痕がいくら消せない物であっても、それをそれとして受け入れて逞しく生きてゆくことが可能なのは間違いない。


 両親が早いうちに離婚し、一緒に住んでいる母親が次から次へとロクでも無い男と再婚してゆくのを尻目に、少年が少しずつ成長してゆくこの映画を観てしまったから、取り留めも無いことを次々と思い出してしまいました。




 兎に角母親(パトリシア・アークエット)が再婚する相手が駄目男ばかりである。

 1人目の再婚相手は大学の先生をしていて一見優しそうに見える地位も名誉も有る男だが、酒を飲むと人が変わってドイヒーなサイテー野郎。2人目は退役軍人。もうこの時点で分かると思うけれど、俺は”責任”を果たしているのだから、お前たちも責任を果たせと押し付けがましい甲斐性なし野郎。結局最初の旦那が一番まともな男だったと言うオチなのだ。

 ただ子供を蔑ろにするような人では無くて、単純に惚れっぽいというか迂闊なだけの女性だから憎めない。子供達に出来る精一杯のことをしようと努力している姿には多くのシングルマザーが共感するところがありそうだ。



 とはいえ母親の理由で環境が変わるたび学校も友達も髪型もコロコロ変わる子供達からしたら迷惑な話ではあるけれど、どんな出会いと別れを迎えても、変わらない絆を醸し出す4人(別れた両親と子供達)の自然なやり取りはなんとも言えない良さがありました。日本には21年続いた「北の国から」というファミリードラマの金字塔があるから、たかだか2時間半に収まる家族の12年がどーしたのだ!と言いたくなる人もいることでしょうが、逆にこの尺に凝縮したのだと考えると大した物だと思えなくも無い。

 残念ながら、断続的に撮影しているが故に、纏まりやテンポは良いとは言えない作品ですが、今の映画業界の中で、これほど気の長い撮影期間が許されること自体が異例のことでもありますし、試みの面白味や、誰か彼かに感情移入出来そうな等身大の登場人物達も味わい深い映画だと思いました。最後まで良い父親(イーサン・ホーク)である実父の型破りな優しさが僕個人としては凄く魅力的でしたね。何故自分が生まれ、何をしてゆきたいのか?と悩みながらも、馬鹿をやって恋をして少しずつ大人になってゆく主人公の表情の変化も面白かったです。可愛い子役がどのように変化してゆくのかを見るだけでも見応えがあるやもしれませんw





 出来れば家族はバラバラにならない方が良いし、本当に望まれて生まれて来る方が幸せに違いないが、始まりや過程の良し悪し以上に、最後に笑える人生ならそれで上等なのだと実感出来る良い映画です。





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