僕は、どう死にたいかな?「女子高生に殺されたい」古屋兎丸/バンチコミックス/新潮社

世の中は実に些細な差で手のひらを返す。

露骨に少女を官能的に描いていたとしても、描き方が緻密で詩的であったら芸術と呼ばれ、長年子供向けの漫画を描いて来た大御所が未成年の全裸シーンを描いても笑い話で終わるというのに、稚拙で幼稚な性癖を細々と描いて喜んでる素人への風当たりは強い。どちらも根っこにある衝動は同じであるのに、出力の方法を少し間違えただけで犯罪者扱いだ。


人間誰しも大きな声で言えない・言いたくない性癖があるはず。もしもそれらが一切無い人、無いと信じきっている人は幸せかもしれない。余計なことに悩まずに済むわけだから。おそらく古屋兎丸氏は前者だろう。これまで彼が描いて来た漫画を少しでも読んだことがあれば、そう思わざる得ない。”真面目で勤勉”そんな自分の殻を破るべく出来事を求めている。しかもセンセーショナルで美しくも残酷な現実を突き付けて来るような衝撃を彼は欲しているように感じる。

今回の「女子高生に殺されたい」は、その最たる物になるやもしれない。。。

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いつの頃からか、自分が女子高生に絞殺されたいと望んでいることに気づいた男は、その渇望を現実にするため高校の教師になる。そこで理想的な女子高生を見つけた彼は、彼女が2年生の夏に、自分を殺させる計画を着実に押し進める。

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理想の殺され方を追求しようとする彼は、周りを巻き込む事件事故を起こし、「死刑にして欲しい」「捕まえて欲しかった」と口にするような人種に近いのかもしれない。自殺ではなく”殺されたい”という受け身でありながらも、目的を果たす為の下準備には能動的な行動を起こす執着心が実に怖い。変態教師本人の口から赤裸々に性癖が語られたあと、彼が目を付けていた女子高生へと視点が動き、その次はその女子を好きな男子へといった具合に、主要人物の自己紹介がてら進んでゆく冒頭も上手い。この辺りの淡々とした展開の中で、一癖ある登場人物達の狂気がどう膨らみ絡み合ってゆくのかが見所になりそう。



実に気持ち悪い男ではあるが、自分を貶めるだけの行為を渇望する気持ちも分からないでもない。蔑まされたい、汚されたい、罰せられたい、しかも可愛い子や美しい人にそうされたい。マゾっ気がある男なら少しは脳裏にそんな想いがよぎったことがあるのではなかろうか?何がどうしてそんな風に望んでしまうのか?それは分からないし分かりたくもないけれど、事実を事実として生々しく描こうとする古屋さんは凄い人だと思う。それが勇気なのか、ただ露悪趣味であるからなのかは知りようも無いですが.....

元はジャンプから流れたベテラン漫画家の巣窟にしか見えない雑誌でしたが、バンチコミックスは最近良い感じにバラエティに富んでいて面白いですね。新潮社が熱い時期なのかもしれません。




一度しか経験出来ない死を自分の望む形で迎えようとする男の発想自体は自然なことなのかもしれない。子供に看取られたい。痛みも感じず眠るように死にたい。色んな死の形を長いこと生きていると考えずに居られないわけで、もしも望み通りの終焉を向かえられると信じることが出来たなら、僕だって行動するのかもしれませんね。。。。

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