僕らの老後は白か黒か...「野いちご」イングマール・ベルイマン(監督・脚本)/1957年/スウェーデン

 いちいち並べ立てるのも嫌になるような国の掲げるルールにより、少子高齢化の日本はいよいよどん詰まり感が半端ではありません。バブルも知らず、この先大勢の年金を支えることになる子供たちは勿論のこと、やっと定年を迎えられると思ったら65、70歳以上になっても働かざる得ないお年寄り、そして、その中間を支える中年だって明るい将来なんて見えて来ません。


 それでも、国をある程度信頼してガムシャラに働いてこれだけでも団塊の世代は、やはり幸せに見えてしまいます。どれだけ頑張っても単価は下げられ。サービス残業なんて当たり前。貯蓄も無ければ恋人もいない。そんな毎日をこの先何十年続けなければならないのか分からない僕らにはね....

 「野いちご」の78歳の主人公にしても、狭量な僕の眼には団塊の世代と同じ幸せな時間を過ごせて来た人物と映りました。なにせ、この歳までエゴイストとして生きることを周囲が許してくれていたのだから。





 自らが介護や医師を必要とする年齢を迎えた自他ともに認める偏屈なイサク医師が、名誉学位を受賞するため長い道のりを車で旅し、その日一日に起きた出来事を日記に記している体の語り口調で進行してゆくのですが、その道中訪れた土地で懐かしい人々を思い出したり、ひと癖ある人達と出会って、自分のこれまでの人生と、老いへの恐怖心が募っている今の自分を見つめ直してゆくのが実に良い映画でした。

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※息子の嫁と気まずいドライブ


 この時代の男と女、親と子、夫と妻、信仰の在り処に至るまで盛り込まれているので、とても身近な内容であるものの、イサクお爺ちゃんが見る悪夢の殺伐とした風景や、無駄なBGMを廃してピンポイントに効果音を聴かせるなど、一つ一つのシーンを印象的に見せるカメラワークや演出が凄く上手いから見入ってしまいました。白黒映画ってやっぱり格好いいですね。陰影のコントラストが生み出す悦びや悲しみ、そして恐怖のイメージの奥深さは未来永劫微動だにしない芸術だと思います。



 どう考えても、映画が進むにつれて死に際が近づいているように見えて仕方なかったのですが、最後は今まで自分が切り捨てて来た人の情に支えられてお爺ちゃんが幸せそうにしている優しい結末でした。散々周囲に迷惑をかけて来ても、最後に良い人になって報われてしまうイサクお爺ちゃんが正直羨ましい....

 こんな人生が許されるような生き方を僕はきっとしていないから、このお爺ちゃんを羨む権利さえ無いことだろうけど、自分を大事に思ってくれる相手に、ちゃんと「ありがとう」と言える老人になりたいなって思いました。





 自分の死期が近づいた頃に、またこの映画を観たいな.......

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